真夜中の人々編 1
駅の前は夜でも人が絶えない
時刻はもう23時をまわったが、まだまだ活気がある
この時間になってようやく開く店も多く存在し
明日が別に休日でなくともみんな遅くまで起きている
S君も夜勤仕事が今終わった所で
家に向かう最終電車に乗るため駅に向かっている所だ
田舎に住んでると自然は多いが何かと不便でな事が多く
特に交通の便利が悪い
S君もそんな一人で、この電車を逃すと家に帰れないという状況で
仕事の関係上、いつもギリギリになるので
乗れないで近くもネットカフェで何度一晩を過ごした事があるか
数えるのも大変である
Sの部屋からから見えるのは、周りを囲むようにある山と数件の家
遠くにぼんやり見える駅と家のすぐ横にある自動販売機が1台
もう5年は変わってない景色
それとは異なり、この駅の周りはずいぶん変わった
角にあった飲食店は潰れてなくなり、今では月極駐車場になっている
空き地だった所はマンションが建設され
改装工事を繰り返して駅自体も巨大になっていった
そんな中にあっても唯一変わらない地下街の一角
そして変わる事なく商売をしている占い師
この占い師はよく当たると評判で
毎日のように行列ができている
ほとんど女性だが、たまに男性客も並んでいる
噂では金は取らず無料で占ってくれるが
自分の知りたい事は何も教えてもらえず
ただ一方的に向こうがこちらの未来やアドバイスを教えてくれるだけらしい
それでも噂が噂を呼び、今では県内では一番評判だという
お礼という事で菓子だのお金だのを持ってくる人が絶えないが
その占い師は絶対に受け取らない
ただ黙って、首を横に振るのだった
そして今、その数少ない男性客と一人として
S君も並んでいる
ついさっきまでは急いで帰宅するつもりだったが
急に気が変わったらしい
一人暮らしだと、こういう自由がある所はいい
遅くなろうが、帰らないでいても、誰にも迷惑はかからない
ただ、同時に誰も待っていない
ドアを開けても明かり1つない暗い部屋が、ただ広がっているだけ
隣の部屋に住んでいる家族の楽しそうな声を聞きながら寝るのが好きで
たまに早く帰った時は、その会話が聞こえる内にさっさと寝てしまう
別に寂しい訳ではない
ただ、安心するらしい
静かな部屋で一人寝るより、外から聞こえる声の中寝ると
他にも人がいるっていう実感が持てるからだとよく言われたが
すぐに理解は出来なかった
やっと順番が来たようだ、その占い師の前に立つと
占い師はすぐに口を開いた
「今すぐ・・・今すぐ、家に帰りなさい」




