第28話:4階層・共鳴する魔! ユフィの魔力と「芯」の戦い
『翠玉の虚空』4階層――「共鳴の断層」。
ここは翡翠の結晶が巨大な音叉のようにそびえ立ち、わずかな足音さえも増幅されて耳を劈く特殊な環境だった。
「……っ。耳が痛いよ、大翔。魔力が音に反応して、勝手に溢れ出しそう……」
ユフィが耳を押さえ、ボロボロの杖を抱きしめて蹲る。彼女の膨大な魔力は、周囲の振動に共鳴して暴走しようと脈動していた。
「……落ち着け、ユフィ。誠十郎さんに教わっただろ。魔力は『出す』ものじゃない、『練り上げる』ものだ」
「……。先輩、来ます。……音を食らう魔物、エコー・バットの群れです」
カスミが護符のない指先で俺の腕を強く引き、警戒を促す。
闇の奥から、超音波の礫が飛来した。
「マリアさん、音の波を盾の角度で逸らせ!」
「了解です、リーダー! ――『風の如く、いなします!』」
マリアさんが大盾を最小限に傾け、衝撃波を物理的に受け流す。だが、敵は音速に近い速度で空を舞い、俺たちの死角を突き続ける。
「ユフィ、今だ! お前の魔力を『針』に変えろ!」
「……ふぅ……。吸って、吐いて……」
ユフィが目を閉じる。かつての彼女なら、ここでパニックになり、周囲を吹き飛ばす大爆発を起こしていただろう。だが、今の彼女は違う。
誠十郎さんに叩き込まれた、魔力を指先に押し込める過酷な感覚。
溢れ出そうとする奔流を、精神の力で一滴漏らさず凝縮していく。
「――『静寂の穿孔』」
ユフィが杖を振る。音はしなかった。
ただ、彼女の指先から放たれた極小の魔力の「芯」が、共鳴する大気を切り裂き、音速で舞うエコー・バットの眉間を次々と、正確に貫いていく。
「なっ……!? 全部、急所に当たってる……!?」
「……。当り前だよ。だって、音が見えるんだもん」
ユフィが静かに目を開ける。その瞳は、かつての天真爛漫な少女のものではなく、獲物を逃さない「狩人」の鋭さを宿していた。
「トドメだ。必中スキル、発動。ターゲット――混乱して動きが止まった、リーダー格の喉元!」
俺は折れかけた双剣を鞘に収め、最高密度の「鉄芯の枝」を投げた。
ユフィが開けた「音の道」を通り、枝が魔物の首を刈り取る。
【リザルト:4階層突破・レベルアップ!】
■ ユフィ:Lv 18 → 19
* 魔力:B++
* 命中率:C+ → B(超音波の中での精密狙撃により、命中率がBランクへ)
* 元気:S
* 備考: 魔力を「点」で扱う術を完全にモノにし、パーティ最強の砲撃手へと進化。
■ 大翔:Lv 23 → 24
* 力:C+ / 器用さ:B+ / 幸運:A
* 備考: ユフィの魔力の流れに投擲を合わせる連携を習得。
■ カスミ:Lv 18 → 19
* 魔力:C++ / 知力:B++ → B+++(共鳴現象を逆利用する戦術を立案し、知力が極まる)
* あざとさ:A+
* 備考: 護符なしでユフィの魔力軌道を計算し続ける過酷な仕事を完遂。
■ マリア:Lv 19 → 20
* 体力:A / 守備:B+ / 素早さ:E
* 備考: レベル20到達。音の衝撃を体一つで受け流し続け、耐久力がさらに向上。
「……大翔、私、ちゃんと『芯』で捉えられたかな?」
ユフィが少し不安そうに、でも誇らしげに俺の顔を覗き込む。
「……。ああ、完璧だったよ。……。あんな精密な魔法、誠十郎さんに見せたら、少しは感心してくれるかもな」
「……。先輩。ユフィさんの活躍は認めますが、私の計算による精密な誘導も忘れないでくださいね? ……さあ、次は中層の山場、5階層です。……。私の予感では、先輩の双剣……もう保ちませんよ」
カスミが俺の双剣の小さな刃こぼれを指先でなぞり、不敵に囁く。
「……分かってる。次は俺の番だ。行くぞ」
(続く)
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