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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第二部 第28話「生活と再構築」

第二部 第28話「生活と再構築」


拠点へ戻ったリックは、補給してきた資源を一旦所定の位置に置くと、その場で立ち止まり、次に取るべき行動の優先順位を整理した。食料は時間経過とともに価値が落ちる消耗品であり、処理が遅れればその分だけ損失になるため、最初に手をつける対象として魚を選ぶのが最も合理的だと判断する。


収納から魚を取り出しながら、森でのやり取りが頭をよぎる。あの軽い調子で告げられた言葉は冗談のようにも聞こえたが、無視していいものではないとリックは考えていた。いずれ来る可能性が高い以上、準備しておく方が無駄がない。


「セレスティア、まず魚を焼く。火力は強すぎると表面だけ焦げて中が生になるから抑えろ、全体に均等に火を通すことを優先して、途中で位置を変えながら焼け」


「旦那様、承知いたしました」


必要な工程だけを簡潔に伝えると、セレスティアはすぐに調理へと移行する。余計な確認はない。意図を理解し、再現することに特化した動きだった。


魚が焼かれていく間、リックは周囲へ視線を向ける。待つ理由はない。時間は常に使うべきものだった。


「エレノア、生活エリアの配置を見直せ。今の配置だと動線に無駄がある、使用頻度を基準に再配置して、移動と作業の効率を上げろ」


「はい、ご主人様」


「リリア、鍛冶は新しい素材を優先して試せ。強度だけでなく通電性も確認して、実戦で使える形に仕上げることを前提に調整する」


「うん、任せて!」


「シルヴィア、薬草は効果ごとに分けて管理しろ。即効性と保存性で分けておけば、必要な時に無駄なく使える」


「主君のために」


「ルナ、掃除と洗濯を進めろ。水の管理も含めて、生活環境を一定に保て、環境が安定すれば消耗も減る」


「……あるじ」


一通り指示を出したあと、リックはわずかに間を置き、さらに続ける。


「リリアとシルヴィアは、自分たちで使う分だけでなく、ザクトに卸す分も見越して作れ。品質を落とさずに量を確保する方法を考えておけ、生産として成立させる」


その一言で意味は共有される。拠点は内側だけで完結するものではなく、外へ流す拠点へと変わる。


二人は即座に理解し、それぞれの作業へと移行する。


やがて焼き魚の香りが広がる。


セレスティアが仕上げた魚を差し出す。


リックはそれを受け取り、口に運ぶ。


問題ない。


「味としては成立しているが、調味料が足りない。塩味と旨味を補うものがあれば完成度は上がる、醤油のようなものが欲しい」


少しだけ考え、結論を出す。


「町に行って探す。流通していなくても、似た性質のものはあるはずだ」


行動は決まった。


食事を終えると、すぐに次の工程へ移る。


「備蓄エリアを作り直す。今の状態では長期運用に耐えない、管理が分散している」


地下へ視線を向ける。


「地下を使う。温度が安定しているから保冷に向いている、この空間を基準に区画を分ける」


エレノアへ。


「木で構造を作れ。貯蔵、保冷、冷蔵の三つに分けて、それぞれ用途が重ならないように設計する、動線も考慮しろ」


設計が即座に組み上がる。


リックはそれに従い、土を操って地下構造を整える。壁面を固め、湿度と温度が安定するように形を調整し、機能として成立する空間へと作り変えていく。


区画が整うと、ルナへ指示を出す。


「冷蔵区画は氷で温度を維持する。溶ける前提で補充できるようにして、一定の温度を保て」


「……やる」


生成された氷が配置され、低温環境が成立する。


さらに奥を見ながら言う。


「シルヴィアの製薬区画は別にする。温度変化が少ない位置に配置して、必要なら氷で微調整できるようにする」


シルヴィアはそれを確認すると、すぐに作業へ入る。


獣の肉へ視線を向ける。


「肉は燻製にする。すぐに使う分と保存する分を分けて処理しろ、長期保存を前提にする」


煙が立ち上がる。


処理は順調に進む。


リックは最後に一つだけ付け加える。


「収納に入れておけば腐らないが、それを前提にするのは危険だ。俺がいない状況でも回るように、保存食は必ず常備しておく」


それが基準だった。


時間が経過するにつれて、拠点は変化していく。


設備は整い、役割は固定され、運用は安定する。


ここはもはや仮の拠点ではない。


機能する基地だった。


リックは焼き魚を見る。


思考は一つ。


来る。


確実に。


だから準備する。


それだけだった。




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