第33話:最深部! 守護者との激闘と、掴み取ったCランクの証
『翠玉の虚空』最深部。不気味な豚の嘶きが反響する広場に、その禍々しい巨躯は鎮座していた。
鈍く光る翡翠の脂肪に覆われた巨体、手には重厚な石斧。**『翠玉の豚王』**だ。
「……こいつ、ただのオークじゃない。取り巻きの数も尋常じゃないぞ」
俺はひび割れた『極黒の枝』を強く握る。周囲には、王を守るように武装したオーク・ジェネラルたちが隙なく陣取っていた。
「……先輩。……。王を叩かなければ、無限に増援を呼ばれます。……。あざとく誘い出しますが、護符が尽きている今、私の命は先輩に預けますよ?」
カスミが、最後の一枚となった真っ白な護符を指に挟み、俺の背中にぴたりと寄り添う。
「――ご安心を。……。豚に真珠、ならぬ……豚に鉄槌です! 誠十郎さんの修行で得たこの足、簡単には捕まりません!」
マリアさんが、ひしゃげた盾を投げ捨て、真紅の装飾が施された騎士剣を正眼に構えた。乱れたプラチナブロンドの髪から覗く瞳は、凛とした美しさのに中に、獲物を逃さない鋭さを宿している。
「ブモォォォォォッ!!」
オークキングが号令を発し、一斉にオークたちが襲いかかる。
「マリアさん、右だ! 奴らの包囲を切り裂け!」
「了解です! ――『柳の型・千切!』」
マリアさんは重装甲の常識を覆す軽やかな身のこなしで、オークたちの刺突を紙一重でかわし、その喉元を次々と撫で斬っていく。その姿は、戦場に咲く一輪の毒花のようだった。
「ユフィ、王の足元だ! 氷の術式で滑らせろ!」
「……うん、やるよ! ――『極小氷界』!」
ユフィが、杖の破損を抑えるために極限まで圧縮した氷魔法を放つ。巨体を支えていたオークキングの足元が凍りつき、その巨躯が大袈裟に揺らいだ。
「今だ、カスミ!」
「――『最後の一片・爆縮符』!」
カスミが自らの髪を結びつけた護符を、オークキングの胸元へ放つ。爆発の衝撃が王の姿勢を完全に崩し、その喉元が無防備に晒された。
「必中スキル、発動。ターゲット――オークキングの、その醜い喉仏!」
俺は、文字通り最後の一撃となる『極黒の枝』に、誠十郎さんから叩き込まれた「一点に全てを乗せる」意志を込めて投擲した。
(ドォォォォン!!)
枝はオークキングの喉を貫通し、背後の翡翠の壁に深々と突き刺さった。断末魔さえ上げられず、王は静かに崩れ落ちた。
「……はぁ、はぁ。……。やった、私たち……本当にCランクへの扉を開けたんだね」
ユフィが、役目を終えて真っ二つに折れた杖を抱きしめ、安堵の涙をこぼす。
「……。ええ。……。先輩、これでやっと……このボロボロの装備におさらばできますね。……。次からは、もっと私を守りやすい装備を選んでくださいね?(クスクス)」
カスミが俺の首筋に冷たい指先を這わせ、勝利の余韻を楽しむように囁く。
「リーダー……私、もう限界です。……。お祝いは、特盛のローストポークですからね? 敵討ち、という意味でも!」
マリアさんが、汗を拭いながら満面の笑みで俺の腕を掴む。その力強さは、これまでの試練を共に乗り越えた信頼の証だった。
「ああ。……。全員、本当によくやった。……行こうぜ、王都へ。新しい『俺たちの武器』が待ってる」
(続く)
面白いと思ったら、下の☆で評価していただけると励みになります




