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新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

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第49話 決着、最後の一撃


洞窟の空気が張り詰める。シルヴィアの遅延は多層で安定し、セレスティアの同期が全員の初動を揃える。勝ち筋は見えている。だが長くは持たない。


リックが言う。「ここで決める」


リリアがハンマーを握り直す。「任せな」ルナは槍を低く構え、「……固定する」と短く返す。エレノアは射線を切り替え、「貫きます」と告げる。シルヴィアは息を整え、「……層、最大で維持」と呟き、セレスティアは光を締める。「同期、上げます」


カインが楽しげに笑う。「来い」


同時に踏み込む。


リリアが面を広げる。潰さない。逃げ道を外へ開き、圧で誘導する。砕けた床が波打ち、空間が押し出される。ルナがその外縁に線を引く。一本ではなく、網にする。穂先が交差し、経路が細く束ねられる。


シルヴィアの層がその網に絡みつく。「……遅延、固定」見えない粘りが結果の“置き場”を縛る。


セレスティアが合図を落とす。「……今」


エレノアの矢が走る。風を極細に絞り、曲げて交点へ通す。一射、二射、三射。完全同期で“点”が刻まれる。


ヒット。浅いが確実。


カインが半歩ずれる。「いいね」


反撃が来る。見えない一撃が横から差し込む。セレスティアの結界が軋む。「っ……維持します!」リリアがハンマーで受け、ルナが槍で軌道を逸らし、エレノアが矢で押し返す。だが圧は一段上がっている。


「詰めるな。広げてから重ねろ」


リックの声で再配置。リリアが面を横に流し、空間を外へ開く。ルナが線を引き直し、網を厚くする。シルヴィアが層を均す。「……均一化、完了」セレスティアが呼吸を揃える。「……今」


二撃目。面・線・遅延・同期・点が一体化し、深く通る。カインの身体がわずかに沈む。


「重いな」


カインの気配が変わる。遊びが薄れ、圧が研ぎ澄まされる。次の瞬間、連撃。空間そのものが歪み、逃げ場を奪う。


ルナが踏み込み、槍で“線”を増やす。「……ここ」穂先が結果の置き場を先回りして縫う。シルヴィアの遅延がそこに噛み、わずかなラグが生まれる。


リリアが叩き込む。床ごと押し潰すが、潰し切らない。あえて残す隙間に、エレノアが矢を通す。


三撃目。ヒット。


だが消耗が見える。セレスティアの光が一瞬だけ揺れる。「負荷が……でも、維持できます」シルヴィアの層も薄く乱れる。「……層、持ち直す」


カインの一撃が深く入る。リリアが弾かれ、壁に叩きつけられる。「ぐっ……!」ルナが間に入り、槍で受け流すが、腕に負担が走る。エレノアが位置を落とし、射線を切り替える。「カバーします」


崩れかける。


リックが低く言う。「一回で終わらせる」


全員の動きが止まる。理解が揃う。


「全部、ここに集める。面で誘導、線で固定、遅延で止め、同期で揃え、点で貫く。フェイントを一つ入れる」


リリアが笑う。「派手にいくよ」


セレスティアが深く息を吸う。「……合図は一度だけです」


シルヴィアが頷く。「……層、最大。これで最後」


ルナが槍を握り直す。「……固定する」


エレノアが弓を引く。「外しません」


カインが目を細める。「いいね」


動く。


リリアがあえて正面へ強く踏み込み、ハンマーを振り上げる。大振り。見せる一撃。カインの結果がそこに“置かれる”。


だが本命は違う。


振り下ろさない。直前で角度を変え、面を横に流す。空間を外へ押し、逃げ道を“意図的に”一箇所へ集める。


ルナがその一点へ線を通す。槍が交差し、網が閉じる。シルヴィアの遅延がその中心に重なり、結果の置き場が遅れる。


セレスティアの声が落ちる。「……今」


完全同期。


エレノアの矢が放たれる。最短、最速、最細。曲げて、遅延の中心へ。


同時に、リリアが叩き込む。ルナが押さえ、シルヴィアが固定し、セレスティアが揃える。


一点集中。


クリーンヒット。


音が遅れて届く。空間が震え、カインの身体がはっきりと崩れる。


静寂。


カインが膝を折る。崩れたまま、顔を上げて笑う。


「……やるじゃん」


リリアが息を吐く。「はぁ……やっとだ」


エレノアが弓を下ろす。「制圧、完了」


ルナが槍先を下げる。「……固定、解除」


シルヴィアが層を引く。「……遅延、解放」


セレスティアの光が緩む。「同期、終了……」


リックは一歩だけ前に出る。視線を外さない。


「終わりだ」


カインは肩をすくめる。「今回はね」


軽い調子のまま、立ち上がらない。戦意は消えている。敗北を認めた、というより――満足している顔だ。


洞窟の重さが抜ける。張り詰めていた空気が、ようやくほどける。


誰も死なない。誰も欠けない。


全員で掴んだ一撃だった。

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