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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第2部 第2話 新拠点整備と、取り戻す日常

第2部 第2話 新拠点整備と、取り戻す日常


洞窟の中は静かだった。外の音は届かず、風もない。削られた壁面は滑らかで、無駄な凹凸がない。動線は短く、視界は遮られ、守るための構造としては完成している。だが、そこに生活の気配は薄い。


「……静かすぎるな」


リックが言う。リリアが肩を回す。「落ち着くってより、詰まる感じだな」ルナは壁に触れたまま言う。「……音が返らない」エレノアが説明する。「反響を抑えています。外部への漏洩を防ぐためです」


「その分、何も残らない」


リックは短く言った。ここは“守る場所”。だが、“暮らす場所”ではない。


「火は外で使う」


全員が顔を上げる。「煙、匂い、光。全部リスクになる。ここでは使わない」セレスティアが頷く。「食事も外ですね」「ああ。中は最低限にする」「……戻る場所」ルナが呟く。「そうだ」それで決まった。


地下道を進む。緩やかに曲がる通路は一直線ではない。視線を通さず、侵入を防ぐ構造だ。「こういうの、嫌いじゃない」リリアが言う。「侵入者には不利です」とエレノア。「こっちは慣れる」リックが言い、ルナが小さく頷く。


外に出る。風が流れ、空気が軽い。「……やっぱ外だな」リリアが息を吐く。ルナが周囲を確認する。「視界良好」シルヴィアは地面に手を当てる。「……まだ少し乱れていますが、問題ありません」エレノアは配置を見ている。「ここを基点に外部施設を展開します。分散配置にします」「任せる」


調理場は出口付近に置く。火を使う以上、すぐ引ける位置だ。セレスティアが炉の位置を決める。「煙は流れます」家事室は隣。ルナが布を広げる。「ここなら乾く」水の流れと風を見ていた。


製薬室は少し離す。シルヴィアが場所を決める。「……ここがいいです」「理由は」「魔力が安定しています」エレノアが確認する。「問題ありません」


さらに外に鍛冶室。リリアが地面を踏む。「ここなら火と音が流れる」「洞窟からの干渉も少ない」配置が決まる。


ゴーレムが起動する。石の身体が動き、資材を運び、一定のルートを巡回する。「巡回は三系統」リックが言う。「死角を残しません」とエレノア。ゴーレムは無言で動き続ける。「……便利だな」とリリア。「全部は任せない。判断は人間だ」とリック。


一通り整う。だがまだ足りない。


「畑はどうする」


リックが言う。「ここじゃ近い」とリリア。「戦闘圏内です」とエレノア。シルヴィアが目を閉じる。「……魔力も乱れています」「離す」


外部施設からさらに歩く。距離が離れるほど空気が変わる。木々が増え、地面が柔らかくなる。「ここは?」リリアが聞く。エレノアが周囲を見る。「日照良好、水も確保できます」シルヴィアが触れる。「……安定しています」ルナが確認する。「視界も取れる」リックが頷く。「ここにする」


決まる。作業が始まる。土を掘り、石を取り、水路を作る。ゴーレムが加わる。正確で、迷いがない。「こういうの、嫌いじゃないな」とリリア。「……分かる」とルナ。形ができ、畑として成立するラインに届く。


そのとき、リックが言う。「地下から繋ぐ」全員が止まる。「畑まで地下道を伸ばす。外だけじゃ不安定だ」エレノアが即座に理解する。「二重動線ですね」「ああ。夜間、雨天、戦闘時にも使える」


ゴーレムが動く。掘削が始まる。一定のリズムで土が削られる。静かに、確実に。「門も入れる」とリック。「分岐ごとに区切る」エレノアが頷く。「区画管理ですね」「罠も仕込む」リリアが笑う。「やっとそれっぽくなってきたな」


地下道は伸びる。途中で分岐を作り、別ルートへ抜ける道も確保する。「逃げ道は必要だ」とリック。「……分かる」とルナ。罠は殺さない。止めるだけ、遅らせるだけ。ゴーレムが設置を補助し、門が組まれ、通路が区切られていく。


時間が流れる。


火が入る。セレスティアが調理を始める。煙は流れ、匂いは消える。「外の方がいいな」とリリア。「安全です」とセレスティア。食事の時間。温かい。それだけで十分だった。


リックは全体を見る。拠点、外部、畑、地下道。すべてが繋がる。(これでいい)


そのとき、ゴーレムが一体、止まる。ほんの一瞬。すぐに動く。「……今、止まったか?」とリリア。「誤差だ」とリック。だが視線は外さない。


風が揺れる。遠くで、何かが動いた気がした。シルヴィアが小さく言う。「……何かいます」ルナが視線を向ける。「見えない」エレノアが言う。「距離があります」


リックは一度だけ考える。「……続ける」


止めない。日常を作る手は、そのまま動き続けた。

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