第二部 第34話「採掘と実戦、そして不足」
第二部 第34話「採掘と実戦、そして不足」
拠点の朝は変わらない。
畑を確認し、森で必要なものを回収し、戻って処理を終える。
流れは完全に固まっている。
無駄はない。
だからこそ、次に進める。
リックは全員を見渡す。
「今日は鉱山に行く」
短く告げる。
目的は明確だった。
鉄鉱石。
鉱石。
そして素材。
全員で動く。
戦闘も含めた確認の意味もある。
誰も異論はない。
そのまま出発する。
鉱山に着く。
空気は静かだった。
危険な気配は薄い。
だが、ないわけではない。
リックは視線だけで合図を出す。
小型ゴーレムを二体、前へ走らせる。
役割は単純。
探す。
見つける。
引いてくる。
それだけだ。
しばらくして、気配が動く。
ゴーレムが戻る。
背後に魔獣を引き連れていた。
その瞬間、全員が動く。
詠唱は短い。
無駄がない。
魔法が重なる。
一斉に叩き込まれる。
魔獣は抵抗する間もなく崩れ落ちた。
終わりだった。
時間はほとんどかかっていない。
戦闘は処理に近い。
ゴーレムはそのまま後ろへ下がる。
役割は終わりだ。
リックは周囲を一度確認する。
問題はない。
「進む」
それだけで全員が動く。
採掘に入る。
ここで初めて、小型ゴーレムを本格的に使う。
数体を展開し、採掘と運搬を任せる。
指示は単純だ。
掘る。
運ぶ。
集める。
それだけで十分に機能する。
人は判断に回る。
素材を見極め、必要なものだけを選ぶ。
効率は明らかに違った。
鉄鉱石。
質の良いものが揃う。
鉱石。
加工に使えそうなものも混じっている。
さらに魔獣の素材。
皮。
骨。
殻。
中には、わずかに魔力を帯びた石もあった。
リックはそれらを確認しながら考える。
防具に使えるか。
加工できるか。
答えはまだ出ない。
だから持ち帰る。
それでいい。
回収を終え、戻る。
そのまま帰路の途中で立ち寄る。
鍛冶屋、バルド のところだ。
扉を開けると、バルドが顔を上げる。
「来たか」
リックは何も言わず、持ってきた素材をすべて出す。
並べる。
隠さない。
「判断は任せる」
それだけ言う。
バルドは鼻を鳴らす。
「最初からそのつもりだ」
素材に手を伸ばす。
触る。
叩く。
曲げる。
一つずつ確認していく。
動きに迷いはない。
やがて、いくつかを分ける。
「これは使える」
別に置く。
「こっちは微妙だな、補助にはなるが主材にはならねえ」
さらに分ける。
「これはダメだ」
はっきりと弾く。
判断は早い。
リックは黙って見ている。
やがてバルドが手を止める。
「鉄は問題ねえ、加工もできる」
一度、区切る。
「だが、防具は別だ」
リックはそのまま聞く。
「何が足りない」
バルドは一つの素材を指で弾く。
「皮だな」
持ち上げて、軽く引く。
すぐに離す。
「強度が足りねえ、これじゃ衝撃が抜けねえ」
さらに続ける。
「しなやかさも足りねえ、動けなきゃ意味がねえ」
そして少し間を置く。
「で、必要なのが――龍の皮だ」
リックはわずかに視線を動かす。
バルドは続ける。
「本物の龍じゃねえ、山の奥の水場にいるリザードマンの皮だ」
そこで場所の説明に入る。
「お前らが行ってる鉱山、あそこは知ってるな」
「分かる」
「なら、そのさらに奥だ」
言葉は簡単だった。
だが意味は重い。
「鉱山を抜けて山に入る、水場がある。そこが縄張りだ」
群れでいる。
離れない。
つまり、そこで戦うことになる。
「行けるか」
バルドが聞く。
リックは短く考える。
今日の戦闘。
余裕。
連携。
問題はない。
「行ける」
バルドはわずかに笑う。
「だろうな」
それで十分だった。
リックは思考を整理する。
リザードマン。
群れ。
水場。
問題はない。
――最悪、ビリビリを使うか。
一瞬だけ浮かぶ。
すぐに消す。
切り札だ。
使うものではない。
だが、選択肢として残す。
それでいい。
リックはそこで思考を切り替える。
やるべきことは一つではない。
ザクト。
マグロン。
そこまで考えて、止まる。
違う。
「……ギルドか」
優先順位を修正する。
「今日はここまでだ」
バルドに告げる。
バルドは肩をすくめる。
「好きにしろ」
それで終わる。
リックは外へ出る。
次に向かう先は決まっている。
まずはギルド。
その後だ。
すべては順番だ。




