表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
60/73

第2部 第9話 「侵入、崩れないはずの防衛線」

第2部 第9話


「侵入、崩れないはずの防衛線」


地下の空気は重い。粘りつく“ズレ”が通路の奥から押し上げてくる。


「……もう、来てる」

ルナが言う。視線は奥に固定されたまま動かない。


「迎える。検証しながらだ。無理に潰すな」

リックは短く切る。


配置は決まっている。ルナが前で位置を捉え、エレノアが経路を締め、セレスティアが空間を整え、シルヴィアが拘束、リリアとゴーレムが叩く。


「入るよ」


歪みが滲み、輪郭のない“何か”が滑り出る。


「……五」


「動かす」


ルナが踏み出す。「……右に流す」

見えない存在の進路がわずかに変わる。


「逃げ道、切ります」

エレノアの矢が通路の余白を削り、風が抜け道を潰す。流れが一本に収束する。


「……引きます」

セレスティアが空間に手をかざす。だが、遅れる。ズレたまま抜ける個体が出る。


「当たらない!」

リリアの一撃が空を切る。


「拘束、間に合いません」

シルヴィアの霧が空振る。


前に出たゴーレムが被弾する。鈍い衝撃。だが砕けない。


「……浅いな」

リックが呟く。


「……触れてる。でも、重くない」

ルナ。


敵は攻撃している。だが、こちらに“乗りきっていない”。衝撃はあるが、致命にはならない。


「順番を揃える」

リックが切る。「ルナ基準、エレノアで流す。セレスティアは後段で引け。シルヴィアはその後だ」


セレスティアが一度目を閉じ、光を細く束ねる。

「同調、かけます。動きを合わせてください」

淡い光が全員に触れる。呼吸、踏み込み、視線。微細なズレが揃う。


「石化耐性も付与します。触れても持っていかれないように」

もう一層、薄い光が重なる。


再構築。


「……右、二つ」

ルナ。


「逃げ道、閉じます」

エレノア。


「……今」

セレスティア。


「……止めます」

シルヴィア。


一瞬、揃う。


「今!」

リリアが叩き込む。ゴーレムが押し込み、圧が一点に集中する。歪みが崩れ、二体が消える。


「……形になってきたね」

リリアが息を吐く。


だがまだ安定しない。


「壁、試す」

リック。


ルナが氷壁を立てる。通路が塞がれる。だがズレは止まらない。回り込む。避ける。


土壁。同じ。風壁。進路を変えるだけ。


「……ただの邪魔だね」

リリア。


「障害物として認識されています」

エレノア。


「閉じるな、流せ」

リックは即断する。


「……火、入れるよ」

リリアが手をかざす。炎が通路を舐める。


反応が変わる。ズレが鈍る。距離を取る。


「……嫌がってる」

ルナ。


「ダメージは薄いが、動きが落ちます」

エレノア。


「火は通る。前処理に使え」

リック。


次の群れが来る。


「火、入れる」


炎が走る。ズレが一瞬緩む。


「今」

セレスティア。


「……固定」

シルヴィア。


「叩く!」

リリア。


今度は安定して消える。


「いいね、これ」


だが検証は続く。


「石化、広げる」

リック。


シルヴィアが薬を展開し、エレノアが風で散らす。


霧が広がる。だが――


「……止まらない」

ルナ。


「密度が落ちています」

エレノア。


「……個体ごとにズレています」

シルヴィア。


「単体だ。広げるな」

リック。


そのとき。


「……違う」


ルナの声。


空気が変わる。奥から来るものが違う。重い。層がある。


一体。だが、一つではない。


「……二重……いや、もっと」


リリアが踏み込む。「いくよ!」


叩く。


――抜ける。


「……軽い!」


ゴーレムが受ける。衝撃はある。だが崩れない。


「……やっぱりだな」

リック。


相手もこちらに完全には干渉できていない。


「分けろ」


「……切る」

ルナが槍を動かす。位置が分かれる。


「逃げ道、封鎖」

エレノア。


「火、入れる!」

リリア。


一瞬止める。


「引きます!」

セレスティア。


「……固定」

シルヴィア。


揃う。


「叩く!」


――浅い。


崩れない。


「まだ足りない」

リック。


一拍。


「電気を重ねる」


リリアが頷く。「短くいくよ」


鉱石を擦る。


パチッ。


さらに重ねる。


パチッ!


その瞬間、空間が揃う。


対象だけではない。周囲のズレごと一瞬で“合う”。


「……止まった」

ルナ。


「違うな」

リックが言う。「当ててるんじゃない。空間が揃ってる」


「今です!」

セレスティア。


――だが光が揺れる。


「……光が崩れています。電気で場が乱れています。かけ直します」


セレスティアが呼吸を整え、光を再構成する。


「同調、再展開。維持します」


再び全員の動きが揃う。


「……固定!」

シルヴィア。


「いくよ!」


リリアが踏み込み、ゴーレムと同時に叩き込む。


直撃。


歪みが大きく崩れる。


だが――消えない。


個体は揺れたまま後退する。


「……削れたけど、残るね」

リリア。


「追うな」

リックは即断する。「情報は足りた」


ルナが奥を見る。「……まだ、いる」


数は減っていない。むしろ、溜まっている。


「今日はここまでだ」


誰も異論はない。


撤退。


 


転移で生活ブロックへ移る。


空気が軽い。火が揺れている。


「……やっぱ、こっちは違うね」

リリア。


ルナが目を閉じる。「……少ない」


洞窟の入口を見る。気配はある。だが、こちらへ来ない。


「……来ないね」


沈黙。


セレスティアが火を見つめる。「……火、でしょうか」


炎が揺れる。熱が流れる。空気が安定している。


リックは視線を落とす。


(火は効く。ただし、倒せない)


だが――


「……近づかない理由にはなる」


エレノアが頷く。「常にある熱が境界になっている可能性があります」


ルナが言う。「……向こう、熱ない」


「だから溜まる」

リック。


短い沈黙。


「線にする」

リックが言う。


「火で?」

リリア。


「ああ。止めるんじゃない。近づかせない」


エレノアが即座に動く。「配置を組みます。帯状に展開します」

シルヴィアも頷く。「分布を調整します」

ルナ「……境界、強くする」


リリアが笑う。「やっと分かりやすい対策だね」


リックは洞窟を見据える。


(止める場所は選べる)


「……線を引く」


炎が揺れる。


その向こうで、“ズレ”は動かない。


だが、消えてもいない。


戦いはまだ終わらない。


ただ――


やり方は、見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ