第43話:帝都脱出! 聖女を連れた逃避行と、師匠の「音」
帝都の裏路地を猛スピードで駆ける馬車。救出されたばかりの聖女エリザベスを揺らす振動とともに、宮殿の方向から空気を震わせるような重低音が響き渡った。
(ズゥゥゥゥン……!!)
「……っ、このプレッシャー。まさか、あの人が動いたの……?」
エリザベスが青ざめた顔で窓の外を振り返る。
「……? エリザベス、何かに気づいたのか?」
大翔が問いかけると、彼女は震える声で答えた。
「……間違いないわ。この嵐のような魔力の波動は、帝国の守護神……レベル72のSランク冒険者、**『剛嵐の大英雄』**よ。……あの方が本気で剣を振るっている。誰かが、あの『怪物』と真っ向からぶつかり合っているんだわ……!」
車内に戦慄が走る。帝国最強の存在。本来なら、Cランクの自分たちなど視線一つで消し飛ばされるような雲の上の存在だ。
(キィィィィィィィン!!)
その時、夜の静寂を切り裂いて、高く鋭い「澄んだ金属音」が響いた。
それは、暴風のような大英雄の魔圧を、真っ向から叩き切るような「凛」とした響き。
「――っ、この音。……誠十郎さんだ」
大翔が、確信を込めて呟いた。
「ええ……間違いありません。……この、音の隙間に感じる圧倒的な『静寂』。……そして、私の心臓を震わせるこの聖なる共鳴! ……誠十郎さんが、あの『最強』を相手に、稽古のように遊んでいらっしゃるのです!」
マリアが御者台で手綱を捌きながら、感極まったように叫ぶ。
「……。先輩。……。分析完了しました。……。大英雄の広域破壊魔法が、一筋の剣閃によって『中和』されています。……。Lv 35という数字を嘲笑うかのような、この理不尽なまでの技術……。誠十郎さんは私たちのために『最強の壁』になってくれているんですね」
カスミが『無限符の書』を通じて、宮殿で起きている「異常事態」を克明に読み取る。
「……うん、そうだね。誠十郎さんが作ってくれたこの時間、一秒も無駄にできない! ――『星屑の帳』!」
ユフィが、誠十郎から届いた「団子」を一口で飲み込み、聖杖『アルテミス』から隠蔽の光を放った。
【夜明け:国境の向こう側】
数時間の爆走の末、馬車は帝国と中立国を隔てる大河の橋を渡りきった。
背後を振り返れば、朝焼けに染まる帝都はもう遠い。
「……。助かったんだ。私たち……」
ユフィが安堵のあまり、大翔の肩にもたれかかる。
「……。先輩。……。誠十郎さんからの『陽動完了』の合図です」
カスミが空を指さす。
遥か遠く、帝都の空を水平に切り裂くような一筋の銀光が走り、夜雲を真っ二つに割った。大英雄の『剛嵐』を、誠十郎の『一太刀』が上書きした瞬間だった。
「――誠十郎様!! ありがとうございましたぁぁぁ!!」
マリアが橋の上から、宮殿に向かって全力で叫び、深く、深く一礼した。
「……大翔さん。……私、お会いするのが少し怖くなってきちゃいました。……あの大英雄を止めるなんて、誠十郎様は……本当は、どんなに恐ろしい方なの……?」
エリザベスが、想像上の誠十郎の圧倒的なイメージに、畏怖と憧れを抱きながら呟いた。
【本日のリザルト】
* マリア: 誠十郎への信仰心が「救世主」レベルに到達。
* エリザベス: 誠十郎を「大英雄より強い正体不明の美青年」として認識。妄想が加速。
* 大翔: 誠十郎が本気で「音」を鳴らしたことに、弟子としての身の引き締まる思い。
* カスミ: 混乱に乗じて、大翔の手に「縁結びの術式」を書き込むことに成功。
「……よし。まずは近くの街で休もう。……。エリザベス、これからは俺たちが守るからな」
「……。はい。……。ありがとうございます、大翔さん。……。そして、誠十郎様にも……いつか、この命に代えてもお礼を……」
こうして、帝国を揺るがした聖女救出劇は幕を閉じた。
誠十郎の「圧倒的な実力」が、ついに国家レベルで刻み込まれたのである。
(第43話・完)
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