外伝:【孤高の頂】――巨神の眼光と不撓の武人
大翔たちが王都の地下で泥臭く足掻いている頃、誠十郎は人跡未踏の霊峰『絶天峰』の八合目にいた。
ここは空気そのものが魔力の刃となって吹き荒れる極地。吹雪の合間から、その巨躯が姿を現した。
「……出たか。この地の守護者か、あるいはただの飢えた獣か」
現れたのは、岩山がそのまま立ち上がったかのような巨躯――『古の単眼巨神』。
Aランクに指定されるその魔物は、ただ立っているだけで周囲の空間を威圧し、その巨腕の一振りで地形すら変える。
「グオォォォォォン!!」
巨神の咆哮が、大気を物理的な衝撃波として揺らす。誠十郎は足元の岩場に深く指先を立て、その突風を正面から受け流した。
「……。咆哮に頼るようでは、その剛腕も宝の持ち腐れ。……。さあ、始めようか」
誠十郎はまだ、抜刀しない。
巨神が丸太のような腕を叩きつける。回避した背後の岩壁が粉々に砕け、飛び散る破片が誠十郎の頬をかすめて血を滲ませた。
「……。速いな。図体に似合わぬ機敏さだ」
サイクロプスの一つ目が、魔力の収束により紅く輝く。
放たれるは熱線の奔流。逃げ場のない断崖で、誠十郎はあえて前方――死地である巨神の足元へと地を這うような歩法で踏み込んだ。
「――『縮地』」
足元を焼く熱線の熱気を感じながら、誠十郎は巨神の懐に滑り込む。だが、巨神もさるもの。その動きを読んでいたかのように、巨大な膝を蹴り上げた。
「……っ、ぬう……!」
咄嗟に鞘を盾にして防ぐが、凄まじい衝撃が誠十郎の全身を駆け抜ける。
骨が軋む音。彼は空中で体勢を立て直しながら、鮮血を吐き捨てて着地した。
「……。甘くは……ないな。異世界の怪物、侮りがたし」
誠十郎の瞳に、静かな、しかし苛烈な闘志が宿った。
外伝:【孤高の頂】(下)――断絶の一閃
「グガァァッ!!」
巨神は確信した。手応えはあった。目の前の小さな人間は、もはや満身創痍。
一つ目が再び輝き、今度は逃さぬとばかりに、扇状の熱線を放とうとする。
「……。欲が出たな。その慢心が、芯を曇らせる」
誠十郎は深く腰を落とし、呼吸を整える。
肺腑に溜まった熱を吐き出し、全身の「気」を右手に集中させた。
もはや、彼には巨神の質量も、放たれる熱線の脅威も見えていない。
ただ一点。巨神の体に走る「断絶すべき理」だけが見えていた。
「――。参る」
(キィィィィィィィン……!)
熱線が放たれるコンマ数秒前。
誠十郎の姿が、光の筋となって巨神を通り抜けた。
空中に静寂が戻り、遅れて抜刀の風切り音が山びことなって響く。
巨神の一つ目が、驚愕に揺れた。
熱線は放たれることなく、その赤い光は中心から縦に二つへと割れていく。
眉間から股下まで。誠十郎の放った一撃は、魔物の肉体だけでなく、その周囲の魔力そのものすら断ち切っていた。
(ズザザザ……ッ!!)
左右に分かれた巨躯が、雪崩となって断崖から崩れ落ちる。
誠十郎は、血の一滴も付着していない刀身を静かに鞘へと納めた。
「……。まだ、迷いがある。……。大翔ならば、今の局面をどう凌いだだろうな」
誠十郎は一つ、深く息をつくと、傷ついた体を労わる様子もなく、さらに高い頂を目指して歩き出した。
【リザルト:誠十郎、死闘の果てに】
■ 誠十郎:Lv 24 → 26
* 力:B++ → A(巨神の硬度を上回る踏み込みを体得。ついにAランクへ)
* 器用さ:A++
* 体力:B+ → B++(Aランクの衝撃を耐え抜いたことで、基礎代謝と肉体強度が向上)
* 素早さ:B++ → A(縮地と抜刀の連携をさらに研磨)
* 備考: 異世界の強敵との真剣勝負により、ステータスの壁を次々と突破。武人としての凄みが増している。
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