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プレゼント探し

九月一日。


午後六時前。


「ラス半で」


牌を切りながらそう告げる。


「お、今日は早いですね」


佐藤店長が不思議そうな顔をした。


普段の俺なら。


夜まで打つことも珍しくない。


「ちょっと用事」


「へぇ」


店長がニヤリと笑う。


嫌な予感がした。


「沙月ちゃんがいないからですか?」


「違う違う」


「じゃあなんです?」


「用事」


「怪しい」


「怪しくない」


「沙月ちゃんですね」


「だからなんでそうなる」


「否定しない」


「……面倒くさいな」


店長が楽しそうに笑う。


「でも本当なんですよね」


「何が?」


店長は卓を見ながら言った。


「沙月ちゃんがいる日といない日で成績違いますもん」


「え?」


思わず聞き返した。


「ほんとに?」


「ほんとに」


「自覚ないぞ」


「めちゃくちゃありますよ」


店長は断言する。


「沙月ちゃんいる日は悠也さん異常に強いです」


「気のせいだろ」


「いや、本当に」


「そんなわけない」


「ありますって」


店長は笑っていた。


しかし。


少しだけ。


否定しきれない自分もいた。


ラス半終了。


結果はトップ。


いつも通りだった。


店長に見送られながら店を出る。


そして向かった先は。


ショッピングモールだった。


目的は一つ。


誕生日プレゼント。


「難しい……」


思わず呟く。


二十一歳になる女子大生。


何を贈ればいい。


アクセサリー。


重いか。


香水。


好みがある。


化粧品。


知らない。


バッグ。


高すぎる。


現金。


論外。


「難しい……」


二回目だった。


店内を歩く。


アクセサリーショップの前で立ち止まる。


店内を見る。


カップルしかいない。


即撤退した。


「無理だろ……」


完全に場違いだった。


その時。


スマホが震えた。


沙月。


開く。


『今日はさっちゃんの顔見れてないからゆーやさんに自撮りあげる❤️』


写真付き。


「……」


思わず笑った。


確かに盛れていた。


いや。


元々整った顔をしているとは思う。


本人には絶対言わないけど。


もう一度写真を見る。


満面の笑顔。


楽しそうな顔。


指が自然と保存ボタンに伸びる。


「何やってるんだ俺は」


慌ててスマホを閉じた。


危ない。


本当に危ない。


そして。


まるでこっちの状況を見透かしたように。


追加のLINEが届く。


『今なにしてんの?』


何気なく返信する。


数秒後。


『なになに!』


『さっちゃんに会いたくなっちゃった?笑』


相変わらずだ。


『残念』


『今日は大学終わってから友達とご飯だから会えませーん❤️』


テンションが高い。


さらに。


『3日いっぱい話してあげるね❤️』


「……」


大丈夫だろうか。


この子。


最近。


テンションが上がりすぎている気がする。


『はいはい』


『食べ過ぎて動けなくならないようにな』


送信。


すると。


即返信。


『む~……』


『もう少し寂しがってくれたらいいのに!』


思わず笑う。


画面を見つめる。


本当に。


元気をくれる子だ。


どんなに疲れていても。


どんなに考え事をしていても。


この子からLINEが来ると。


少し気持ちが軽くなる。


ふと。


写真をもう一度開く。


満面の笑顔。


幸せそうな顔。


「笑ってる方が似合うな」


小さく呟く。


だったら。


誕生日くらい。


もっと笑わせてやりたい。


もっと喜ばせたい。


それだけは確かだった。


スマホをポケットにしまう。


そして。


もう一度店内を歩き始めた。


何を贈ればいいか。


まだ分からない。


でも。


あの子が喜ぶ顔を想像すると。


不思議と面倒ではなかった。


あの子が笑う顔が見たい。


そのためなら。


慣れない買い物くらいどうってことない。


「さて」


悠也は小さく息を吐く。


「もう少し頑張るか」


そう言いながら。


ショッピングモールの奥へ歩き出した。


人生で一番難しい買い物に挑むために。


――第十六話 終わり。

こんにちは、ヘロイズムです。

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