第5話:必殺、搦め手の極意!
「おいカスミ、見てくれよ。この『アイアンツインブレード』の輝き! まさに無双する主人公の風格だろ?」
俺は腰の双剣をパチンと叩き、ギルドの裏手にある訓練場でポーズを決めた。
「そうですね、先輩! 鞘だけは一流の剣士に見えますよ(ニチャア)」
「……おい、今一瞬、目が笑ってなかったか? あと語尾に不穏な擬音が聞こえたぞ」
カスミは「気のせいですよぉ」とあざとく首を傾げ、俺が選んでやった護符を大事そうに握りしめている。
レベルも上がり、装備も新調した。今ならスライムどころか、もっと手ごわい相手でもいけるはずだ。
「よし、今日は少し足を伸ばして、オークの目撃情報がある『迷いの森』の入り口付近まで行くぞ!」
「はい、先輩! 私がしっかりバックアップしますね」
◇
数時間後。俺たちは絶体絶命のピンチに陥っていた。
「グガアアアアアッ!」
目の前には、身長2メートルを超える巨漢、オークが立っていた。それも3体。
俺は新調した双剣を構え、果敢に斬りかかった……のだが。
(キンッ! カキィィン!)
「硬ぇ!? 重ぇ!? 指が痺れるぅぅぅ!」
俺の渾身の一撃は、オークの分厚い皮脂と筋肉に跳ね返された。俺のステータス「力:F+」では、鉄の剣を持っていても「重い棒」を振り回しているのと大差ないのだ。
「先輩、下がって! 『聖なる加護』!」
カスミが杖を掲げると、俺の体が淡い光に包まれる。
腕に力がみなぎる感覚……! これがバフか!
「おおお、いける! これなら!」
俺は再び踏み込み、オークの脇腹を狙う。しかし、オークは棍棒を振り回し、風圧だけで俺を吹き飛ばした。
「いだだだだ! カスミ、バフかかっててもこれかよ!」
「先輩の基礎能力が低すぎて、1.2倍にしても誤差の範囲なんですぅ!」
「はっきり言うなよ! 心が折れるだろ!」
絶望的な状況。オークが棍棒を振り上げ、俺の頭をカボチャみたいに叩き割ろうとしたその時――。
「……あ、そうだ。俺、双剣使いじゃなかった」
俺は右腰に差していた、一番信頼できる「相棒」を抜き取った。
「くらえ、目潰し特化の『木の枝投げ』!」
俺は地面の泥をサッと掬い、それを木の枝の先端に塗りつけてから全力で投げた。
スキル「必中」が発動する。枝は物理法則を無視したカーブを描き、オークの右目にズボリと突き刺さった。
「ギャアアアッ!?」
さらに、俺は立て続けに落ちている小枝を拾い、次々と投擲する。
ターゲットは――鼻の穴、耳の穴、そして股間!
「鼻の粘膜! 耳管への衝撃! そして男の急所! 全部必中だコラァ!」
「……先輩、戦い方がエグすぎます。全然主人公っぽくないです……」
カスミが引き気味に呟くが、構っていられない。
オークたちが悶絶し、視界を奪われて同士討ちを始めた隙に、俺は叫んだ。
「カスミ、今だ! 最大のバフを俺の『足』にくれ!」
「わかりました! 『迅速の風』!」
足が軽くなる。俺は双剣を逆手に持ち替え、目が見えず暴れるオークの足首(アキレス腱)だけを狙って、転ぶように切り刻んだ。
重い一撃が出せないなら、転ばせて自重でダメージを与えればいい。
ドォォォン! と大きな音を立ててオークたちが折り重なるように倒れる。そこへ、カスミがダメ押しの詠唱を始めた。
「清らかなる光よ、重圧となりて敵を討て――『ヘヴィ・バリア』!」
カスミの魔法が倒れたオークたちを地面に縫い付ける。本来は味方を守る障壁だが、重力を応用して「押し潰す」という彼女なりの機転だ。
身動きの取れないオークたちの首筋に、俺はトドメの双剣を突き立てた。
◇
【経験値が5000ポイント入りました】
【レベルが5に上がりました】
「ふぅ……。見たかカスミ。これが俺たちのコンビネーションだ!」
「はい! 先輩の卑怯……じゃなくて、独創的な戦い方、見直しました!」
カスミはニッコリと笑い、俺の頬についた返り血をハンカチで拭いてくれる。
……あざとい。だが、戦い抜いた後のこれは効く。
「でも先輩、今の戦い方だと、いつまで経っても『木の枝使い』って呼ばれちゃいますよ?」
「ギクッ……。いや、次はちゃんと双剣で無双するから! 次回こそ、俺の異世界無双計画、本番だから!」
夕暮れの森に、俺の虚しい負け惜しみが響き渡った。
大翔
レベル: 5
装備: アイアンツインブレード、木の枝(泥コーティング)
ステータス:
力: F+ → E
器用さ: E++ → D
幸運: B++ → A(デバフ成功率上昇)
(続く)
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