第26話:2階層・断層の罠! 試されるカスミの「知」とマリアの「身のこなし」
翡翠の燐光がさらに濃くなる『翠玉の虚空』2階層。足元は断崖絶壁が連続する不安定な足場へと変わり、空気には魔力を狂わせる「虚空の風」が吹き荒れていた。
「……っ。この風、護符の霊力を削りに来ますね。……先輩、少しだけ、『補給』させてください」
カスミが俺の右腕に指を絡め、あざとく体温を確かめるように密着する。彼女の手には、長年の使用で端が擦り切れた数枚の護符。魔力を込めるたびに、紙の繊維が悲鳴を上げていた。
「……カスミ、無理はするな。……ユフィ、前方に魔力反応。……マリアさん、足場が悪い。盾は背負ったまま、回避に専念してくれ」
「了解です、リーダー! ……この揺れる足場、誠十郎さんの竹刀を避けるよりは簡単です!」
「ガァァッ!」
断層の影から躍り出たのは、Cランクの魔物『エメラルド・ガーゴイル』。石の硬度と飛行能力を併せ持つ厄介な相手だ。
「……。チッ、安物の双剣でどこまで通るか……!」
俺は腰の双剣を抜く。誠十郎さんとの特訓で研ぎ直したが、元は安物の鋼。ガーゴイルの皮膚を正面から叩けば、こちらが折れる。
「――『重力加速・符』!」
カスミが護符を一枚、空中に放つ。擦り切れた護符が燃え上がり、ガーゴイルの一体を地面へと叩き落とした。
「今だ、マリアさん!」
「はいっ! ――『岩を穿つ、無形の型』!」
マリアさんが盾を構えず、自らの拳に全体重を乗せてガーゴイルの喉元を突く。盾による「面」の防御を捨て、攻撃を「点」で受け流す身のこなしが、敵の巨体を宙に浮かせた。
「ユフィ、羽の付け根を狙え!」
「……うん! 逃がさない! ――『光束』!」
ユフィが杖の先を震わせながら、極細の熱線を放つ。魔力が一点に凝縮され、ガーゴイルの翼を正確に焼き切った。
「トドメだ。必中スキル、発動。ターゲット――落下した奴の、核が露出した胸の中央!」
俺は折れかけた双剣の一振りを逆手に持ち、もう片方の手に「鉄芯の枝」を握る。双剣で攻撃をいなし、視界を確保した瞬間に枝を投擲した。
(ドシュッ!!)
重い枝がガーゴイルの核を粉砕した。
【リザルト:2階層突破・レベルアップ!】
■ 大翔:Lv 21 → 22
* 力:C → C+(双剣と投擲の併用により、筋力が向上)
* 器用さ:B
* 幸運:A
* 備考: 双剣の使い方が「斬る」から「流す・突く」へと洗練され始めた。
■ ユフィ:Lv 16 → 17
* 魔力:B++ / 命中率:C / 運:D
* 備考: 極細の熱線の連射が可能になり、命中精度がさらに安定。
■ カスミ:Lv 16 → 17
* 魔力:C++ / 知力:B++
* あざとさ:A
* 備考: 消耗した護符でも最大限の効果を出す「節約術」を習得。
■ マリア:Lv 17 → 18
* 体力:B++ / 守備:B+ / 素早さ:E
* 備考: 「避ける重装騎士」としての型が完成に近づく。
「……ふぅ。……。先輩、私の護符、もうボロボロです。……次は、私の指先で直接、先輩の心臓に魔力を書き込まなきゃいけなくなるかも……。……なーんて(クスクス)」
カスミが指先で俺の胸元をなぞり、不敵に微笑む。
だが、その奥にある3階層からは、不気味な紫色の霧が溢れ出していた。
「……次は3階層、毒霧の回廊だ。……装備が保つか微妙なところだが、行くぞ」
(続く)
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