外伝:【修羅の食卓】誠十郎、王都の裏側で「静かなる教育」を施す
大翔たちが地下遺跡で古代兵器と死闘を繰り広げていた頃、誠十郎は王都の喧騒から少し離れた、知る人ぞ知る老舗の小料理屋のカウンターに座っていた。
「……。悪くない味だ」
目の前には、薄刃で美しく引かれた刺身の盛り合わせ。誠十郎はこの世界に来て以来、故郷の味に近いものを探し求めていたが、ようやく納得のいく包丁捌きに出会えた。
だが、その静寂を破るように、店の扉が勢いよく開く。
「……おい、今すぐ店を空けろ。ここら一帯は、我ら『鉄蹄騎士団』が借り切ることになった」
現れたのは、重装甲冑に身を包んだ傲慢な騎士たちだ。王都の治安維持を名目に、職権乱用を繰り返すことで悪名高い連中だった。
誠十郎は、箸を置くことすらしない。
「……。食い物の恨みは恐ろしいという言葉を知らんのか、貴様ら」
「あぁん? なんだその腰のなまくらは。……おい、つまみ出せ!」
一人の騎士が誠十郎の肩を掴もうとした瞬間――。
(パシィィィィィン!!)
乾いた音が響き、騎士が独楽のように回転しながら店の外まで吹き飛んだ。誠十郎は座ったまま、鞘の先端で相手の急所を軽く突いただけだった。
「なっ……! 貴様、何をした!?」
「……。抜くな。抜けば、死ぬぞ」
誠十郎がわずかに殺気を漏らす。
その瞬間、店内の温度が氷点下まで下がったかのような錯覚に、騎士たちは総毛立った。剣の極みに至った男が放つ「気」は、魔力を持たない者たちをも本能的な恐怖で縛り付ける。
■ 誠十郎
* レベル: 24
* ステータス: 力:B+ / 器用さ:A+ / 体力:B / 素早さ:B+ / 魔力:G / 幸運:D
* 備考: スキルは一切持たないが、その一挙手一投足が致死の技。
「ひ、ひぃぃ……っ! バケモノめ……!」
騎士たちは仲間を抱え、逃げるように去っていった。
静寂が戻った店内で、誠十郎は溜息をつき、再び箸を取る。
「……。騒がしいな。大翔も、こういう手合いに絡まれていなければいいが」
誠十郎は、ふと大翔の顔を思い浮かべる。
あいつなら、正面から戦わずに「足元に細工した枝」でも投げて、騎士たちをズッコケさせているだろう。
「……。邪道ではあるが、生き残るという一点において、あいつの執念は俺以上かもしれんな」
誠十郎は冷酒をグイと煽り、わずかに口角を上げた。
弟子の成長を、彼は彼なりのやり方で見守っている。それがたとえ、王都の権力者たちを「再教育」して、大翔の進む道を間接的に地均し(じならし)することになろうとも。
「……。さあ、店主。次は、その焼き魚を頼む」
最強の侍の夜は、まだ始まったばかりだった。
(外伝・完)
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