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10 白夜③


 もう何度殺しに来ただろうか。


 このまま彼と闘う未来しかないのなら。

 彼の望むとおり殺されてもいいのかもしれない。


 だけど、彼の一瞬みせる戸惑いに期待を持ってしまう。


 前世、殺し屋をしていたから分かる。

 彼の私に見せる感情は、殺そうとしている人に見せるものじゃない。


 寝ているところ忍び込んできたときにすぐ反応できなかったのは、彼に殺気がなかったからだ。

 さすがに殺気があれば気付く。


 彼は、私を殺すことと殺さないことの間で揺れている感じがする。

 その揺れが、私の望むものであればいいとーー



(あれ、ここって……)



 考え事をしながら歩いていたら、彼との約束の場所に来てしまったらしい。

 約束の木からは花びらが舞い散っている。


 約束の木に掌をあてる。

 思えば、私たちはこの場所から始まった。



 この木の下で、誓った。

 何度生まれ変わっても、またここで会おうと。

 ――『またね』と。



 そっと耳をつけると木の中の水が流れる音が聞こえた。



 どちらが先に死んでも、先に逝く方は必ず『またね』と、次の約束も込めて言い残した。

 

 そして、置いて行かれた方は、その生を全うする。来世での相手との未来を楽しみにして。

 そんな輪廻をもう何度繰り返しただろう。


 でも、全然飽きない。それどころか、また来世もって、生きる糧になる。


 それは同じ気持ちと信じていた。


 でも違ったのかも知れない。

 私だけが彼を求めていたのかもしれない。

 だから、今世の彼は繰り返し私を殺しに来るかも知れない。




 風に髪がそよぐ。


 振り返らずとも、背後に虎燈がいることは分かっていた。



 ふわりとした曖昧な殺意。

 これは虎燈からしか感じたことはない。



 そのふわふわの正体が知りたい。



 振り返ると、サファイアの瞳。

 潤んだ瞳が憎らしげに私を映している。



「虎燈」



 スイッチが入ったように虎燈の目が殺意一色になる。




「死ね」



 殺意のこもった瞳で、暗い声を出す。



 ()に対する殺意。


(……もう、いい)


 虎燈が腕を振り上げると同時に、どこからか飛んできた日本刀が土に刺さった。


 地に刺さった刀を、抜く。

 迷いはない。

 そのまま、胸へーー。


 コフッ


 どこからか息が漏れる。

 その拍子に胸元に忍ばせていたサファイアがひらりと上衣から滑り出た。



 うすれていく意識の中で、虎燈がサファイアに目を奪われていることに気付く。



「またね」



 来世への約束の言葉。

 虎燈に届いただろうか。




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