第30話 「日常の裏で、狩りの準備」(杖仕様)
朝の空気は、静かだった。
だがその静けさの奥に、わずかな緊張が混じっている。
リックは杖を手に取り、軽く振って感触を確かめる。
「ギルドに行く」
エレノアが頷いた。
「報告と許可の取得ですね」
リリアが顔を上げる。
「もう行くの?」
「ああ」
短く答える。
「すぐ戻る」
リックは杖を肩にかけ、そのまま外へ出た。
エレノアも続く。
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扉が閉まる。
少しだけ、空気が緩んだ。
リリアが大きく伸びをする。
「よし、やるか」
セレスティアが微笑む。
「朝食の準備、手伝ってくれますか?」
「任せて!」
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拠点の中では、それぞれが動き始めていた。
セレスティアは火を起こし、鍋を温める。
手際よく食材を刻み、香りが広がっていく。
リリアはその横で手伝いながらも、途中で手を止めた。
視線の先は、置かれた鉄材。
「……」
昨日の言葉が蘇る。
――“打て”
小さく息を吐き、リリアは外へ出た。
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簡易鍛冶台の前。
ハンマーを握る。
カン――
音が鈍い。
「……違う」
もう一度。
カン、カン。
だが、感覚が噛み合わない。
リリアは眉を寄せた。
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その少し離れた場所。
シルヴィアが薬を調合していた。
小瓶が整然と並ぶ。
「……眠り」
白い霧状の薬が揺れる。
「拡散用、安定」
別の瓶へ。
「麻酔……持続、延長」
さらにもう一つ。
「毒……遅効性」
すべてが計算されていた。
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水場では、ルナが洗濯をしている。
無言。
だが丁寧で、正確な動き。
布を洗い、絞り、干す。
リリアがちらりと見る。
「……ほんと上手いよね」
ルナは何も言わない。
だが、ほんの少しだけ視線が動いた。
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その頃。
リックとエレノアはギルドにいた。
「報告を」
リックは簡潔に言う。
「結社の輸送ルートを確認した」
空気が変わる。
「襲撃を予定している」
ざわめき。
「……危険すぎる」
エレノアが補足する。
「しかし、結社素材の確保が可能です」
沈黙。
「……審議します」
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やがて。
「許可します」
ただし、と続く。
「生還を最優先」
「無理な戦闘は禁止」
「情報の持ち帰りを優先」
リックは杖を軽く床に打ち、頷く。
「了解」
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ギルドを出る。
エレノアが言う。
「条件付きですが、十分です」
「ああ」
リックはそのまま歩き出す。
「ザクトのところに行く」
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店に入る。
ザクトはすでにこちらを見ていた。
「……動きますか」
「輸送ルートの詳細だ」
ザクトは紙を広げる。
「時間は夕刻」
「この街道を通ります」
エレノアが確認する。
「護衛は?」
「少なくとも五」
「それと――」
少しだけ間を置く。
「今回は“濃い”ですよ」
リックの視線が鋭くなる。
「核に近い素材が含まれている可能性があります」
空気が変わる。
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拠点。
食事が整い、リリアが戻る。
「……うまくいかない」
セレスティアが優しく言う。
「焦らなくて大丈夫ですよ」
リリアは小さく笑う。
「……うん」
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その時。
扉が開いた。
リックとエレノアが戻る。
空気が一瞬で引き締まる。
「お兄ちゃん!」
リリアが駆け寄る。
「どうだった!?」
「許可は出た」
「よっしゃ!」
リックは続ける。
「ただし条件付きだ」
エレノアが補足する。
「生還優先です」
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全員が集まる。
リックが杖を軽く立てる。
「輸送は夕刻」
「護衛は五以上」
「中身は重要物資」
シルヴィアが言う。
「……結社素材」
ルナが呟く。
「……閉じる」
リリアが拳を握る。
「やるしかないじゃん」
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エレノアが整理する。
「作戦を確認します」
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・ルナが分断
・シルヴィアが拡散
・リリアが撃破
・リックが制圧
・セレスティアが支援
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リックが一歩前に出る。
杖を握る。
「距離を取る」
「一気に崩す」
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夕方。
街道は静かだった。
風が流れる。
リックは杖を構え、地面に軽く触れる。
魔力が広がる。
「……来る」
エレノアが小さく言う。
遠くに影。
荷車。
護衛。
結社の輸送部隊。
リックが低く言う。
「始めるぞ」
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杖の先に、光が集まる。
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戦いは、もう始まっていた。




