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新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

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第33話 「完成した戦術、試される実力」


朝の空気は澄んでいた。


冷たいのに、不思議と重くない。


リックは足元の砂を軽く踏み、感触を確かめる。


「……足場は悪くない。押し込めるな」


その一言で、全員の意識が揃った。


エレノアは周囲を見渡す。


「前列三、後方に二。……一人だけ、歩幅が違います」


リリアが肩を回す。


「じゃあその変なの、私がもらうね」


ルナが短く言う。


「逃げ道、ある」


リックが頷く。


「塞げるか」


「できる」


シルヴィアは小瓶の栓を静かに開けた。


「風が安定しています。拡散条件、良好」


セレスティアが手を合わせる。


「少しだけ、背中押しますね」


柔らかな光が広がる。


体が軽くなる。


リリアが笑う。


「うわ、これなら跳ねるみたいに動ける!」


リックは短く言う。


「前に出すぎるな。削ってから落とす」



「……来ます」


エレノアの声が少し低くなる。


「隊列、変則。警戒しています」


リックが杖を構える。


「いい。崩す」



風が走る。


エレノアの魔法。


流れが整えられる。



シルヴィアが右の剣を軽く振る。


「吸い込んでください」


白い霧が風に乗る。


自然に広がる。



護衛の一人が足を止めた。


「……っ?」


そのまま崩れる。


続けて二人。


声もなく沈む。



リリアが笑う。


「ほらね、やりやすい!」


飛び出す。


炎を纏ったハンマーが振り下ろされる。


地面ごと砕ける。



ルナが槍を突く。


「ここ、切る」


氷が走る。


道を遮断。


隊列が裂ける。



リックが杖を振る。


「中央、押さえる」


足元の石が浮く。


弾く。


鋭い音。


敵の肩を貫く。


さらに一発。


体勢を崩す。



「右、空いてる」


エレノアの声。


矢が放たれる。


風が絡む。


途中で軌道が曲がる。


側面から命中。



シルヴィアが踏み込む。


右の剣で浅く斬る。


「効いてます。呼吸、乱れてます」


動きが鈍る。



左の剣を静かに突き出す。


「――止まってください」


足元から石が広がる。


膝まで固まる。



リックが言う。


「今だ、崩せ」



リリアが叩き込む。


「はい終わり!」


粉砕。



流れは完璧だった。


無駄がない。


重なりが綺麗すぎる。



リリアが笑う。


「これ、前より全然楽じゃん!」



だがエレノアの視線は外れない。


「……一体、落ちていません」



その個体が前に出る。


霧の中でも動いている。


眠らない。


鈍らない。



「耐性持ちです。しかも……意識がある」


エレノアの声が変わる。



敵が口を開く。


「排除」


単調な声。



リリアがぶつかる。


「っ、重っ……!」


衝撃が返る。



シルヴィアが斬る。


「麻酔、入りが浅いです」



リックが前に出る。


杖を横に振る。


衝撃。


だが――踏みとどまる。



ルナが動く。


「囲う」


氷が一気に広がる。


逃げ道を潰す。



セレスティアが声を重ねる。


「少し強めますね。今なら押せます」


光が強くなる。



リックが短く言う。


「一点に集める。削るぞ」



エレノア。


「右肩、反応が鈍いです」


矢を放つ。


風で曲げる。


弱点に突き刺さる。



シルヴィア。


右で斬る。


「吸い込み、確認」


左で刺す。


「固定します」


腕が石化する。



ルナ。


「逃がさない」


氷がさらに締まる。



リック。


石を連続で撃つ。


「動かすな」


打ち込む。


押し込む。



リリア。


「固いなら――割る!」


炎が爆ぜる。


全力の一撃。



叩き潰す。



沈黙。



敵が崩れる。


だが。


口が動く。


「……供給……段階……移行……」


途切れる。



誰もすぐには動かなかった。



リックが言う。


「荷を確認する」



荷の中身。


以前より濃い。


重い。


歪んだ魔力。



シルヴィアが静かに言う。


「……濃度が上がっています。段階が進んでいます」



エレノアが続ける。


「先ほどの個体も……試験段階の可能性があります」



リリアが眉をひそめる。


「つまり、これが普通になるってこと?」



リックが短く答える。


「そうなる前に止める」



「撤収する」



全員が動く。


迷いはない。



安全圏。



リリアが息を吐く。


「いやー、でもさっきの、ちょっと楽しかった」



エレノアが首を振る。


「危険度は上がっています。偶然崩せただけです」



シルヴィア。


「……対策されています」



ルナ。


「……増える」



セレスティアが静かに言う。


「でも、ちゃんと押し切れました」



リックが全員を見る。


少しだけ間を置いてから言う。


「通用はする」



その言葉のあとに、続ける。


「だが、余裕はない」



短く。


「準備を詰める」



風が流れる。


遠くで、何かがこちらを見ていた。



「……観測完了」



戦いは、さらに深くなる。

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