表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/69

第31話 「分断と汚染、そして奪取」


夕暮れの街道は、不気味なほど静かだった。


沈みかけた陽が、地面を赤く染めている。

風は弱く、だが確かに流れていた。


その流れを、エレノアは感じ取る。


「……風向き、安定」


低く呟く。


リックは杖の先を地面に触れさせた。


微かな魔力が広がる。


土の下、空気の流れ、遠くの揺らぎ――すべてを感じ取る。


「……来る」


短い一言。


だが、それで十分だった。


空気が変わる。



「配置につけ」


リックの指示が飛ぶ。


ルナが無言で木陰へと滑り込む。

存在が、消える。


シルヴィアは風下へ移動し、小瓶を取り出す。

慎重に栓を開ける。


エレノアは高所へ。

視界と風を支配する位置。


リリアは前方、茂みの影に身を潜める。

息を殺すが、その内側では熱が渦巻いている。


セレスティアは後方。

静かに祈るように、魔力を整える。


そして――


リックは中央。


杖を構え、視線を前へ。



やがて、音が届く。


車輪の軋み。

足音。


金属が擦れる、乾いた音。


影が現れる。


荷車が一台。

いや、二台。


その周囲に護衛が六。


だが――


「……」


リックの目が細くなる。


動きが揃いすぎている。


呼吸が見えない。


人間のそれではない。



「……確認」


エレノアの声。


「護衛六、後方に一名遅れ」


「魔力反応……あり」



リックが息を吐く。


「始める」



その瞬間。


風が変わった。


エレノアの魔法が発動する。


空気が流れ、渦を巻く。


それに合わせて――


シルヴィアが動いた。


二振りの刃を軽く振る。


霧のような白い粒子が、空気へと溶ける。


眠り薬。


それが、風に乗る。



「……っ?」


護衛の一人が、足を止める。


次の瞬間、膝が崩れる。


「なに……」


言葉は途中で途切れる。


倒れる。


続けて、もう一人。


さらにもう一人。


音もなく、崩れ落ちていく。



「敵襲――」


叫ぼうとした男も、途中で力を失った。


眠り。


完全な制圧。



だが。


全員ではなかった。


「……!」


一人だけ、立っている。


目は虚ろ。


だが、無理やり体を動かしている。


呼吸がない。


「……耐性個体」


エレノアの声が低くなる。



「……閉じる」


ルナが動いた。


地面に触れる。


瞬間、氷が走る。


道を横断し、壁を作る。


さらに後方も封鎖。


完全な分断。



「今だ!」


リックの声が響く。


杖を振る。


魔力が集まり、弾ける。


衝撃波が前方を吹き飛ばす。


眠っていない個体が、後方へ弾かれる。



リリアが飛び出した。


「はあああっ!!」


一撃。


眠った敵を、そのまま叩き潰す。


骨が砕ける音。


躊躇はない。


「次!」


すでに次へ向かっている。



シルヴィアが前へ。


「……麻酔」


刃に薬を塗る。


踏み込む。


斬る。


同時に、エレノアの風が巻く。


薬が拡散する。


耐性個体の動きが鈍る。



「……まだ、動く」


シルヴィアが呟く。


異常だった。



敵が踏み込む。


無理やり。


動きが歪んでいる。


「……排除」


機械のような声。



リックが前に出る。


杖を横に振る。


打撃。


魔力が乗る。


敵の体が大きく揺れる。


「抑えろ!」



ルナが氷を絡める。


足を固定。


だが、それでも動く。


「……っ!」



リリアが横から叩き込む。


「しぶとい!」


衝撃。


だが、完全には止まらない。



シルヴィアが低く言う。


「……毒」


最後の瓶。


刃に塗る。


踏み込み。


浅く斬る。


それだけで十分だった。



数秒。


敵の動きが鈍る。


さらに遅くなる。


完全に止まる。


崩れ落ちた。



静寂。


戦いは終わった。



だが。


エレノアは周囲を見渡す。


「……警戒を」


リックも頷く。


「油断するな」



その時。


倒れた敵の一人が、かすかに動いた。


口が、開く。


「……供給……」


声が途切れる。


「……継続……」


沈黙。


完全に止まる。



空気が重くなる。



リックが言う。


「荷を確認する」



荷車に近づく。


木箱を開ける。


中には――


魔力結晶。


光を放つ。


さらに、黒い鉱石。


重く、歪んだ魔力を持つ。


そして。


一つの箱。



黒い箱。


何もない。


だが。


「……」


シルヴィアが手をかざす。


「……脈動」


わずかに、鼓動のような反応。


「魔力が……歪んでる」



エレノアも確認する。


「……核に近い構造」


言葉が重く落ちる。



リックが即断する。


「回収して離脱」



全員が動く。


必要なものだけを持つ。


ルナが氷で痕跡を消す。


セレスティアが負傷の有無を確認。


完璧な撤収。



街道を離れ、森の中へ。


ようやく足を止める。



リリアが息を吐く。


「……勝った」


笑う。


「完璧じゃん」



だが。


シルヴィアは首を振る。


「……違います」


空気が変わる。


「これは……一部です」


「結社は、もっと大きい」



リックは黒い箱を見る。


杖を握る。


その中にある“何か”を感じ取る。


「……ああ」


短く言う。


「だから潰す」



風が吹く。


どこか遠くで、気配が揺れた。


見られているような感覚。


だが、姿はない。



戦いは、終わっていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ