外伝:【天を衝く刃】(下)――理の向こう側
飛竜は困惑していた。
これまでの獲物は、一撃で絶望し、二撃で肉を散らしてきたはずだ。
だが、目の前の「魔力を持たぬ男」は、血を流しながらも、その芯が微塵も揺らいでいない。
飛竜は四枚の翼を広げ、周囲の全魔力を一点――その喉元へと収束させる。
放たれるのは、すべてを無に帰す『虚空の息』。
「……。力に頼れば、隙が生まれる。それは、どのような世界でも変わらぬ道理よ」
誠十郎は目を閉じた。
荒れ狂う魔力の奔流も、飛竜の殺気も、すべてを情報の断片として削ぎ落とす。
残ったのは、吹雪の音と、自身の心音。
そして、飛竜が放つ攻撃の「起点」となる、空間の僅かな歪みのみ。
「――参る」
(キィィィィィィィィン……!)
ブレスが放たれる直前。
飛竜が最大の力を込めたその刹那、誠十郎の姿が「無」となった。
物理的な速さを超え、因果すら置き去りにする、純粋なる技の結実。
飛竜の喉元を、一筋の銀光が通り抜ける。
絶叫すら許されなかった。
誠十郎の放った一撃は、飛竜の強靭な鱗だけでなく、放たれようとした高密度の魔力そのものを「燃料」として斬り裂き、内側から敵を両断したのだ。
(ズザァァァ……ッ!!)
漆黒の翼が二つに分かれ、頂を覆う雪を黒く染める。
誠十郎は、荒い息を整えることもなく、ゆっくりと刀を納めた。
「……。まだ、重いな。……。大翔ならば、この一撃をどう見たか」
誠十郎は砕けた岩場に腰を下ろし、遠く王都の方向を見つめた。
体は満身創痍であったが、その心はかつてないほどに澄み渡っていた。
【リザルト:誠十郎、極限の進化】
■ 誠十郎:Lv 35
* 力:A → S(数多のAランク魔物との死闘を経て、筋力と内功がついにSランクへ)
* 器用さ:A++ → S+(物理と魔力の境界を斬り分ける、神域の精密さを習得)
* 体力:B++ → A+(極限状態での連戦が、基礎防御能力と生存本能を極限まで高めた)
* 素早さ:A → S(空間そのものを滑るような縮地を完成させ、Sランクへ到達)
* 備考: Aランク魔物を「狩り」続けた結果、レベル35という圧倒的な高みに到達。現代の剣客でありながら、異世界の英雄に匹敵する、あるいは凌駕する武の化身となった。
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