第44話:休息と波乱! 温泉街の女子会(誠十郎様推し活)と、大翔の受難
帝国国境を越え、一行が辿り着いたのは、中立地帯にある風光明媚な温泉街『霧隠の里』。
帝都での死闘と爆走の汚れを落とすべく、一行は貸切の露天風呂へと足を運んでいた。
【女湯:聖女たちの「誠十郎様」談義】
湯気に包まれた岩風呂。そこでは、救出された聖女エリザベスを囲み、女子たちの熱いトークが繰り広げられていた。
「――はぁ……。やはり、誠十郎様は次元が違いますわ……」
マリアは誠十郎の名前を呼びながらうっとりと目を閉じる。
「……あの、マリアさん。呼び方が……『様』に変わっていませんか?」
エリザベスが、おずおずと尋ねる。
「当然です! 帝国の最強大英雄を、レベル35で斬り伏せるなんて……。もはや『さん』などという親しき呼び方は不敬! 誠十郎様は、私にとっての唯一絶対の主なのですッ!」
マリアが湯船の中で立ち上がり、拳を握りしめる。
「……。エリザベス様、貴女も聞いたでしょう? あの夜、空を割ったあの一閃を。……。あれこそが誠十郎様の慈愛。私たちに『往け』と背中を押してくださった聖なる福音なのです!」
「……。ええ、本当に凄かったわ。……。私、あんなに綺麗で、恐ろしい音、聞いたことがない。……。誠十郎様ってどんな方なのかしら?」
エリザベスが頬を赤らめ、湯船に顔を沈める。彼女の脳内では、誠十郎が「光り輝く翼を広げた超絶美形」として完全に定着していた。
「……。ふふ。……。誠十郎さんは罪作りですね。……。エリザベス様、気をつけたほうがいいですよ。……。あの人は、団子一つで世界を救うこともあれば、修行をサボった弟子を山奥に置き去りにする非情さも持ち合わせていますから(クスクス)」
カスミが、湯船の縁に腰掛け、不敵に微笑む。
【男湯:大翔、現実(請求書)に震える】
一方、隣の男湯。大翔は一人、湯船に浸かりながら、誠十郎から『飛龍便』で届いた一通の手紙を開いていた。
「……な、なんだこれ……」
> 『大翔へ。
> 陽動の際、宮殿の柱を三本ほど余計に斬っておいた。
> 修行代、及び今回の団子(特注三箱)の代金として、以下の金額を請求する。
> ――金貨50枚。
> 払えぬなら、次回の稽古は「真剣(刃あり)」で行う。 誠十郎』
>
「……金貨50枚!? 今回の依頼報酬、ほとんど飛ぶじゃないか!!」
大翔の悲鳴が、静かな温泉街に響き渡る。
師匠は、弟子が救出劇を成功させることを見越し、ちゃっかりと「手間賃」を計算していたのだ。
【リザルト:温泉街の夜】
* マリア: 呼び方を「誠十郎様」に固定。信仰心がもはや物理的なオーラとなって発現し始める。
* エリザベス: 誠十郎への憧れが止まらない。マリアから「誠十郎様の尊いポイント」を夜通し聞かされるハメに。
* ユフィ: 温泉饅頭を「誠十郎さんにお供えする分」と言いつつ、自分で半分食べる。
* カスミ: 女湯から男湯へ「混浴を誘う術式」を飛ばそうとしたが、マリアの説法の熱気に阻まれて失敗。
* 大翔: 借金返済のため、明日からまた魔物討伐に明け暮れることを決意。
「……はぁ。……。結局、俺たちは誠十郎さんの手の平の上ってことか」
大翔は、夜空に浮かぶ月を見上げながら、遠くで修行に励んでいるであろう師匠の姿に、感謝と(主に金銭的な)恐怖を抱くのだった。
(第44話・完)
面白いと思ったら、下の☆で評価していただけると励みになります




