第29話:中層の番人! 砕かれた双剣とマリアの「盾」
『翠玉の虚空』第5階層。最深部への門番として鎮座していたのは、全身が翡翠の結晶で覆われた巨大な鎧騎士――**『エメラルド・ガーディアン』**だった。
「……デカいな。こいつ、物理耐性が尋常じゃないぞ」
俺は腰の双剣を引き抜く。だが、連戦による摩耗で、刃には無数の亀裂が入っていた。
「ガァァァァァン!!」
ガーディアンが巨大な大剣を振り下ろす。衝撃波だけで石畳が弾け飛ぶ。
「……っ、間に合わない!」
俺の反応が遅れたその瞬間、視界を遮るように、眩いばかりの金髪が舞った。
「――『不動の如く、しかし……風の如く!』」
マリアさんが、大盾を背負ったままの身軽さで、ガーディアンの直撃を紙一重でかわした。
重厚な鎧を纏っているはずなのに、その動きはまるで舞踏会のダンスのように優雅で、無駄がない。
「リーダー、下がってください! ……ここは、誠十郎さんに『肉を断つなら骨を避けろ』と叩き込まれた私が、道を作ります!」
マリアさんが振り返る。額に浮かぶ汗が結晶の光に反射し、彼女の整った横顔をより一層、神々しく引き立てていた。普段の「食いしん坊」な姿はどこにもない。そこにあるのは、王都の騎士すら霞む、一人の「美しき武人」の姿だった。
「――『絶技・点突』!」
マリアさんは盾を使わず、鎧の拳に全体重を乗せ、ガーディアンの関節――結晶の継ぎ目一点に、弾丸のような連打を叩き込んだ。
(バキィィィィィィィン!!)
「……っ、なっ!? 物理無効のはずの装甲が……砕けた!?」
「リーダー! 今です! 芯は、私が剥き出しにしました!」
「……応よ! 必中スキル、発動。ターゲット――マリアさんが開けた、その一点!」
俺はボロボロの双剣を投げ捨てた。
今の俺には、折れかけた剣など不要だ。手に持ったのは、誠十郎さんが「これでお前の芯を磨け」と渡した、異常な重量を誇る**『極黒の枝』**。
(ドシュッ!!)
空気を切り裂く轟音。
マリアさんが命がけで作った隙間に、俺の枝が吸い込まれるように突き刺さる。
次の瞬間、ガーディアンの巨躯が内部から爆散するように崩れ落ちた。
【リザルト:中層突破・レベルアップ!】
■ マリア:Lv 20 → 21
* 体力:A → A+(格上の連撃を回避し続けたことで、持久力がさらに向上)
* 守備:B+
* 素早さ:E → E+(回避の極意を掴み、重装ながらも俊敏な動きを習得)
* 備考: 戦いの中での凛とした美しさがパーティを鼓舞。レベルアップと共に、騎士としての「格」が上がった。
■ 大翔:Lv 24 → 25
* 力:C+ → B(重量級の枝を扱い続けたことで、筋力がついにBランクへ)
* 器用さ:B+ / 幸運:A
* 備考: 安物の双剣が全壊。ここからは「枝」と「折れた剣の破片」のみで戦う過酷な状況へ。
■ ユフィ:Lv 19 → 20
* 魔力:B++ / 命中率:B
* 備考: レベル20到達。マリアの背中を信じ、極限まで出力を抑えた精密射撃を完遂。
■ カスミ:Lv 19 → 20
* 知力:B+++ → A(ついに知力がAランクへ到達。戦場のすべてを掌握する軍師へと進化)
* あざとさ:A+
* 備考: 護符がゼロの状態でも、マリアの動きを完璧に予測し、魔力波で死角をカバー。
「……はぁ、はぁ。リーダー、……私、お役に立てましたか?」
戦いが終わり、マリアさんが荒い息をつきながら、晴れやかな笑みを浮かべる。
乱れた金髪をかき上げるその仕草に、思わず見惚れてしまった。
「……ああ。最高だったよ、マリアさん。正直、惚れ直した」
「……っ! そ、それは……あの、報酬でお肉をたくさん食べさせてくれるという意味、ですよね!?」
一瞬でいつもの「食いしん坊マリア」に戻り、顔を真っ赤にする彼女を見て、俺は思わず吹き出した。
「……先輩。マリアさんの美しさに鼻の下を伸ばすのはそこまでです。……。私の『あざといサポート』も、しっかり評価に加えてくださいね?」
カスミが俺の腰に腕を回し、釘を刺すようにグイと自分の方へ引き寄せる。
「……分かってる。さあ、次は6階層。……視界ゼロの暗闇迷路だ。誠十郎さんの修行の成果、見せてやろうぜ」
(続く)
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