第2話:共闘、そしてギルドへ
「先輩、まだ諦めるのは早いですよ。私の回復と、先輩のその……ユニークな戦い方で、きっと乗り越えられますから」
少女の言葉に、俺はなぜか奮い立つものを感じた。
ユニークな戦い方、か。確かに、木の枝投げはユニークだ。クソ能力だけど。
――よし、やってやる!
このクソ能力で、この状況を打開してやる!
俺は再び地面に落ちている木の枝を探し始めた。
少女はそんな俺を見て、くすりと笑った。
「先輩、私の回復魔法で、少しは耐えられるはずです! その隙に、何か……!」
少女は必死に俺に訴えかける。その健気な姿に、俺の心に火がついた。
そうだ、俺には「木の枝投げ(必中)」がある!
どんなに硬い甲羅でも、必ずどこかに隙があるはずだ!
俺は魔物の甲羅を凝視する。
そして、その甲羅の継ぎ目に、わずかな隙間を見つけた。
そこは、肉眼ではほとんど見えないほどの、本当に小さな隙間だ。
「ちょっとだけ、俺に時間をくれ!」
俺は叫び、再び木の枝を構える。
少女は不安そうな顔で俺を見つめているが、俺の目には、もう魔物の隙間しか映っていなかった。
「くらえ! 俺のクソ能力!」
俺は渾身の力で木の枝を投げつけた。
枝は一直線に飛び、そして、魔物の甲羅のわずかな継ぎ目に、寸分の狂いもなく突き刺さった。
「ギギャアアアアアアッ!」
魔物は断末魔の叫びを上げ、その巨体を大きく揺らした。
そして、みるみるうちにその動きを止め、最後には地面に崩れ落ちた。
そこには、さっきのスライムと同じように、ゼニーと魔石が残されていた。
「……やった、のか?」
呆然と立ち尽くす少女。
そして、俺。
「先輩……今の、どうやって……?」
少女が震える声で尋ねる。
俺は得意げに胸を張った。
「ふっ、これが俺のチート能力、『木の枝投げ(必中)』の真価ってやつよ!」
「木の枝投げ……?」
少女は、俺の手にある木の枝と、倒れた魔物を見比べて、信じられないといった表情を浮かべている。
その顔は、まるで「この人、何言ってるんだろう?」とでも言いたげな顔だ。
「先輩……もしかして、それ、冗談……ですよね?」
「冗談じゃない!女神から授かったチートスキルだ!!」
俺は叫んだ。だが、少女の顔には、納得した様子は微塵もない。
「それよりも、何で俺のこと先輩って呼ぶんだ?君の名前は?」
今更ながら疑問に思っていたことが矢継ぎ早に出た。
「申し遅れました!私はカスミと言います。ジョブは巫女です。歳上の方のようですし、お名前もわからなかったので、つい先輩って呼んじゃいました。」
カスミは屈託のない笑顔を浮かべた。
その笑顔は、日本で憧れていた美咲にそっくりで、俺の心臓はドクンと鳴った。
―後にして考えると、その笑顔は、どこか計算高いように見えたのは、俺の気のせいだろう。
「それで、先輩。こんなところで油を売っている場合じゃありません! 早く冒険者ギルドに行きましょう! 先輩のその素晴らしい剣技なら、きっとすぐにSランク冒険者になれますよ!」
カスミは俺の手を引いて、元気よく歩き出した。
Sランク冒険者か……。
俺のクソ能力で、本当にそんな高みにいけるのか?いや、いけるわけないだろ!
カスミに連れられてやってきたのは、街の中心にある巨大な石造りの建物だった。
入り口には、剣や斧を持った屈強な男たちや、ローブをまとった魔法使いらしき人々が出入りしている。
ここが冒険者ギルドか。
「うわー、すげぇ……」
俺は思わず感嘆の声を上げた。
日本のゲームで見たような、まさにファンタジーの世界だ。
中に入ると、さらに多くの冒険者たちがひしめき合っていた。
酒を飲んで騒ぐ者、依頼掲示板を真剣な顔で眺める者、武具の手入れをする者……。
活気に満ちたその光景に、俺は圧倒された。
「先輩、あそこが受付です。まずは冒険者登録をしましょう!」
カスミは慣れた様子で、俺を受付へと案内する。受付には、いかにもベテランといった雰囲気の、がっしりとした体格の女性が座っていた。
「いらっしゃい。冒険者登録かい? そこの用紙に名前と、使えるスキルを記入しておくれ」
女性はぶっきらぼうにそう言うと、一枚の羊皮紙と羽根ペンを差し出した。
俺はカスミに言われるがまま、用紙に名前と、そして「木の枝投げ(必中)」と記入した。
「……木の枝投げ?」
女性は俺の記入したスキルを見て、眉をひそめた。
「ええ、この先輩は、木の枝一本で巨大な魔物を倒す、とんでもない剣技の使い手なんです!」
カスミが俺の代わりに力説してくれる。いや、剣技じゃなくて木の枝投げだから!
「ふむ……。まあ、珍しいスキルではあるが、実力があるなら問題ない。よし、登録完了だ。君はFランク冒険者だ」
女性はそう言うと、俺に一枚のプレートを渡した。
Fランク冒険者。駆け出し冒険者、ってやつか。まあ、妥当なところだろう。
「先輩、Fランク冒険者おめでとうございます! これから一緒に頑張りましょうね!」
カスミは満面の笑みで俺に言う。
その笑顔は、やっぱりどこか計算高いように見えた。俺の異世界生活は、このあざとい後輩と共に、一体どうなっていくのだろうか。
(続く)
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