第二部 第42話「始動と選択」
第二部 第42話「始動と選択」
「決めてる」
リックは短く言い切った。
視線が集まる中、そのまま続ける。
「場所は拠点と畑の間だ。道を挟んで左右に分ける」
最初から迷いはない。
「まずは右側だけ作る。左は整地だけしておく。人数が分からない以上、広げすぎる意味はない」
配置が頭の中で組み上がっていく。
無駄がない。
拡張もできる。
リックは続ける。
「今ある田んぼと畑は、そのまま村のものにする」
一瞬だけ空気が止まる。
「追加でも少し作る。ただし作りすぎない。自分たちだけでも回せる範囲にする」
来るかどうか分からない。
だからこそ、無駄は作らない。
それでも足りなくはならないようにする。
「自分たちの分は後回しでいい」
あっさりと切り捨てる。
優先順位は決まっている。
「拠点は生活スペースとして使う。村は生産側だ。役割を分ける」
全体の構造が一気に整理される。
誰がどこで何をするのか。
迷う余地はない。
リックは視線を動かす。
「設計は任せる」
エレノアに向けて言う。
エレノアはすぐに頷いた。
「分かった。区画から決める」
それだけで十分だった。
他のメンバーも動き出す。
ゴーレムへの指示は共有されている。
言葉は必要ない。
リックはその場を離れた。
森へ向かう。
木材が必要だった。
ゴーレムを展開する。
木を倒し、運び、積み上げる。
単純な作業を、確実に繰り返す。
リック自身も手を動かしながら、全体の流れを見ている。
拠点側は回り始めている。
ならば、次だ。
リックは森を抜ける。
向かう先は、ザクトの店がある村。
その外に仮の拠点を作る。
一度、全員を集めるための場所だ。
村の外れに出ると、すぐに手を動かす。
地面をならす。
木を組む。
ゴーレムが支える。
短時間で形を整える。
簡素でいい。
人が集まり、休める場所。
それだけあればいい。
ここが中継地点になる。
やがて、動いていた者たちが集まってくる。
ザクトだ。
「もう出来てやがるか、旦那」
軽く言いながらも、すでに人をまとめている。
移動、護衛、配置。
流れは止まっていない。
その横で、マグロンも到着する。
食料を運び込み、調理の準備を進める。
「ザクトさん、こちらは先に展開します」
落ち着いた声で指示を出す。
仮拠点に人が集まり始める。
物資も揃う。
流れが一本にまとまる。
ここで整理する。
ここから動かす。
リックは状況を見て判断する。
「分ける」
短く言う。
人を振り分ける。
拠点へ向かう者。
ここに残る者。
作業を続ける者。
役割が決まる。
無駄はない。
拠点では村が形になり始め、
こちらでは人が集まり、
食料が回り、
準備が整う。
すべてが同時に進む。
リックは全体を見渡す。
まだ足りない。
時間も足りない。
だが――
止まる理由はない。
「急ぐぞ」
短く言う。
それだけで十分だった。
すでに、流れは動き出している。




