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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第2部 第24話「接近」

第2部 第24話「接近」


ネブラの奥へ進むにつれて、空気はさらに重くなり、単に濃度が増しているだけではなく、まるでどこかで押しとどめられているかのような圧の滞留が感じられ、これまでのように異形が押し寄せてくる流れは確かに存在しているにもかかわらず、その流れ自体が途中で抑え込まれているような不自然な静けさが、周囲一帯を覆っていた。


リックは歩みを緩めることなく前方へ意識を向けたまま、短く指示を出す。


「前、確認」


その声に応じて小型ゴーレムが散開し、通路をなぞるように奥へと滑り込んでいくが、その動きはこれまでよりも明らかに慎重で、まるで見えない何かを避けながら進んでいるかのような微細な軌道修正を繰り返していた。


しばらくして戻ってきた個体はいずれも消失しておらず、異形との接触も最小限に留まっていることが共有されると、エレノアがその情報を整理しながら静かに報告する。


「前方に異形反応は確認できますが、密度は低く、流入も断続的であるため、通常の出現パターンとは明確に異なっています」


ルナがわずかに顔を上げ、ぼそりと呟く。


「……押されてる」


その言葉にリリアが反応し、視線を奥へ向けたまま問い返す。


「押されてるって、何に?」


答えは出ない。


だが、違和感だけは確実に積み上がっていく。


さらに進むと、足元にははっきりとした人型の足跡が途切れることなく続いており、その軌跡は迷いもなく奥へ向かって伸びていることが確認でき、その歩幅も重心も一定で、まるで目的地を完全に把握しているかのような直線的な移動が見て取れた。


リリアがそれを目で追いながら言う。


「これ、ずっと同じペースで進んでるね、止まった感じも全然ない」


エレノアが即座に補足する。


「移動は直線的で、停止や迂回の痕跡は一切確認できません。明確な意図を持った進行と判断できます」


ルナ


「……一直線」


セレスティアがその様子を見ながら静かに言葉を重ねる。


「目的がある動きだね、それもかなりはっきりした」


そして何より異様なのは、その足跡が異形の存在する領域を横切っているにもかかわらず、一切の戦闘痕が見られない点であり、通常であれば必ず発生するはずの衝突や痕跡が完全に欠落していることだった。


リリアが眉をひそめる。


「これさ、やっぱりおかしいよね、普通なら絶対ぶつかってるでしょ」


エレノアが冷静に結論を出す。


「異形と干渉していない、あるいは干渉されない存在である可能性が極めて高いです」


ルナ


「……襲われてない」


その時、リックがわずかに視線を動かしながら低く呟く。


「……カイン」


一瞬、空気が張り詰めるが、エレノアはすぐに首を振って否定する。


「可能性は低いです。対象は歩行による移動を行っていますが、カインは空間出現型であり、移動痕を残す存在とは一致しません」


セレスティアも続ける。


「出るなら、もうここにいるはずだよね」


ルナ


「……いない」


つまりこれはカインではない。


リリアが小さく息を吐く。


「じゃあ逆に、これ何なのさ……」


その答えが出る前に、前方に現れた異形の動きが明らかに異なっていることに気づき、数は少ないものの動きが鈍く、どこか落ち着きのない様子で奥から離れるように動いているのが見て取れた。


リリアが構えながら言う。


「……なんか変だね、あれ」


エレノア


「反応遅延を確認、通常より動作が鈍化しています」


ルナ


「……逃げてる」


セレスティアが低く言う。


「これ、追われてるね」


リック


「処理」


戦闘は短く終わり、いつもの流れで異形は消えるが、その異常な挙動だけが場に残る。


エレノア


「外部からの圧力が存在する可能性が高いです」


ルナ


「……奥、危険」


その瞬間、小型ゴーレムの一体が唐突に停止し、消失も損傷もしていないにもかかわらず、制御応答だけが完全に遮断されるという異常が発生する。


リックがわずかに目を細める。


「停止」


エレノアが感覚を辿る。


「外部干渉です」


ルナ


「……来る」


次の瞬間、そこに“いた”。


音もなく、兆候もなく、ただ自然にそこに存在している。


それは人型だった。


だが、既知のどの種族にも当てはまらない。


視線が合う。


一瞬だけ。


その人型が、わずかに口元を動かした。


「やあ、遅かったね」


場の空気が凍る。


「君が噂のリック君かい?」


誰も動けない。


「ギルマスから聞いてるよ」


リリアが小さく息を呑む。


セレスティアの表情がわずかに変わる。


エレノアは無言で分析を続けている。


その存在は続ける。


「もう中央部は押さえたから、先に帰るね」


軽い。


あまりにも軽い口調。


だが、その言葉の意味は重い。


次の瞬間。


消えた。


何も残さず。


リリアがようやく声を出す。


「……は?」


エレノア


「追跡不可」


ルナ


「……いない」


セレスティアがゆっくりと言う。


「今の……完全に上だね」


リックは短く言う。


「別だ」


リリアがぽつりと呟く。


「……やばいどころじゃないでしょ、あれ」


エレノアはわずかに間を置き、静かに結論を出す。


「危険度、再定義」


「既存戦力指標に当てはめた場合――特S級を超過する可能性が極めて高いです」


空気が変わる。


ルナ


「……上」


セレスティア


「正面は無理だね」


リック


「観察」


戦う対象ではなく、測る対象。


ネブラの奥。


そこに、まだ何かがある。


「進む」


戦いは、次の段階へ進む。



続く。

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