表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/72

第29話 「鍛冶師バルドと、足りない強さ」


町外れの道を抜けると、空気が変わった。


乾いた鉄の匂いと、熱。

遠くから、規則的な金属音が響いてくる。


――カン、カン、カン。


リリアの足が、わずかに止まった。


「……ここ」


目の前にあるのは、岩場に半ば埋め込まれたような鍛冶工房。

外壁は煤で黒く染まり、炉の熱が外まで滲み出ている。


リックはそのまま扉を押した。



中は、さらに熱かった。


炉の炎が揺れ、鉄が赤く光る。

その前に立つ男が、ゆっくりとこちらを振り返る。


「……来たか」


低い声。


バルドだった。


視線が、真っ先にリリアへ向く。


「鈍ってねぇか?」


いきなりだった。


リリアが眉をひそめる。


「なってないし」


バルドは鼻で笑う。


「そう思ってるうちは、なってるな」


空気が少しだけ張り詰める。



リックが前に出る。


「装備を見てほしい」


バルドは一瞬も迷わず言った。


「必要ねぇ」


即答だった。


「足りてねぇ」


リックの目が細くなる。


「どこがだ」


バルドは全員を順に見る。


「お前」


リックを指す。


「技はある。だが刃が追いついてねぇ」


次にリリア。


「力任せだ。精度が甘い」


シルヴィアへ。


「面白ぇことやろうとしてるが、制御が雑だ」


エレノアへ。


「完成度は高ぇ。だが決め手がねぇ」


ルナへ。


「……異質だな。だがまだ扱いきれてねぇ」


最後にセレスティアを一瞥する。


「支えとしては十分だ」


沈黙。


核心を突かれていた。



リリアが一歩前に出る。


「……強くなってるよ」


バルドは即座に返す。


「なってねぇ」


「なってるって!」


「なってねぇ」


言葉がぶつかる。


バルドは一歩近づいた。


「それは“使ってるだけ”だ」


リリアが止まる。


「力を“借りてる”だけだ」


静かな一言だった。



その空気を切ったのは、シルヴィアだった。


「……戦い方を変えました」


バルドが視線を向ける。


「ほう」


シルヴィアは二振りの剣を抜く。


「薬を塗布し、拡散し、制圧します」


エレノアが続ける。


「風で拡散させます」


バルドの目がわずかに細くなる。


「……面制圧か」


「眠り、麻酔、毒」


シルヴィアが淡々と並べる。


「三段階で制圧します」


短い沈黙。


そして――


「……面白ぇ」


初めて、興味を示した。



「だがな」


バルドが炉の方へ歩く。


「それでも足りねぇ」


振り返る。


「強化はしてやる」


リリアの目が少しだけ明るくなる。


「ほんとに!?」


「だが――」


間を置く。


「素材がねぇ」


リックが即座に聞く。


「何がいる」



バルドは指を三本立てた。


「一つ目」


「黒鉄山の鉱石だ」


エレノアが反応する。


「……魔力鉱」


「そうだ。そこらの鉄とは別物だ」



「二つ目」


「霧深の森の結晶」


「自然に魔力を溜め込んでる」


シルヴィアが小さく頷く。


「……精製に使えます」



「三つ目」


バルドの声が少し低くなる。


「結社の素材だ」


空気が変わる。


「輸送してる」


リックの目が細くなる。


「ルートは知ってる」


ザクトの情報が繋がる。



バルドが言う。


「結社に勝ちてぇならな」


少し間を置く。


「同じ土俵に立て」


その一言は重かった。



そして、リリアを見る。


「お前」


「……なに」


「打て」


リリアが固まる。


「自分で作れ」


「……!」


「使うだけじゃ、超えられねぇ」


拳が握られる。



「見せてみろ」


バルドが言う。


「今の戦いを」



その場で簡単な実演が始まる。


リックが前に出る。

ルナが位置を取る。

エレノアが風を整える。


シルヴィアが刃に薬を塗る。


「……いきます」


風が吹く。


霧が広がる。


動きが止まる。


リリアが叩き込む。


一連の流れは、無駄がなかった。



沈黙。


バルドが一言。


「……悪くねぇ」


リリアが少しだけ顔を上げる。


だが、続く。


「だがな」


「殺し切る力がねぇ」


静かな断言だった。



リックが言う。


「素材を集める」


即決だった。


エレノアも頷く。


「輸送ルートが最優先です」


シルヴィアが続ける。


「結社素材が鍵になります」


ルナが短く言う。


「……閉じる」


リリアは、バルドを見たまま言った。


「……超えてやる」


バルドは何も言わない。


ただ、炉に鉄を戻した。



外に出ると、空気が冷たかった。


だが、やることは決まっている。


リックは短く言う。


「次は奪う」



遠く。


街道の向こうに、わずかな気配があった。


結社の輸送部隊。


それが、次の標的だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ