第1話(続き)
「グオオオオオオオオオッ!」
俺の背後から、地を揺るがすような咆哮が響き渡った。
振り返ると、そこには先ほどのスライムとは比べ物にならないほど巨大な、毛むくじゃらの魔物が立っていた。
その体躯は熊のようでありながら、鋭い牙と爪を持ち、全身から禍々しいオーラを放っている。
――嘘だろ!? スライム倒したばっかりなのに、もう次のボス戦かよ!?
俺は思わず後ずさった。
先ほどのスライムは、まだ「木の枝投げ」でどうにかなった。
だが、目の前の魔物は、どう見ても木の枝一本でどうこうなる相手ではない。
その威圧感だけで、俺の足はすくみ上がった。
「くそっ、どうする!? 木の枝は……もうないし、あったとしてもあんな硬そうな奴に通用するのか!?」
焦燥感が俺の全身を駆け巡る。
逃げようにも、魔物はすでに俺を獲物と定めたかのように、ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めてくる。
その瞳は血走っており、飢えと殺意に満ちていた。
――ああ、終わった。
異世界に来て、まさかこんなあっけなく死ぬなんて……美咲、ごめん。デート、行けなくなっちゃったよ……。
絶望に打ちひしがれ、俺は目を閉じた。
その時、どこからか、澄んだ声が聞こえてきた。
「先輩、今の格好悪かったですよ(ニチャア)」
目を開けると、俺と魔物の間に、一人の少女が立っていた。
黒髪のウェーブボブカットが特徴的な、可憐な美少女だ。
だが、その表情はどこか挑戦的で、俺をからかっているかのように見える。
――え、誰!? てか、先輩って俺のことか? てか、この状況でニチャアって何!?
少女は俺を一瞥すると、すぐに魔物へと向き直った。
その手には、神々しい光を放つ杖が握られている。
そして、その口から紡がれたのは、この世界で初めて聞く、神秘的な詠唱だった。
「我が身を捧げ、汝に祈る。清らかなる光よ、彼の者を癒し、力を与えよ――『ヒール』!」
少女の杖から放たれた光が、俺の体に降り注ぐ。
すると、先ほどの戦闘で消耗していた体力が、みるみるうちに回復していくのが分かった。
――回復魔法!? ってことは、この子、ヒーラーか!?
てか、俺、まだ何もされてないのに回復って……。
少女は再び俺の方を振り返り、にこりと微笑んだ。
「先輩、まだ諦めるのは早いですよ。私の回復と、先輩のその……ユニークな戦い方で、きっと乗り越えられますから」
その言葉に、俺はなぜか奮い立つものを感じた。
ユニークな戦い方、か。確かに、木の枝投げはユニークだ。クソ能力だけど。
――よし、やってやる! このクソ能力で、この状況を打開してやる!
俺は再び地面に落ちている木の枝を探し始めた。
少女はそんな俺を見て、くすりと笑った。
カスミ
•ジョブ: 巫女
•スキル: 回復魔法、バフスキル
•ステータス:
•力: G
•器用さ: F
•魔力: D
•素早さ: E
•体力: G
•魔法耐性: E
•幸運: D
第一話完
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