第36話:初仕事はドブさらい!? 聖遺物(オーバーキル)の咆哮
王都ギルドの依頼板の前。俺たちは新調したばかりの眩い装備に身を包み、周囲の冒険者たちの羨望の眼差しを浴びていた。
「……ふん。見てなさい、これがCランクの実力よ!」
ユフィが、世界樹の杖『アルテミス』を無駄にくるくると回してドヤ顔を決める。
「……先輩。……。ギルド職員の視線が、装備の豪華さと依頼の内容のギャップに戸惑っていますね。……あざとく微笑んで、難易度を上げてもらいましょうか?」
カスミが『無限符の書』を小脇に抱え、受付のお姉さんに熱い視線を送る。
だが、差し出された依頼書は――。
【依頼:王都地下水道の巨大ヘドロ・スライムの清掃】
「……。えっ、ドブさらい? 私たちのこの『ヴァルキリー・ドレス』で、ドブに入るんですか!?」
マリアが絶叫した。白銀の鎧は、今や鏡のように周囲を映し出している。
「……新米Cランクの恒例行事なんだとさ。……。行くぞ。誠十郎さんに見られたら『初心を忘れるな』って斬られるからな」
【現場:地下水道・阿鼻叫喚の清掃劇】
地下水道に足を踏み入れた瞬間、鼻を突く悪臭。
そこにいたのは、汚物を溜め込んで巨大化した『ヘドロ・キングスライム』だった。
「ブチュルルルゥ……!」
「……っ、汚い! 私のドレスに一滴でも飛んだら、許しません! ――『絶技・超高速・雑巾がけ(ワイプ・ブレード)』!!」
マリアが、誠十郎に教わった「円の動き」を応用し、剣の風圧だけでヘドロを弾き飛ばす。
一滴も汚れることなく、周囲の壁がピカピカに磨き上げられていく。
「……マリアさん、それもう清掃業者の域だよ……。ユフィ、奥の塊を狙え!」
「……うん! 汚れの『芯』、見つけた! ――『浄化の閃光』!!」
(ドガァァァァァン!!)
ユフィが放ったのは、本来なら高位のアンデッドを消滅させる極太の浄化レーザー。
地下水道を埋め尽くしていたヘドロが、一瞬で蒸発し、下水が「王宮の噴水」並みの透明度へと変わる。
「……やりすぎだ! 構造物まで溶けるだろ!」
「……。先輩、仕上げです。……。このままでは湿気でカビが生えますから。――『乾燥の極大術式・手書き版』!」
カスミが俺の背中に指を走らせ、増幅された熱量を地下水道全体に放つ。
次の瞬間、地下水道はサウナのような熱気に包まれ、全ての水分がカラカラに乾ききった。
【リザルト:ギルド職員、白目を剥く】
一時間後。
「……報告します。地下水道の清掃、完了しました」
俺たちがギルドに戻ると、確認に向かった職員が震えながら戻ってきた。
「……あ、あの……。地下水道が……地下水道が、王宮のダンスホールより綺麗になっていました……。スライムどころか、バクテリア一匹残っていません……」
「……。ふふ、当然の結果です。……。先輩、報酬は『汚れ物のお洗濯代』として、私の懐に入れておきますね?(クスクス)」
【本日のリザルト】
* マリア: 潔癖症に目覚める。「汚れは、切るものです!」と迷言を残す。
* ユフィ: 浄化魔法の使いすぎで、自分の服まで透けるほど浄化しそうになり、大翔に全力で止められる。
* カスミ: 地下水道の熱気を利用して、大翔と「密着サウナ」を楽しもうとしたが、マリアの掃除の勢いに巻き込まれて不発。
* 大翔: 結局、一番汚れたのは「枝」でヘドロをかき混ぜた自分だった。
「……はぁ。Cランクの初仕事がこれか。……。次はもっと、こう、冒険者らしい依頼を受けようぜ」
「賛成です! 汚れない、お肉が美味しい、そして私が一番輝ける依頼をお願いします!」
「……。先輩。……。次の依頼、実はもう受けてあります。……。隣国の不穏な動き……『聖女の誘拐』の調査です。……。ユフィさん、あなたの出番かもしれませんよ?」
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