第2部 第21話「最終確認」
第2部 第21話「最終確認」
ネブラへ入る前に、リックは拠点の前で足を止め、そのまま洞窟の方向へ視線を向けた。前日に外殻から中層までを削り切ったが、それが本当に完全だったのかを確かめる必要がある。残っていれば、それはそのまま背後の不安になる。
リックは短く言う。
「確認する」
小型ゴーレムが一斉に展開される。数は多く、散開する範囲も広い。洞窟の入口から奥へと流れ込むように進み、外殻、中層、その奥へと順に走査していく。
ルナが静かに呟く。
「……ない」
エレノアが反応を追う。
「消失反応なし。出現兆候も検知できません。このまま走査を継続します」
しばらくして、すべてのゴーレムが戻る。消えた個体は一つもない。
リック
「終わりだ」
リリアが周囲を見回す。
「ほんとに全部消えたんだね。あれだけいたのに、ここまで綺麗になるんだ」
セレスティアが流れを確かめる。
「干渉もほとんど感じない。この状態なら、外からの影響もないね」
エレノアが結論を出す。
「洞窟外殻から中層まで、完全制圧を確認しました。再発兆候もありません」
ルナ
「……終わり」
静けさが残る。
それは偶然ではなく、削り切った結果だった。
拠点周辺へ視線を戻す。
リリア
「外もかなり減ってるよね」
エレノア
「出現数は継続して減少しています」
ルナ
「……薄い」
セレスティアは少しだけ目を細める。
「流れが偏ってるね。全部どこかに寄ってる感じがする」
エレノアが言葉にする。
「総数が固定されている可能性があります。現在はネブラ側に集中していると推測できます」
リリア
「ってことは、残りは全部あっちってことだね」
ルナ
「……ネブラ」
リックはそれ以上言わない。
「行く」
工房へ向かう。
中に入ると、金属を打つ音が止まる。
バルドが顔を上げる。
「来たか。ちょうどいいところだ」
リックは前に出る。
バルドは布を外す。
そこにあったのは、新しく組み上げられた武器。黒い鉱石を基にした構造で、内部に何かを“溜める”ための流路が組み込まれている。
リリアが目を輝かせる。
「おお、これ完成したんだ」
バルドは短く言う。
「溜める。流す。分けてる。暴発はしねぇ」
エレノアが確認する。
「出力制御はどの程度まで可能ですか」
バルド
「流路で調整してる。溜めた分だけ出る。無駄にはならん」
セレスティアが軽く触れる。
「干渉も安定してる。崩れないね」
シルヴィアが短く言う。
「出力確認、必要」
リリア
「だね、試してみよう」
リック
「森で確認する」
ネブラ手前の森へ向かう。
木々の間は静かだった。以前は常に何かの気配があった場所だが、今はほとんど感じられない。
リリアが周囲を見渡す。
「……いないね。ここまで減る?」
ルナ
「……ほぼ、ない」
エレノア
「外部戦力はほぼ枯渇しています」
セレスティア
「流れも薄い。ここはもう影響が弱いね」
しばらく待つ。
一体、現れる。
リリアが構える。
「ちょうどいい、試そうか」
リックは短く言う。
「使え」
リリアが武器を振るう。
内部に溜められた力が一気に放出される。
衝撃。
異形が崩れる。
一撃で。
リリアが軽く振り返る。
「……これ、かなり強いね」
エレノアが分析する。
「出力は想定通りです。蓄積量に比例して威力が上昇しています」
セレスティア
「干渉も乱れてない。安定してる」
シルヴィア
「処理時間、短縮」
ルナ
「……使える」
追加の敵は出てこない。
静かなまま。
エレノア
「外部戦力、ほぼ消失と判断できます」
リック
「戻る」
街へ向かう。
通りはいつもと同じように見えるが、違いがある。
気配がない。
リリアが歩きながら言う。
「街も、ほんとにいなくなったね」
セレスティア
「ここまで変わるんだ」
エレノア
「出現源が限定されている証拠です」
ルナ
「……ない」
リックは周囲を見渡す。
結論は出ている。
エレノアが整理する。
「出現源はネブラ、および拠点周辺が主です。他は付随的なものと考えられます」
リリア
「じゃあ、あとはあそこだけだね」
ルナ
「……ネブラ」
拠点へ戻る。
準備を確認する。
ゴーレム。装備。配置。
問題はない。
セレスティア
「全部整ってる」
エレノア
「問題ありません」
シルヴィア
「対応可能」
ルナ
「……行ける」
リリア
「準備ばっちりだね」
リックは前を見る。
ネブラの奥。
すべての残りが、そこにある。
リックは短く言う。
「入る」
ルナ
「……ネブラ」
リリア
「今度こそ終わりだね」
静かに、だが確実に。
最終準備は終わった。
⸻
続く。




