外伝:【王都の静寂】誠十郎、近衛騎士団を「再教育」す
大翔たちが街道で土砂崩れと格闘していた、その数日前。
王都アラバスタの白亜の城、その広大な第一訓練場は、異様な静寂に包まれていた。
「……。これが、王都を守る『近衛騎士団』の、精鋭の実力か」
訓練場の中央、誠十郎は愛刀『一竿子忠綱』を鞘に納めたまま、腕を組んで立っていた。
彼の周囲には、全身を最高級の魔道アーマーで固めた騎士たちが、十数人も地面に這いつくばっている。
「う、うぐぐ……。馬鹿な、魔力もスキルも持たぬ、ただの侍に……!」
「我ら近衛騎士団が、一太刀も浴びせられず……全滅だと?」
騎士たちは、痛みと屈辱に塗れながら、誠十郎を睨みつけた。
だが、誠十郎の瞳には、怒りも慢心もなく、ただただ底冷えするような「呆れ」だけが宿っていた。
「……型に嵌まりすぎだ。貴様らの剣は、儀式のための踊りに過ぎん」
誠十郎は、這いつくばる騎士団長へと歩み寄った。
「実戦において、敵は貴様らの『誇り』など配慮してはくれん。……大翔であれば、今頃貴様らのアーマーの継ぎ目に、油を注ぎ込んで引火させているぞ」
「なに……? 卑劣な……!」
「生き残る、とはそういうことだ。貴様らの剣には、相手を斬る執念も、自分を守る覚悟もない。……ただの『鉄の棒』だ」
■ 誠十郎
* レベル: 23(さらに上昇中)
* ステータス: 力:B+ / 器用さ:A+ / 体力:B / 素早さ:B+ / 魔力:G / 幸運:D
* スキル: なし
* 備考: 純粋な香取神道流の技のみで、魔道アーマーを纏ったBランク相当の騎士団を圧倒。
「……そこまでにしていただこうか、異邦の剣士よ」
訓練場の入り口から、凛とした、だがどこか底の知れない声が響いた。
現れたのは、純白のローブを纏った、冷徹な美貌を持つ女性。王立魔導院の院長、エルザだ。
「魔導院の院長か。……近衛騎士団の『再教育』を頼まれた覚えはないが」
誠十郎は、エルザを真っ直ぐに見据えた。
「ええ。ですが、貴方のその『異能』を持たぬ『強さ』、興味深いわ。……我が魔導院では、貴方のような人材を、国の『至宝』として迎え入れたいと考えているの」
「興味はない。俺はただ、己の技を磨くだけだ」
誠十郎は一蹴し、訓練場を後にしようとした。
だが、エルザは不敵な笑みを浮かべ、最後の言葉を口にした。
「……貴方の『唯一の弟子』、大翔君についても、同じことが言えるかしら?」
誠十郎の足が、ピタリと止まった。
「……何が言いたい」
「彼もまた、規格外の『強さ』を持っているわ。……ただ、少し『邪道』が過ぎるけれど。……王都には、彼のような『歪み』を好まない勢力も多いの。……魔導院の『庇護』があれば、彼も安全に活動できるわよ?」
「……。俺の弟子を、交渉の道具にするな」
誠十郎の全身から、凄まじい「殺気」が溢れ出した。
訓練場の温度が一瞬で氷点下まで下がり、周囲の騎士たちが恐怖で身を震わせる。
「……ふふ。殺気だけで空間を凍らせるなんて、やはり貴方は最高だわ。……安心なさい、大翔君には、魔導院から『招待状』を送っておいたから。……いずれ、ここで再会することになるでしょう」
誠十郎は、殺気を収めると、エルザを一瞥し、訓練場を出ていった。
「(大翔……。お前、王都に来るのか。……。来るがいい。……俺が、その『木の枝』を叩き折って、お前の『邪道』が、王都の『正義』に通用するか……この俺が、試してやる)」
誠十郎は、月明かりの下、刀の鍔をパチリと鳴らし、不敵に口角を上げた。
(外伝・完)
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