第56話:教団の執念! 影の刺客と連理の呼吸
クヌギ村での騒動から数日。俺たちは村人から贈られた干し肉をかじりながら、中立国の街道を北へと進んでいた。
「大翔、見て! 雲の間からお日様が出てきたよ! 今日は絶好の旅日和だね!」
ユフィが聖杖を高く掲げ、元気いっぱいに声を上げる。彼女の底抜けの明るさは、薄暗い森を抜けた後の俺たちにとって一番の救いだ。
「ああ、そうだな。……でも油断するなよ。教団の連中が、俺たちが誠十郎さんの弟子だって気づいた以上、次があるはずだ」
俺が双剣『比翼』の柄に手をかけると、隣を歩いていたカスミがふふっと不敵に微笑んだ。
「先輩。あざとく警戒しすぎですよ。私が既に周囲に探知の符を浮かべてありますから。……でも、そんなに不安なら、私の手をあざとく握っていてもいいですよ?」
カスミは真っ赤な巫女装束を揺らし、上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。相変わらず隙のない「あざとさ」だが、彼女のバフと回復、そして術式の精度には何度も助けられてきた。
「マリア、そっちはどうだ?」
俺が後ろを振り返ると、そこには白銀の甲冑『ヴァルキリー・ドレス』に身を包んだマリアが、エリザベスと並んで歩いていた。彼女は回避タンクに転向して以来、盾を捨て、身軽になった分だけその信仰心を全身に纏っている。
「問題ありませんわ、大翔さん! 誠十郎様から賜ったこの命、いかなる闇の刃も寄せ付けません。エリザベス様からも、誠十郎様の新たな武勇伝を伺って、今の私は最高潮です!」
「ええ、マリアさん。誠十郎様なら、影の中に潜む邪悪など、一瞥で霧散させることでしょう。私たちもその誇りを忘れてはなりません」
エリザベスの「給油」により、マリアは通常時を遥かに超える気迫を放っている。この二人の誠十郎様信仰は、もはや一つの完成された戦術と化していた。
【影の強襲:暗殺者の罠】
その時、街道の影が異常なほどに伸び、俺たちの足元を飲み込もうと這い上がってきた。
「――来たッ! ユフィ、光を!」
「任せて! ――『光輝の閃光』!!」
ユフィの放った強烈な光が影を焼き払うが、影の中から三人の暗殺者が音もなく飛び出してきた。教団の放った、影を操る刺客だ。
「誠十郎の弟子共……その首、教団への供物とさせてもらう!」
暗殺者の鎌が俺の首筋を掠める。だが、俺は誠十郎さんに叩き込まれた「連理の呼吸」で、その軌道を完全に読み切っていた。
「甘い!」
俺は『比翼』で鎌を受け流し、同時に道端に落ちていた「木の枝」を拾い上げる。
「【木の枝(必中)】――行け!」
俺が放った一本の枝は、空中で不可解な加速を見せ、影に潜り込もうとした暗殺者の肩を正確に射抜いた。
「ぐわぁぁぁ!? なぜだ、影の中にいる俺を……!」
「理屈じゃないんだよ。俺が投げれば、当たる。それが俺のルールだ」
その隙を逃さず、マリアが戦場を舞うように駆け抜けた。
「誠十郎様流――『聖華の舞』!!」
マリアは敵の攻撃を紙一重ですべて回避し、その勢いのまま重い一撃を暗殺者の腹部に叩き込む。盾を捨てた彼女の動きは、もはや重装騎士のそれではなく、白銀の閃光だった。
「カスミ、バフを! ユフィ、最大出力だ!」
「はい、先輩。あざとく強化してあげます。――『巫女の祝詞』!」
「いくよぉ! ――『光輝の閃光』最大解放!!」
カスミの強化を受けたユフィの魔法が、暗殺者たちをその存在ごと夜の闇へと押し戻した。
【エピローグ:次なる地へ】
戦いが終わり、街道に静寂が戻る。
「……ふぅ。Bランクになってから、敵の質が変わってきたな。教団は本気で俺たちを狙ってる」
俺が『比翼』を鞘に納めると、カスミが歩み寄ってきて、俺の服についた土をあざとく払ってくれた。
「先輩。私たちはもう弱くありません。誠十郎さんにいつか追いつくために、この程度の壁、軽々と越えていきましょう」
「ああ。……まずは、次の街でちゃんとした肉を食うぞ!」
「「「おー!!」」」
ユフィの元気な声が、夕暮れの街道に響き渡った。
(第56話・完)
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