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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第二部 第38話「回収と再構築」

第二部 第38話「回収と再構築」


戦いが終わったあとの水場は、不自然なほど静かだった。さっきまで響いていた衝突音も、叫びも、すべてが消えている。ただ水の表面だけが、何事もなかったかのように揺れていた。


リックはその光景を一度だけ見渡し、すぐに意識を切り替える。


「回収に入る」


短い指示で全員が動き出した。


リックはまず小型ゴーレムを展開する。数を揃え、作業用に割り振る。解体と運搬、それぞれに役割を持たせるだけで十分に機能する。命令は単純だ。拾う、切る、運ぶ。それだけでいい。


水際にはリザードマンの死体が広がっている。数は多いが、処理できない量ではない。むしろ、この規模なら効率よく回収できる範囲だと判断する。


ゴーレムが動き出す。


尻尾を切り落とし、個体ごとにまとめる。討伐証明として使う以上、形を残しておく方が都合がいい。


皮は丁寧に剥がす。余計な傷はつけない。防具素材として価値が高い以上、ここで雑に扱う理由はない。


鱗、骨、使えそうな部位も選別する。すべてを持ち帰る必要はないが、判断は後でいい。収納がある以上、持ち帰りの制限はほぼない。


他のメンバーは周囲の警戒に回る。戦闘直後は別の魔獣が寄ってくる可能性があるため、気を抜くわけにはいかない。


その中で、それぞれの反応にははっきりと差が出ていた。


セレスティアは無言だった。


視線は水面に残ったまま動かない。


先ほどの光景――水を伝い、広がり、群れごと消し飛ばした電撃が頭から離れていない。


理解はしている。


だが、納得が追いつかない。


言葉にしようとしても形にならず、そのまま視線を落とした。


シルヴィアもまた、強く動揺していた。


普段なら分析に入る。


だが今回は違う。


威力も範囲も、これまで見てきたものとは明らかに別物だった。


評価しようとしても、基準が足りない。


結果として、言葉を失う。


ただ、黙って見ているしかなかった。


エレノアの表情は変わらない。


いつも通り、落ち着いている。


だが内側は違う。


明らかに想定を超えている。


理解はしている。


だが整理が追いつかない。


それでも表には出さない。


崩さない。


それがエレノアだった。


リリアは少しだけ目を細める。


すごさは理解している。


だが、それ以上に踏み込まない。


一度見て、納得し、受け入れる。


動揺するほどではない。


ルナも同じだった。


「すごい」という感覚はある。


だが深く考えない。


そのまま受け取る。


全体としては静かだった。


だが、その静けさの中に、確かな温度差があった。


作業は順調に進む。ゴーレムが淡々と素材を集め、一定量ごとにリックの前へ運ぶ。それをそのまま収納に収めていく。無駄がない。


一通りの回収が見えてきたところで、リックはゴーレムの状態に目を向ける。いくつかは損傷していた。表面が削れ、形が崩れ、動きが鈍くなっている。


「……そのまま使う意味はないな」


そう呟くと、対象のゴーレムに命令を出す。


一体ずつ崩れ、土へと戻る。


そのまま再構築する。


同じ場所に、新しい形でゴーレムが立ち上がる。歪みも損傷もない状態で。


これでいい。


無理に使い続ける理由はない。


再構築を終えたあと、リックは水場へ視線を向ける。


「……確認するか」


他のメンバーを下がらせ、自分はゴーレムを一体連れて水際へ近づく。人を近づける必要はない。


ゴーレムが水に触れる。


反応はない。


さらに踏み込ませる。


水面が揺れるだけで、それ以上の変化は見えない。


リックはその様子を観察しながら、魔力の流れを探る。


異常はない。


少なくとも今は。


「……問題なさそうだな」


小さく結論づける。


ただし確信ではない。


今の時点で問題がない、それだけだ。


ゴーレムを戻し、水際から離れる。


その直後、小さな気配が動く。


森の奥から魔獣が二体ほど近づいてくるが、ゴーレムが即座に処理する。問題にならない。


やがて回収は完了する。


水辺には何も残っていない。


リックは全体を見渡す。


取りこぼしはない。


状況も安定している。


「……十分だな」


短くそう言い、次を決める。


「戻る」


全員が動き出す。


背後には、静かな水面だけが残った。

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