第32話 「打ち直される力と、それぞれの武器」
工房の扉を開けた瞬間、熱が押し寄せてきた。
炉の炎が唸り、鉄の焼ける匂いが空気に満ちている。
規則的な打撃音が、空間の芯を叩いていた。
――カン、カン、カン。
「……持ってきたか」
振り向きもせずに言うバルドの前へ、リックは荷を置く。
黒い箱。
魔力結晶。
黒鉄山の鉱石。
バルドの手が止まる。
「……触るな、それ」
低い声。
シルヴィアが一歩前に出る。
「……結社素材です」
「見りゃ分かる」
軽く叩くと、箱がわずかに脈打つ。
「“流れてる魔力”だ。制御を誤りゃ、全部吹っ飛ぶ」
沈黙。
だがシルヴィアは目を逸らさない。
「……制御します」
バルドが鼻で笑う。
「言うじゃねぇか」
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素材が並べられる。
「黒鉄山の鉱石……上質だ」
「魔力結晶……通りがいい」
そして黒い箱。
「……問題はこれだ」
リックが短く問う。
「使えるか」
「使う。ただしそのままじゃねぇ」
視線がシルヴィアへ。
「分解して薬に落とせ」
「……はい」
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「全員分、打ち直す」
その一言で空気が変わる。
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リックの杖が炉に入る。
「魔力の流れが雑だ。整える」
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リリアのハンマー。
「打て」
逃げ場はない。
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エレノアの弓。
「風に合わせる。軌道を制御しろ」
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そして――
バルドが布を広げる。
二振りの剣が現れる。
シルヴィアの目がわずかに動く。
「……それは」
「前に作ったやつだ」
静かに置く。
「だが今回は違う」
黒い箱を見る。
「打ち直す」
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炉の火が強くなる。
刃が赤く染まる。
結社素材が混ざる。
魔力が揺れる。
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叩く。
整える。
流れを作る。
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やがて――
二振りの剣が再び形を得る。
だが以前とは違う。
静かに、危険な気配を帯びていた。
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「持て」
シルヴィアが受け取る。
右手、左手。
魔力を流す。
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右の剣。
「……拡散」
薬が自然に馴染む。
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左の剣。
「……固定」
床の一部が石化する。
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リリアが引く。
「それヤバくない?」
「……制御できます」
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バルドが言う。
「右は広げる刃」
「左は止める刃だ」
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リリアは打つ。
何度も。
「違う……」
だが。
「……分かった」
音が変わる。
炎が宿る。
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エレノアは弓を引く。
矢が飛ぶ。
風が乗る。
軌道が曲がる。
命中。
さらに霧が広がる。
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リックは杖を握る。
魔力が整う。
石を浮かせる。
撃つ。
一直線に飛ぶ。
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ルナは槍を突く。
氷が走る。
分断が完成する。
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セレスティアが手を合わせる。
光が広がる。
全員が強化される。
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シルヴィアが二刀を振るう。
右で斬る。
霧が広がる。
左で突く。
対象が固まる。
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「……眠り、麻酔、毒、石化」
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数日後。
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「できたぞ」
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全員が武器を構える。
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セレスティアがバフ。
エレノアが風。
シルヴィアが拡散。
ルナが分断。
リックが石を撃つ。
リリアが炎で叩く。
石化が止める。
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一瞬で終わる。
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バルドが言う。
「……やっと戦える形になったな」
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リリアが呟く。
「……できた」
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リックが全員を見る。
「……いける」
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短く。
「次で終わらせる」
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炉の火が揺れる。
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戦いは、次の段階へ進む。




