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新たなる世界へ  作者: パルス
第1章

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第27話 「侵食する拠点と、歪んだ核」


朝の畑は、もはや隠しきれないほどに弱っていた。


葉は垂れ、色はくすみ、触れれば力が抜けているのが分かる。


シルヴィアはしゃがみ込み、そっと薬草に触れた。


「……限界です」


その一言は、静かだったが重かった。


リックは腕を組み、畑全体を見渡す。


「原因ははっきりしてるな」


エレノアが頷く。


「結社による魔力吸収。拠点を断つ以外に手はありません」


リリアが拳を握る。


「じゃあ行こう!ぶっ壊しに!」


セレスティアは少しだけ不安そうにしながらも、頷いた。


「……はい」


リックは視線を全員に向ける。


「叩くぞ」


その言葉に、誰も異論はなかった。


――


出発前の準備は静かに進んだ。


リリアは武器の最終調整を行い、刃の重さを確かめる。


シルヴィアは薬を整え、小瓶をいくつも並べていく。


セレスティアは回復魔法の準備を確認し、深く息を整える。


エレノアは地図を広げ、進行ルートと撤退経路を頭に叩き込んでいた。


そして――


ルナ。


少し離れた場所に立ち、ただ見ている。


リックが声をかけた。


「案内できるんだな」


ルナはわずかに頷く。


「……できる」


それ以上は言わない。


だが、それで十分だった。


――


森の奥へと進むにつれ、空気が変わっていく。


重い。


まるで空気そのものが濁っているようだった。


「……やな感じ」


リリアが顔をしかめる。


エレノアも同意する。


「魔力が歪んでいます」


シルヴィアは無言で前を見ていた。


ルナは迷いなく進む。


やがて――


それは見えた。


岩肌に開いた洞窟。


だが自然のものではない。


周囲には黒い結晶が突き出し、脈動するように淡く光っている。


「ここです」


エレノアが低く言う。


リックは頷いた。


「行くぞ」


――


内部は静かだった。


異様なほどに。


足音だけが響く。


奥へ進むにつれ、景色は変わっていく。


床には魔法陣が刻まれ、壁には奇妙な装置が並ぶ。


そして――


檻。


中には魔獣が閉じ込められていた。


だが、その目は虚ろだ。


「……ひどい」


セレスティアが小さく呟く。


シルヴィアは目を伏せた。


「……抽出されています」


その言葉の意味を、誰もが理解した。


――その時。


「侵入者確認」


冷たい声が響いた。


黒装束の男たちが現れる。


結社の構成員。


「排除する」


迷いがない。


「来るぞ!」


リックが前に出る。


戦闘が始まった。


リリアが踏み込み、一撃を叩き込む。


エレノアの矢が敵の動きを封じる。


シルヴィアが薬を投げ、強化をかける。


セレスティアの光が傷を癒す。


そして――


ルナ。


一歩前へ。


氷が広がる。


敵の動きが止まる。


「……隔離」


戦場が分断される。


連携は完璧だった。


だが――


「……おかしい」


エレノアが言う。


敵の動きに違和感があった。


「痛覚がありません」


シルヴィアも続ける。


「……魔力が供給されています」


つまり――


「操られてるってことか」


リックが低く言う。


敵はただの人間ではなかった。


――


戦闘を突破し、奥へ進む。


そして、見つけた。


それは、異質だった。


巨大な黒い塊。


脈打つように動き、周囲の魔力を吸い上げている。


「……これが」


エレノアが息を呑む。


シルヴィアが確信する。


「……原因です」


その瞬間。


核が反応した。


ドクン――


低い振動。


空気が歪む。


「……来る」


ルナが呟く。


黒い塊が、裂けるように揺れる。


中から“何か”が現れようとしていた。


形になりきっていない。


不安定で、歪で、それでも――


圧倒的な気配。


「これは……」


エレノアが一歩下がる。


「まだ未完成です……ですが……」


「危険だな」


リックが即座に判断する。


「撤退する」


リリアが驚く。


「え!?でも――」


「今じゃない」


短く、断言する。


エレノアも頷く。


「正しい判断です」


――


脱出が始まる。


背後で核が暴れ、洞窟が崩れ始める。


結社の構成員が追ってくる。


「逃がすな」


だが――


ルナが振り返る。


氷が広がる。


通路が閉じる。


完全に分断される。


「行くぞ!」


リックが叫ぶ。


全員が走る。


――


外に出た瞬間、空気が軽くなった。


リリアがその場に座り込む。


「はぁ……やばすぎ……」


セレスティアも息を整える。


「……無事でよかったです」


シルヴィアは振り返り、洞窟を見る。


「……確信しました」


エレノアが静かに言う。


「魔力収集ではありません」


シルヴィアが続ける。


「……何かを“創っている”」


沈黙。


それは、ただの敵ではなかった。


――その頃。


遠く、高い場所。


一人の男が、それを見ていた。


カイン。


腕を組み、静かに観察している。


「……なるほど」


それだけ言う。


介入はしない。


ただ、見ているだけ。


――


洞窟の奥。


崩れた中で、結社の構成員が立ち上がる。


「計画、継続」


低く呟く。


黒い核は、まだ完全には壊れていなかった。



戦いは、終わっていない。

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