外伝:【無双の残光】誠十郎、Bランクダンジョン『黒鉄の城塞』攻略
大翔たちと別れ、一人「修行の旅」を続ける誠十郎が足を踏み入れたのは、地図にも載っていない未登録ダンジョン、通称『黒鉄の城塞』だった。
そこはかつての古代文明が残した自動防衛施設であり、現在は強力な機械人形たちが徘徊する、Bランク以上のパーティ推奨の危険地帯である。
だが、誠十郎は松明すら持たず、静かに暗闇の廊下を歩んでいた。
「……。ここも、磁場の歪みは収束しているか。異世界とはいえ、場所によって気の流れがここまで違うとはな」
(ガシャ……ガシャ……!)
闇の先から、重厚な金属音が響く。
現れたのは、全身を魔法耐性のある黒鉄で覆われた巨躯、『アイアンゴーレム』。その腕は一本が丸太ほどの太さがあり、一振りで岩をも砕く破壊力を持つ。
「力に頼った、無粋な鉄塊か」
誠十郎は立ち止まらず、ただ静かに愛刀『一竿子忠綱』の柄に手をかけた。
ゴーレムが蒸気を吹き出し、巨大な拳を振り下ろす。地面が爆ぜ、凄まじい衝撃波が広がるが――誠十郎の姿は、すでにそこにはなかった。
「香取神道流……飛燕」
刹那。
暗闇に一条の銀光が走り、直後に三つの火花が散った。
魔法すら弾くはずの黒鉄の装甲が、まるで豆腐か何かのように一瞬で両断される。
核を破壊されたゴーレムは、断末魔の音さえ立てずに鉄屑へと戻った。
■ 誠十郎
* レベル: 21
* ステータス:
* 力: B+
* 器用さ: A+
* 魔力: G
* 素早さ: B+
* 体力: B
* 幸運: D
* スキル: なし
* 備考: 基礎ステータスが極めて高く、純粋な剣技だけでBランク相当の戦闘能力を持つ。
「ふむ。一合にも満たんか。……大翔であれば、今の一撃をどう避ける」
ふと、かつての弟子の顔が浮かぶ。
あいつなら、おそらくまともに避けることすらしないだろう。
足元に油でも撒くか、関節に小石でも投げ込んで駆動系を狂わせるか……。とにかく、真っ向から斬り伏せる俺のやり方を見て、「誠十郎さんは効率が悪いよ」と不敵に笑うに違いない。
「……。あのアホめ」
誠十郎は小さく独りごちると、さらに深層へと進む。
突き当たりにある巨大な扉。そこには、この城塞の守護者である『ギガント・アーマーナイト』が待ち構えていた。
身長5メートル。全身を魔力強化された大盾と大剣で固めた、Bランクモンスターの頂点。
「グォォォォォォ……ッ!」
凄まじい威圧感が廊下を吹き抜ける。
だが、誠十郎の心は凪のように静かだった。
彼は刀を鞘に納め、親指で鍔をわずかに押し上げる。
「一太刀だ。……お前の『盾』ごと、断たせてもらう」
誠十郎が踏み込む。
その瞬間、ダンジョンの空気が圧縮され、爆発的な速度へと変換された。
「香取神道流奥義……抜刀・神威」
目にも留まらぬ速さで放たれた抜刀術。
それは大盾の最も硬い中心部を真っ向から貫き、背後のナイト本体、さらには背後の石壁までを一文字に切り裂いた。
崩れ落ちる守護者。
その粒子が消える中、誠十郎は静かに残心を解いた。
【誠十郎のレベルが 21 → 22 に上がりました】
「……。レベル、か。数値に意味はないが、体が軽くなるのは確かだな」
彼は落ちていた魔石を拾い上げることすらなく、出口へと向かう。
彼の修行に終わりはない。
いつか大翔と再会した時、あいつの「邪道」を正面からねじ伏せ、そして共に歩めるだけの強さを、俺はさらに磨かねばならない。
「待っていろ、大翔。……次こそは、その木の枝をへし折ってやるからな」
誠十郎は月明かりの下へ出ると、遠くの街の方角を見つめ、少しだけ満足げに微笑んだ。
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