第22話:格上の洗礼! 忍び寄る「銀蛇の牙」とカスミの算断
王都の掲示板が俺たちの話題で持ち切りになった翌日。宿を出た俺たちの前に、明らかに「これまでとは格が違う」空気を纏った四人組が立ちはだかった。
「……君か。『串の聖者』なんてふざけた二つ名で浮かれている坊やは」
リーダー格の男が、腰の細剣に手をかけながら冷笑する。Cランクパーティ『銀蛇の牙』。王都でも中堅以上の実力者として知られる連中だ。
「……。浮かれてるのは魔導鏡の中だけですよ。あんたたち、俺に何か用か?」
「誠十郎の弟子を叩けば、俺たちの名はさらに上がる。……悪いが、ここで引退してもらうよ」
男が動いた瞬間、俺の視界から奴が消えた。速い。マリアさんの突進とは比べものにならない、精密で鋭い「速度」だ。
「『神速の一突き』……!」
「――ッ、マリアさん、右だ!」
「くっ……!? 間に合いま、せん……っ!」
マリアさんの大盾が届くより速く、細剣の先が俺の喉元に迫る。だが、その直前――。
「……させません。――『粘性魔力膜』展開!」
足元に潜んでいたカスミが、あざとく俺の背後に隠れながらも、最短距離で魔力を放った。細剣の軌道が、空気中の「粘り」によってわずかに逸れる。
「……ちっ、小細工を! ロゼ、黙らせろ!」
リーダーの合図で、Cランク側の魔導師――紫のローブを纏った女が杖を掲げた。
「『魔力沈黙』」
「……っ!? 先輩、術式が……構成できません! 封じられました!」
カスミが苦悶の表情を浮かべる。これがBランクの「技術」だ。ただ威力が高いだけじゃない、搦め手が完璧すぎる。
「ユフィ! 魔法じゃなくていい、お前の有り余る魔力をそのまま叩きつけろ! 狙わなくていい、ただの『フラッシュ』だ!」
「わ、わかったぁ! 術式なんて知らないもん! 『きらきら……お目々潰しぃぃ!』」
ユフィが杖をへし折らんばかりの力で握りしめる。術式を介さない、純粋な魔力の塊が彼女の体から膨張し――。
(ドォォォォォォン!!)
「なっ……!? なんだこのデタラメな魔力量は!?」
敵の魔導師ロゼが驚愕する。彼女の『沈黙』を強引に押し流すほどの、ユフィの野生的な魔力暴走。周囲が真っ白な光に染まった。
「ぐわぁっ!? 目が、目があぁぁ!」
視界を奪われたCランクのリーダーが、慌てて踏み込んだ足元――そこには、俺が投げた「乾燥した木の根」が、カスミが沈黙させられる直前に浮かせた石畳の隙間にガッチリと噛み合っていた。
「……なっ、足が……抜けない……!?」
「……。悪いな。正面からじゃ勝てねぇから、地面に協力してもらったよ。……あばよ!」
俺たちは、動けないBランクパーティを置き去りにし、王都の路地裏へと全速力で逃げ込んだ。
【リザルト:レベルアップ!】
■ 大翔:Lv 17 → 18
* ステータス: 力:D+ / 器用さ:C++ / 幸運:A
* 備考: 格上の攻撃を「読み」で回避し、経験値が大幅に入った。
■ ユフィ:Lv 11
* ステータス: 魔力:B+ / 元気:S
* 備考: 技術(術式)を魔力量でゴリ押すという、大翔ゆずりの邪道を披露。
■ カスミ:Lv 13
* ステータス: 魔力:C++ / あざとさ:A
* 備考: 格上の魔導師に封じられ、悔し涙を浮かべる。次は絶対にやり返すと心に誓う。
■ マリア:Lv 14
* ステータス: 体力:B++ / 守備:B
* 備考: 自分の速度不足を痛感。お肉を食べて筋肉をつける決意を固める。
「……はぁ、はぁ。……死ぬかと思った」
路地裏で肩で息をする。
「……先輩。今の戦い、100点満点中15点です。……ですが、あんな格上相手に生き残ったことだけは、褒めてあげます」
カスミが、わざとらしく俺の胸に頭を預けてくる。心臓の音がうるさい。
「……ですが、これで『銀蛇の牙』を本気にさせました。……明日、誠十郎さんに会う前に、私たち、本当に全裸で吊るされるかもしれませんよ?」
「……。勘弁してくれよ」
俺は、懐にある誠十郎の果たし状を握りしめた。
Cランクの追撃、そして師匠の地獄の稽古。王都の夜は、まだ始まったばかりだった。
(続く)
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