表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/13

5 大丈夫だよ


「大丈夫だよ」


 無理した笑みを浮かべながら彼女は言う。


 何度目かの人生。

 俺たちはいつも「またね」で終わり、次の生に互いとの未来を託す。


 俺の隣にはこれまでと同じように、彼女がいた。

 真白な彼女は何にも侵されない。

 その世での彼女は真白であるが故に、日毎壊れていった。


 その世で俺が生まれたのは商家、とは表向きで、裏では殺し屋稼業をしていた。


 もし、あのときそれを知っていたなら、俺は約束の場所に会いに行っただろうか。



 何度もの輪廻の中で、俺たちは互いの色の石を持って、十の同じ誕生日に待ち合わせ場所で落ち合っていた。


 その世でも俺は、彼女の色の石を持って、約束の日に約束の場所に向かった。

 彼女も同じように俺の色の石を握りしめて駆けてくる。



 俺を見つけた彼女はとろけそうな瞳で俺を見つめると、そのまま俺の胸に飛び込んできた。


(今世も俺が大好きな彼女だ)


 俺は彼女を抱き留め、腕に力を込める。


 しばらくはこれまでと同様、幸せな日々が続いた。

 約束して会って、同じ時間を過ごす。

 特別なことも何も起きない日々。

 だけど、その時間が、俺らには愛しく華やかに煌めいて見えた。



 俺の隣に彼女がいて、彼女の隣に俺がいる。

 手を伸ばせば彼女を感じることができる。

 耳を澄まさなくても彼女の声が聞こえる。


 魂に染み入るとでも言えばいいのだろうか。この幸福を。


 だけど、そんな日々も十五歳のときに終わりを告げた。


 その世での成人である十五の歳に我が家の裏稼業を知らされる。


 これまで死に物狂いでさせられていた鍛錬は、殺し屋に従事するためだった。

 彼女もなんの疑いもなく、俺との逢瀬の延長で、同じ鍛錬を受けていた。


 彼女は俺と別れるか、俺と一緒に殺し屋稼業をするかの選択に迫られた。


 俺と彼女の永遠ともいえる長い時間。

 彼女にも俺にも、互いを失う未来なんて想像できなかった。


 彼女は俺と一緒に殺し屋稼業をすることを選択した。

 ーー最も、俺と別れることを選んでいれば彼女はその場で殺されていただろう。



 ほどなくして彼女は俺と一緒に戦場に出ることとなる。相手は敵。互いに()るか()られるか。


 ――彼女が初めて人を殺した時のことを忘れない。



 目に涙をためながら、なぎ払うように人を切っていく。

 その鬼神とも言える手腕に似つかわしくない涙。



 彼女は少しずつ壊れていった。


 食事はとれなくなり、それでも仕事を続ける日々。

 痩せ細り、輝いていた瞳には影がさし、声にはハリがなくなった。



 「大丈夫か」と聞く俺に「大丈夫よ」と無理した笑顔で返す君。


 衰弱していった彼女は、しだいに心も疲弊していったかのように、無機質な目をすることが増えていった。



「ごめんね」



 そう言い残して死んだ君。


 次の約束がもらえなかった俺は、どうしたらいい……?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ