第34話 「静かな準備と、仕掛けられた防衛線」
町に戻ると、空気はいつもと変わらなかった。
だがリックたちの内側だけが違っている。
「いやー、今回はかなり動きやすかったね」
リリアが軽く腕を回す。
「前ならもっと苦戦してた気がする」
エレノアは淡々と返す。
「連携精度が向上しています。ただ――」
「敵も適応しています」
リリアが肩をすくめる。
「だよね。あの固いやつ、普通に嫌だったし」
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ギルドに入る。
ざわめきの中、受付へ向かう。
リックが短く言う。
「報告だ」
職員が顔を上げる。
「内容をお願いします」
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エレノアが整理して話す。
「輸送部隊を制圧。素材を回収」
「ただし、強化個体を確認」
「薬耐性、および意思を持つ個体」
職員の表情が変わる。
「……詳細を」
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リックが続ける。
「敵は“段階移行”と言っていた」
空気が止まる。
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職員が一度席を外す。
数分後、戻ってきた。
「確認しました」
「今回の報告は、非常に価値が高いものです」
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一呼吸置いて。
「あなた方のランクを引き上げます」
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リリアが思わず声を上げる。
「え、ほんとに!?」
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「Bランクへ昇格です」
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ざわめきが広がる。
周囲の視線が集まる。
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リックは短く言う。
「受理する」
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続けて袋が差し出される。
「報酬、および素材買取分です」
重みがある。
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リリアが覗く。
「……え、これ結構すごくない?」
エレノアが冷静に言う。
「今後の装備と維持費に回します」
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職員が続ける。
「ただし、警告があります」
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「結社の活動は明確に変化しています」
「各地で“段階移行”の報告が出ています」
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リックが言う。
「問題ない」
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職員がわずかに目を細める。
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リックは続ける。
「やることは同じだ」
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沈黙のあと。
職員は頷いた。
「……理解しました」
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「今後、特別案件として扱います」
「情報は優先的に共有します」
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ギルドを出る。
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リリアが笑う。
「Bランクってさ、ちょっとカッコよくない?」
エレノア。
「責任も増えます」
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そのままザクトの店へ向かう。
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扉を開けると、すでにこちらを見ていた。
「……上がりましたね」
リック。
「情報は」
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ザクトが地図を広げる。
「動きが変わってます」
「輸送の頻度が増加」
「そして――」
指が止まる。
「拠点を探している形跡があります」
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リリア。
「それ、普通にヤバくない?」
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「ええ」
ザクトが淡々と言う。
「あなた方の拠点も候補に入っている可能性があります」
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帰り道。
空気が重い。
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リックが言う。
「防衛に切り替える」
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拠点へ戻る。
扉が閉まる。
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「強化する」
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全員が動く。
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リックは外へ出る。
杖を地面に突く。
「……起きろ」
地面が隆起する。
土と石が集まり、形を成す。
巨大なゴーレムが立ち上がる。
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リリア。
「うわ、頼もしい!」
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リック。
「正面はこれで止める」
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「じゃあその前に落とす」
リリアが地面を指す。
「踏んだら崩れる」
「押したら落ちる」
手際よく罠を組む。
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シルヴィアが近づく。
「……ここ、使います」
薬を設置。
「通過時に吸入」
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ルナが動く。
「……ここ、閉じる」
氷で通路を制限。
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エレノア。
「このラインに誘導すれば、全て射程内です」
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セレスティア。
「ここで支えます」
回復拠点を整える。
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リックが全体を見る。
ゴーレムが配置につく。
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「流れは作れた」
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装備確認。
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リック:杖+石
リリア:炎ハンマー
エレノア:弓
シルヴィア:二刀
ルナ:槍
セレスティア:剣
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シルヴィア。
「……眠り、麻酔、毒、石化」
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夕方。
少しだけ緩む時間。
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ルナは洗濯。
リリアは地面に寝転がる。
セレスティアは食事。
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エレノアは外を見続ける。
「……風が変わっています」
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夜。
静か。
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リックが外に立つ。
ゴーレムの横。
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風が揺れる。
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わずかな気配。
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「……近いな」
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遠く。
影が動く。
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「……確認」
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リックが振り返る。
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「配置につけ」
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静寂が張り詰める。
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戦いは、すぐそこまで来ていた。




