第15話:見えない敵の正体! 枝とマリアの衝撃波(バッシュ)
「……来るぞ。マリアさん、構えろ!」
霧の奥から迫る、空気を裂く微かな音。誠十郎さんなら心眼で捉えるだろうが、俺は凡人だ。目に見えないものは見えない。
「はい! ですがリーダー、本当にそんなもので見えるようになるのですか?」
マリアさんが大盾を構えながら不安げに尋ねる。俺の手にあるのは、粘着液を塗りたくった「大量の綿毛付きの枝」だ。
「いいから、俺の合図で盾を叩け! ――今だッ!」
「せいッ!!」
マリアさんが盾を剣の腹で激しく叩く。
(ガアァァァン!!)
凄まじい金属音が霧の中に響き渡った。その瞬間、音の反射に驚いたのか、わずかに「空間の揺らぎ」が生じる。
「必中スキル、発動! ターゲット――揺らぎの全方位!」
俺は扇状に、綿毛の枝をバラ撒いた。
シュパパパパパンッ!
ただの枝なら通り過ぎるだけだが、粘着液を塗った綿毛は空気に触れる面積が広い。
「ギチッ!?」
何もない空間に、不自然に「綿毛が張り付いた人型のシルエット」が浮かび上がった。
「ビンゴだ! 姿を消してても、物質が表面に張り付きゃ輪郭は丸見えなんだよ!」
正体は、体長2メートルほどのカマキリに似た魔獣『ミスト・マンティス』の変異種。空間を歪ませる能力で姿を消していたが、今は真っ白な綿毛に覆われて、まるでマスコットキャラクターのような無様な姿を晒している。
「……っ、これなら私でも見えます! 覚悟しなさい、この不届き者め!」
マリアさんが地を蹴った。重装甲冑とは思えない鋭い踏み込み――空腹度がマシな時の彼女は、騎士としての基本性能が極めて高い。
「『聖なる衝撃』!!」
「ギ、ギシャァァッ!?」
盾の真っ正面からの強撃が、マンティスの細い胴体を捉える。衝撃波が霧を吹き飛ばし、実体を保てなくなった魔獣が地面に叩きつけられた。
「ユフィ、魔法が使えなくても、火種くらいは出せるだろ! あの綿毛に引火させろ!」
「了解! 魔法がダメなら物理的な火遊びだよ! 『きらきら火花』!」
ユフィが杖の先から放った小さな火花が、粘着液と綿毛に引火した。
(ボォォォォッ!!)
一瞬で炎に包まれるマンティス。姿を消す能力の核となっていた薄羽が焼け落ち、ついにその狡猾な「怪異」は絶命した。
【レベルアップ!】
大翔:Lv 11 → 12
(経験値1.2倍により、安定のトップ独走)
マリア:Lv 9 → 10
(二桁到達! タンクとしての安定感がさらに向上)
ユフィ:Lv 8
カスミ:Lv 8
【現在のパーティステータス】
■ 大翔
* レベル: 12
* ステータス: 力:D+ / 器用さ:C / 幸運:A / 素早さ:D+
* 備考: 「見えない敵には色をつける」という、誠十郎にはない発想で勝利。
■ マリア
* レベル: 10
* ステータス: 体力:B / 力:C- / 素早さ:G
* 備考: レベル10の大台に乗り、防御スキルが強化。ただし、戦闘後の空腹度も強化された。
「……ふぅ。やりましたね、リーダー。ですが……あの、一点だけよろしいでしょうか」
マリアさんが、煤で汚れた盾を拭きながら真剣な顔で俺を見た。
「なんだ? 改まって」
「先ほどの作戦……非常に合理的でしたが、私の美しいプラチナブロンドにも、少しだけ綿毛と粘着液がついてしまったのですが……」
「……。悪い、後でいい石鹸買ってやるから」
「約束ですよ! あと、特上のお肉も!」
現金なやつだ。だが、これで森の「怪異」の正体は暴いた。
あとはギルドに報告するだけだが……俺は霧のさらに奥、誠十郎さんが見ていたであろう「空間の歪み」の残り香を、微かに感じていた。
俺たちは金貨30枚と、ランクアップへの期待を胸に、迷いの森を後にした。
(続く)
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