第12話 「ギルド員と共に、ヴァンパイアの救出」
深部調査の報告を受けた翌朝、ギルドは素早い動きを見せた。
受付の職員が3人を緊急で呼び出し、緊張した面持ちで言った。
「昨日の報告を受け、ギルド上層部で緊急会議を開きました。
秘密結社の存在と、囚われのヴァンパイアらしき女性の情報は非常に深刻です。
本日、ギルドの調査員5名を派遣します。
皆様も協力していただけますか? すぐに深部へ向かい、救出作戦を実行したいと思います」
リックは迷わず頷いた。
「もちろんだ。あの女性を助けたい」
エレノアとリリアも同時に同意した。
「はい、ご主人様」
「私も行く! 絶対に助けるよ!」
午前中、ギルド調査員5名と共に総勢8人のパーティが編成され、再び鉱山の深部へ向かった。
調査員のリーダーが道中で簡潔に作戦を説明した。
「結社は暗黒魔法を使う可能性が高い。
リックさんのゴーレムで前衛を抑え、エレノアさんの風で援護と索敵を。
リリアさんは炎で照明と攻撃支援をお願いします。
我々は結社の魔法を封じるための封魔具を持っています」
深部に到着すると、結社の儀式は最高潮に達していた。
黒いローブの者たちが紫黒い魔力を集め、中央の巨大な魔法陣から黒い霧が渦を巻きながら立ち上っていた。
低い呪文の詠唱が洞窟全体に響き渡り、不気味な冷気が漂っていた。
その奥、魔法陣のすぐ傍に、鎖で厳重に繋がれた一人の女性がいた。
黒い長い髪が乱れ、紫の瞳は虚ろで、肌は病的な白さを帯びていた。
彼女は明らかにヴァンパイアだった。弱りきった体でうなだれ、鎖が肌に食い込んでいる様子が痛々しかった。
リックは低く指示を出した。
「今だ。突入する。
俺が前衛を抑える。エレノアは後衛を狙え。リリアは炎で援護を」
調査員が合図を送り、一斉に突入した。
戦闘が始まる。
リックは大地同調を最大限に発動させ、胸の高さほどの大きめのゴーレムを2体出現させた。
ゴーレムは重い土の体で結社の前衛に体当たりし、動きを力強く封じた。
「行け!」
エレノアは風の加護を矢に纏わせ、連続で放った。
風を纏った矢は鋭い軌道を描き、結社の後衛を正確に射抜き、魔法陣を次々と乱した。
風の爆風がローブを翻し、詠唱を中断させた。
リリアは炎を強く纏った小型戦鎚を振り上げて突進した。
「お兄ちゃんたちを守るよ! えいっ!」
炎の戦鎚が結社のメンバーに直撃し、爆発的な炎が広がってローブを焼き払い、暗黒魔法を強引に打ち消した。
ギルド調査員も封魔具を展開し、結社の暗黒魔法を次々と無効化していった。
封魔具から放たれる白い光が、紫黒い魔力を削り取るように輝いた。
結社の者たちは慌てて反撃を試みたが、リックのゴーレムが壁のように立ちはだかり、エレノアの風が動きを封じ、リリアの炎が容赦なく襲いかかった。
激しい戦いの末、結社のメンバーを制圧した。
リックは即座に鎖に繋がれた女性のもとに駆け寄った。
ゴーレムが太い腕で鎖を掴み、力を込めて引きちぎった。
鎖が金属音を立てて地面に落ち、女性の体がふらりと傾いた。
リックは素早く彼女を抱き支えた。
「大丈夫か……?
もう安全だ。動くな」
女性は弱々しく目を細め、リックを見上げた。
紫の瞳には深い疲労と、わずかな驚きが浮かんでいた。
「……あなたは……?」
リックは優しく彼女の背中を支えながら言った。
「俺はリックだ。
もう大丈夫だ。一緒に外へ出よう」
女性の体は冷たく、触れた瞬間、確かにヴァンパイアの冷たい魔力の波動を感じた。
しかし今はそれ以上に、彼女の弱った様子が胸に刺さった。
エレノアがすぐに風の加護で女性の体を優しく包み、毒気や冷気を和らげた。
リリアは心配そうに近づき、小さな声で言った。
「大丈夫……? 痛くない?」
ギルド調査員が周囲を警戒しながら言った。
「迅速に撤退しましょう。結社の残党が来るかもしれません」
3人は女性を支えながら、慎重に鉱山の外へ脱出した。
ギルドに戻り、救出の報告をすると、職員は深刻な表情で頭を下げた。
「本当にありがとうございます……
しかし、彼女は元々奴隷だったようです。
ギルドは正式に保護・管理する権限がなく、連れて帰ることができません。
リックさん……彼女を預かっていただけますか?
もしよろしければ、あなたのパーティで面倒を見ていただけると助かります」
リックは少し驚いたが、すぐに頷いた。
「わかった。彼女は俺たちの拠点で休ませてやるよ」
職員は安堵の表情を浮かべた。
「ありがとうございます。
彼女の身元や事情については、後日ギルドで調べますので、その時はまたご協力をお願いします」
拠点に戻った夜、焚き火を囲む頃。
新しく加わった女性はまだ体力が回復しておらず、静かに座っていた。
リックは優しく声をかけた。
「ゆっくり休んでくれ。
ここはもう安全だ。
……君はヴァンパイアなんだな?」
女性は紫の瞳でリックを見つめ、小さく頷いた。
「……ええ……私はシルヴィア……
奴隷として売られ……結社に捕らわれて……
ありがとう……助けてくれて……」
エレノアは穏やかな笑顔で温かいスープを差し出した。
「まずは体を温めてください。
ゆっくりお話ししましょう」
リリアは少し緊張しながらも、明るく言った。
「シルヴィアさん! 私、リリアだよ!
一緒に暮らそうね! お兄ちゃんのところ、すごくいいよ!」
シルヴィアは弱々しく微笑みながら、4人の温かさに包まれるように小さく頷いた。
その夜、4人は焚き火のそばで静かに寄り添うように過ごした。
シルヴィアはまだ弱々しかったが、温かい光の中でわずかに安堵の表情を浮かべた。
新しい家族の輪が、また一つ広がったことを感じながら。
遅咲きの物語は、影に囚われていたヴァンパイアの少女を救ったことで、
また一歩、強く前へ進み始めていた。




