第2部 第20話「外殻の制圧」
第2部 第20話「外殻の制圧」
ネブラへ再突入する前に、リックは拠点の前で足を止め、外側に残る敵の分布と密度を頭の中で組み直していた。数は確実に減っているが完全ではなく、この状態で奥へ進めば背後からの干渉が残るため、先に洞窟外殻から中層までを削り切り、退路と補給線を完全に安定させる必要があると判断する。
リックは短く言う。
「外を消す」
リリアがすぐに反応し、ハンマーを肩に乗せて笑う。
「いいね、それ!中に行く前に全部片付けちゃおう、やりやすいよ」
エレノアが一歩前に出て、作戦を言葉にする。
「現状の密度であれば制圧可能です。法力で分断を維持し、流れを固定します。押す必要はありません、削り切れます」
セレスティアは周囲の流れを確かめ、短く添える。
「干渉は弱い。この範囲なら崩れない、このままいける」
ルナが低く呟く。
「……削る」
リックは手を上げる。
「全部出す」
空気が揺れ、小型ゴーレムが一斉に展開される。その数はこれまでで最多となり、続いて中型ゴーレムが前線に並んで押し返す圧を作り、さらに地面が沈むほどの重量とともに四体の大型ゴーレムが現れる。
「四方、固定」
大型が前後左右に据えられ、その場から動かずに壁として機能し始めることで、通路は強制的に絞られ、戦線は一気に安定する。
リリアが周囲を見て口を開く。
「これいいね、完全に閉じ込める形じゃん。逃げ場ないよ」
エレノアが即座に補足する。
「流入方向を一方向に限定しました。以降、処理は単純化されます」
セレスティアは流れの歪みを一瞥し、静かに言う。
「ライン固定できてる。崩れない」
ルナ
「……止まる」
リック
「進む」
洞窟へ踏み込むと同時に、小型ゴーレムが先行し、すぐに一体が消えることで接触が確認される。
ルナ
「……来る」
異形が現れた瞬間、エレノアの法力が展開され、空間がわずかに歪み、通路が分割される。
「分断完了。流れ固定」
敵の進行方向は強制的に絞られ、一列に流れる。
リリアが踏み出しながら言う。
「いいねこれ!勝手に並んでくれる!」
ルナがわずかに手を動かす。
「……そこ」
一点が鈍る。
エレノアが重ねる。
「拘束維持、処理可能です」
セレスティアは全体を見て短く告げる。
「負荷なし。このまま回せる」
シルヴィアが前に出る。
「対象固定、石化」
完全停止。
リリアが一気に踏み込み、叩き砕く。
「はい一体、次いこう!」
次の個体が流れてくる。
エレノア
「分断維持、継続」
ルナ
「……次」
また一点が止まる。
シルヴィア
「石化、入る」
リリア
「いいテンポだね、このまま全部いけるよ!」
戦闘は完全に流れ作業になる。エレノアが空間を切り、ルナが止め、シルヴィアが固定し、リリアが破壊する。
リック
「流せ」
奥へ進むにつれ密度は上がるが、戦線は崩れない。大型ゴーレムが四方を固定しているため、敵は一方向からしか来ることができず、処理は常に同じ形に収束する。
リリアが連続で叩きながら笑う。
「ちょっと増えてきたけど、全然回せるねこれ!」
エレノアが法力を強める。
「分断強化。複数処理に移行します」
空間がさらに細かく分かれ、複数の個体が同時に分離される。
セレスティアが流れを確認する。
「まだ余裕ある。維持できてる」
ルナ
「……止まる」
複数が鈍る。
エレノア
「拘束補助、維持」
シルヴィア
「複数対象、石化」
完全停止が同時に発生する。
リリア
「まとめていくよ!」
連続で叩き砕く。
詰まりはない。
セレスティアは前に出ないまま、短く状況を刻む。
「乱れなし。このまま押し切れる」
電気は使わない。必要がない。
さらに削る。
やがて流れが途切れる。
エレノア
「反応、急減しています」
セレスティア
「流れも落ちてる。終わりに近い」
ルナ
「……ほぼ、ない」
シルヴィア
「固定対象、消失」
リック
「探れ」
小型ゴーレムが散開し、洞窟内を走査する。消失反応はなく、全個体が戻る。
リック
「終わりだ」
洞窟は静まり返る。
リリアが周囲を見渡す。
「うわ、ほんとに何もいないね。ここまで綺麗に消えるんだ」
エレノア
「外殻から中層まで、完全制圧を確認」
セレスティア
「干渉なし。完全に抜けてる」
ルナ
「……ない」
拠点へ戻る。
空気が違う。
リリア
「外もかなり減ってるね」
エレノア
「総量減少を確認」
セレスティア
「全体に影響出てる。繋がってるね」
ルナ
「……繋がってる」
リックは目を閉じ、ゴーレムとの感覚を辿る。
「……見える」
配置、残存、消失。すべてが前より明確になる。
リックは目を開ける。
「次は中だ」
ルナ
「……ネブラ」
リリア
「次は本番だね」
リック
「行く」
ネブラの奥へ。
準備は整った。
⸻
続く。




