第6話:必中とノーコン
「はぁ、はぁ……。先輩、流石にオーク3体はレベル上げすぎでしたね……」
「全くだ。だが経験値1.2倍のおかげで、一気にレベル5だぞ。これぞ効率厨の勝利だな!」
俺とカスミが戦利品の魔石を回収していた、その時だ。
少し離れた森の奥から、凄まじい爆発音と、明るくも必死な叫び声が響いてきた。
「わわわっ! ちょっと、そっちじゃないってば! ああもう、私のバカバカ! 待って、猪さん、タンマ! タンマだってばーっ!」
「なんだ……? 誰か戦ってるのか?」
俺たちは顔を見合わせ、声のする方へと駆け出した。
そこにいたのは、燃え盛る切り株と、その前で自分の杖を振り回してジタバタしている一人の美少女だった。
鮮やかな赤毛を高い位置でポニーテールにまとめ、健康的な太ももが眩しいミニ丈のローブを翻している。
「よーし、次こそ当てるもんね! 必殺、くらえぇぇ!」
彼女が杖をビシッと突き出す。凄まじい魔力が集束し――。
ドォォォォォン!!
爆炎が上がったのは、狙っていたはずのワイルドボアの真上、遥か彼方の「空」だった。
「……。先輩、あの子、もしかして……」
「ああ。打ち上げ花火の才能だけは天才的だな」
猪は「プギィ?」と首を傾げた後、怒りを思い出したように彼女へ突進を開始した。
「ひゃうんっ!? 来ないでー! 誰か、誰か助けてぇーっ!」
彼女は涙目で、ポニーテールを振り乱しながらこっちに走ってくる。
「よし、カスミ! 援護だ!」
「了解です! 『聖なる盾』!」
カスミの魔法が彼女の背後で展開され、猪の突進を弾き飛ばす。
俺はその隙に、いつもの「相棒」を抜き放った。
「おい、ポニテの子! 伏せろ!」
「えっ!? あ、うんっ!」
彼女が地面にダイブした瞬間、俺のスキルが火を吹く。
「くらえ、『木の枝投げ(必中)』――ターゲット、猪の鼻の穴!」
シュパッ! と空気を切り裂き、俺が投げた泥付きの枝がワイルドボアの鼻の穴に、根本までズボリと突き刺さった。
「ブゴォォォォッ!?」
あまりの激痛(と汚れ)に、猪が悶絶してひっくり返る。
「今だ、トドメを刺せ!」
「わ、わかった! えーと、えーと……えいっ!」
彼女が慌てて放った火球は、またしても猪の数メートル横に着弾した。
「……カスミ、彼女に命中率のバフを!」
「無理ですよ先輩! 彼女の命中率、基礎値が低すぎて、1.2倍したところで『0に何を掛けても0』状態ですぅ!」
「マジかよ、どんなステータス振りしてんだ!」
猪がフラフラと立ち上がり、再び突進の構えを見せる。俺は咄嗟に彼女の肩を掴んだ。
「いいか、狙おうとするな! お前の魔力は凄いんだ、この辺一帯を更地にするつもりでぶっ放せ!」
「えっ、いいの!? よーし、私、やっちゃうよー!」
彼女がニカッと太陽のような笑顔を見せ、杖を高く掲げる。
「全部燃えちゃえ! 『フレアッ!」
ドガガガガガァァァァン!!
猪どころか、周囲の木々まで真っ白な光に包まれる。俺とカスミは慌てて岩陰に隠れた。
煙が晴れた後には、完全に炭化した猪と、見事なクレーターが残されていた。
「へへっ、やったぁ! 見た? 見た今の!?」
彼女は鼻の頭を煤で汚しながら、無邪気にVサインを作った。
「あー……助かったよ。俺は大翔。お前、名前は?」
「私はユフィ! 攻撃魔法なら誰にも負けない自信があるんだー! ……あ、でも、当てるのだけはちょっと苦手かな? てへっ☆」
ユフィは可愛らしく舌を出して笑ったが、直後に「あぅ」と声を漏らして、俺の胸に寄りかかってきた。
「ごめん……。魔力使い切ると、足がフニャフニャになっちゃうんだ。ちょっとだけ、支えてて?」
「お、おう……(お、柔らかい……)」
「……先輩。今、絶対鼻の下伸ばしましたよね? 私のバフより、その子の胸の方が効果ありそうですか?(黒笑)」
カスミの目が、これまでにないほど冷たく据わっている。
「ち、違う! これは人道的支援だ!」
こうして、俺のパーティに「超火力・超絶ノーコン」な爆裂娘が加わった。
俺の異世界無双(?)計画は、ますます制御不能な方向へと加速していく。
(続く)
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