表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/76

第50話 余韻、そして残されたもの


洞窟の空気が、ゆっくりとほどけていく。張り詰めていた圧が消え、重さだけが残る。誰もすぐには動かない。


リリアが息を吐く。「……終わった?」


リックは短く返す。「一応な」


完全な安堵ではない。勝ったという事実と、何かが引っかかる感覚が同時に残っている。


視線の先、カインは膝をついたまま動かない。だが崩れた様子はない。呼吸も乱れていない。むしろ、静かに整っている。


「……余裕すぎない?」


リリアの呟きに、エレノアが静かに答える。「ええ。全力ではない動きでした」


リックも同じ結論に至っている。(やはり、そうか)


そのとき、空気がわずかに歪んだ。


気配が一つ、増える。


全員の意識が一斉にそちらへ向く。


そこに、立っていた。


黒を基調とした装いの人物。無駄のない立ち姿。戦う気配はない。だが、明らかに“ただ者ではない”。


「迎えに来ました」


落ち着いた声。


リリアが眉をひそめる。「誰?」


その人物はわずかに頭を下げる。


「セシルと申します。カイン様の副官です」


空気が変わる。


副官。その言葉だけで、場の意味が塗り替わる。


リックが一歩も動かずに問う。「……何をしに来た」


「そのままの意味です。迎えに」


セシルは視線をカインへ向ける。まるで状況など最初から把握しているかのように。


そして、静かに続けた。


「今回、カイン様は全力ではありません」


一瞬、言葉が止まる。


リリアが顔を上げる。「は?」


エレノアは否定しない。「……納得できます」


リックもまた、内心で肯定していた。(確信に変わったな)


セシルは淡々と告げる。


「本来の能力をすべて使用したわけではありません。出力、制御ともに制限された状態です」


場の空気が冷える。


それでも勝った。だが――


完全に勝ったわけではない。


「じゃあ、なんで戦ったのよ」


リリアの問いに、セシルはわずかに視線を向ける。


「目的が異なるからです」


「……殺すつもりはなかった、ってこと?」


「はい」


迷いのない即答。


「現時点で、あなた方を排除する必要はありません」


言葉は穏やかだが、内容は重い。


リックが問う。「目的は?」


わずかな沈黙。


セシルは首を横に振る。「現段階でお答えする内容ではありません」


完全な拒絶ではない。だが、明確に線が引かれている。


そのとき、カインがゆっくりと顔を上げた。


「……ああ、来たか」


軽い声。いつもと変わらない。


「楽しかった」


それだけ言って、立ち上がる。傷はある。だが致命ではない。動きに支障もない。


リリアが思わず言う。「……なんなの、あんた」


カインは肩をすくめる。


「またやろうぜ」


その言葉に、軽さはない。確約だ。


セシルが一歩前に出る。「では、失礼します」


次の瞬間、空間が歪む。


二人の姿が、消える。


残されたのは静寂だけだった。


 


しばらく、誰も動かなかった。


やがてリリアが座り込む。「はぁ……なんか、勝った気しないんだけど」


ルナが槍を下ろす。「……終わってない」


エレノアが静かに続ける。「ええ。むしろ、始まりに近い」


シルヴィアは小さく息を吐く。「……次は、もっと重い」


セレスティアが周囲を見渡す。「でも、耐えられました」


リックは何も言わず、洞窟の奥を見ていた。


消えた気配。その余韻。


(あれが本気ではない)


理解している。


だからこそ――


「……まだ終わってない」


静かに言う。


誰も否定しない。


戦いは終わった。だが、物語は終わっていない。


むしろ――ここからだ。



――第一部 完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ