第25話:Cランク昇格試験・開幕! ギルドの試練と「新調」への決意
王都の冒険者ギルド。喧騒の中、俺は受付のカウンターに一枚の書面を提出した。
「……Dランクパーティ『白星の枝』、Cランク昇格試験の申し込みだ」
受付嬢が書類を確認し、俺たちの顔ぶれをまじまじと見つめる。
「……。先日、格上のCランクパーティを退けたという噂の……。特例として、申し込みを受理します。ですが、試験場となる『翠玉の虚空』は、生半可な装備では命を落としますよ?」
俺は腰に差した双剣の柄に手をやった。誠十郎さんとの特訓で研ぎ直したが、元は安物の鋼だ。ユフィの杖も、カスミの護符も、連戦でボロボロになっている。
「……分かってる。だからこそ、この試験で『資格』を示し、上の階級に相応しい装備を揃えるつもりだ」
「……いい目ですね。では、試験を開始します。制限時間は三日間、最深部の『翠玉の核』を持ち帰ってください」
こうして、俺たちは自らの意志で「Cランク」への門を叩くことになった。
【翠玉の虚空:1階層】
翡翠色の結晶が突き出す洞窟内。空気は冷たく、魔力の密度がこれまでとは段違いだ。
「……大翔。私の杖、さっきからミシミシ言ってるよ……。魔力を込めると壊れちゃいそう……」
ユフィが不安そうに、ヒビの入った初心者用の杖を抱え直す。修行で魔力が凝縮された分、安物の杖ではその圧力に耐えきれなくなっているのだ。
「……。先輩。私の護符も、先日の特訓で残りわずかです。……。あざとく袖を引いているわけではなく、本当に心細いんですよ? ほら、こうして触れていないと魔力が……」
カスミが眼鏡のない素顔を近づけ、俺の右腕に指を絡める。だが、その視線は通路の奥に潜む『エメラルド・スライム』の核を冷徹に捉えていた。
「……。悪い。この試験を突破したら、ギルド指定の工房で一番いいやつを新調してやる。……今は、そのボロで耐えてくれ!」
「ガァァァッ!」
結晶の間から、Cランクの魔物『クリスタル・ラプター』が高速で襲いかかる。
「マリアさん、盾を使わず、懐に入って打撃だ! カスミ、護符で奴の足を一瞬だけ止めろ!」
「了解です! ――『岩のように……重く!』」
マリアさんが鋭いステップでラプターの爪をかわし、無防備な腹部に強烈な拳を叩き込む。
「――『重力加速・符』!」
カスミが指先から放った護符が燃え上がり、ラプターの動きを完璧に封じた。
「ユフィ、一撃で決めろ! 杖を壊すなよ!」
「……うん! ――『一点集中・光の矢』!」
ユフィが杖の先ではなく、自分の指先から直接魔力を放ち、杖を「発射台」としてのみ利用する高度な技術を見せる。光の矢がラプターの核を正確に射抜いた。
「……。よし。必中スキル、発動。ターゲット――残った一頭の、その結晶の継ぎ目!」
俺は双剣の一振りを逆手に構え、もう片方の手に「鉄芯入りの黒檀の枝」を握る。双剣で敵の攻撃を弾き飛ばした隙に、渾身の力で枝を投擲した。
(ドシュッ!!)
重い枝がラプターの急所を粉砕した。
【リザルト:1階層突破・レベルアップ!】
■ 大翔:Lv 20 → 21
* 力:C / 器用さ:B
* 幸運:A
* 備考: 投擲の初速がさらに向上。重い枝でも精度が落ちなくなった。
■ ユフィ:Lv 15 → 16
* 魔力:B++ / 命中率:C
* 備考: 杖に負荷をかけない魔力放出を覚え、命中率が安定。
■ カスミ:Lv 15 → 16
* 魔力:C++ / あざとさ:A / 知力:B+
* 備考: 護符の消耗を最小限に抑える「効率的な術式」を確立。
■ マリア:Lv 16 → 17
* 体力:B++ / 守備:B+ / 素早さ:F+
* 備考: 重装歩兵とは思えない身のこなしが定着し始める。
「……ふぅ。……。先輩、報酬で新調する防具、私のサイズはちゃんと測ってくださいね? 隅々まで、丁寧に……(クスクス)」
カスミが俺の耳元で囁き、再び俺の腕を抱きしめる。
装備の限界を感じつつも、俺たちは確かな手応えを感じていた。2階層へと続く階段の先には、さらなる強敵と、そして「装備新調」への希望が待っている。
(続く)




