第34話:師の贈り物! 王都の名工と「白星の枝」
王都の喧騒から離れた路地裏。看板すら出していない古びた工房の重い扉を叩くと、中から火花の匂いと共に、偏屈で知られる老名工・ガランが姿を現した。
「……フン、Dランクの小僧どもか。いや、今日からはCランクか」
ガランは、俺たちが差し出したボロボロの装備の残骸を一瞥もせず、奥の作業台に並べられた四つの武具を指差した。
「……えっ、これ……私たちのために?」
ユフィが目を丸くする。そこには、これまでの安物とは一線を画す、神々しいまでの光を放つ装備が並んでいた。
「勘違いするな。代金も素材も、一足先に払いに来た『道楽者』がいる。……一週間前、黒い刀を差した男が、Aランク魔物の希少素材と、一生遊んで暮らせるほどの金貨を置いていきおった」
「……黒い刀。誠十郎さん……!」
俺は絶句した。あの人は、俺たちが試験を受ける前から、合格することを確信していたのだ。
「『弟子の“枝”が折れたら、これで新しい芯を打ってやってくれ』……だとよ。小癪な野郎だ。だが、素材は最高級だ。俺の腕を疑うなよ」
ガランが布を剥ぎ取り、四人にそれぞれの「魂」を差し出した。
■ 大翔:一対刀『比翼』
* 素材: 誠十郎が絶天峰で狩った『深淵の飛竜』の逆鱗を鋼に練り込んだ一品。
* 特徴: どんな硬い装甲も「理」で断ち切る鋭さ。
* 大翔: 「……重いな。……でも、誠十郎さんの期待に応えるには、これくらいの重さが必要なんだろうな」
■ マリア:白銀の軽装重鎧『ヴァルキリー・ドレス』
* 素材: 物理耐性の高いAランク魔物の外殻を、極限まで薄く叩き出した魔導合金。
* 特徴: 盾を捨てたマリアの「回避」を加速させ、かつ一撃必殺の「打撃」を強化する。
* 備考: 騎士としての品格と、女性としての凛々しさが同居する、マリアにしか着こなせない一着。
* マリア: 「……なんて美しい。……リーダー、誠十郎さんは、私が『避ける騎士』として生きることを認めてくれたんですね……!
」
■ ユフィ:世界樹の聖杖『アルテミス・コア』
* 素材: 高密度の魔力を吸収・安定させる『影の精霊騎士』の核を組み込んだ杖。
* 特徴: ユフィの爆発的な魔力を「芯」に留め、暴走を完全に抑制する。
* ユフィ: 「……すごい、魔力が……喧嘩してない。誠十郎さん、見てて。私、もう怖がらないよ!」
■ カスミ:霊糸の法衣 & 無限符の書
* 素材: 魔力を蓄積する『風切の妖鳥』の羽毛を織り込んだ耐魔法衣。
* 特徴: 護符の自給自足が可能になり、軍師としての継戦能力が飛躍的に向上。
* カスミ: 「……。ふふ、あの人はどこまでお見通しなんでしょうね。……。先輩。これで心置きなく、護符を惜しまず先輩を『サポート』できます。……物理的にも、心理的にも、ね(クスクス)」
「……。よし。行こうぜ、みんな」
俺たちは誠十郎さんが用意してくれた「重み」を全身に纏い、工房を後にした。
夕日に照らされた王都。新調された装備が、俺たちの新しい門出を祝うように輝いている。
「リーダー、お腹が空きました! 誠十郎さんにお礼を言うためにも、まずはスタミナをつけなきゃ!」
「……マリアさん、さっきも言ってたでしょ。……大翔、私もお肉、賛成!」
「……。先輩。今夜だけは、師匠の太っ腹に甘えて……あざとく高級店に行っちゃいますか?」
賑やかな仲間たちの声を聞きながら、俺は新しい『比翼』の柄を握りしめた。
あの人が信じてくれたこの力で、俺たちはもっと遠く、まだ見ぬ世界の果てまで歩んでいく。
(第34話・完 / Cランク昇格試験編・完)
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