第13話:凱旋と、新たな依頼(と山積みの請求書)
初級ダンジョン『黄昏の穴倉』を攻略し、地上に戻った俺たちを待っていたのは、夕暮れに染まるギルドの喧騒だった。
「おっ、大翔のパーティじゃないか! あのゴーレムを倒したんだってな?」
「新人にしてはやるじゃねぇか。あの『泥枝』の噂、本当だったんだな!」
酒場の冒険者たちから次々と声がかかる。どうやら俺の「枝」の噂は、本人が思うより広まっているらしい。恥ずかしいような、誇らしいような、なんとも言えない気分だ。
「えへへ、私の魔法のおかげだよね、大翔!」
「先輩、まずは報告を済ませましょう。報酬が待っていますよ」
ユフィは鼻高々に胸を張り、カスミは現実的にギルドの受付へと俺を促した。
【ギルド受付にて】
「はい、確かにグレートゴーレムの魔石を確認しました。初級ダンジョン踏破、おめでとうございます! 皆さんのランクは、次回の査定で昇格候補に残るでしょう」
受付嬢の笑顔と共に、ずっしりと重い報酬の袋が手渡される。
これだよ、これ! 死ぬ思いをして手に入れた金だ。
「よし、今夜は盛大に打ち上げだ! マリアさん、約束通り好きなだけ食べていいぞ!」
「……! 真実ですか、リーダー!? ああ、やはり貴公は光の神の化身……! では、この店のメニュー、端から端まで三周ほどお願いします!」
「……三周?」
俺の耳に、不穏な言葉が届いた。
◇
数刻後。
宿屋兼食堂『跳ねる仔馬亭』のテーブルは、地獄絵図と化していた。
「……あの、マリアさん? それ、五皿目のローストビーフですよね?」
「はふ、はふ……っ! 騎士の……騎士の筋肉は、常に……栄養を欲しているのです……!」
マリアさんは、その凛とした美貌を台無しにする勢いで、肉を、パンを、スープを胃袋へ流し込んでいた。プラチナブロンドの髪をポニーテールに結び、ガツガツと食らいつく姿は、もはや飢えた獣に近い。
「大翔……。これ、今回の報酬だけで足りるかな?」
ユフィが、積み上がる皿の山を見て引きつった顔で聞いてくる。
「……カスミ、計算してくれ」
「……はい。現在の注文ペースが続くと、報酬の約八割が今夜の食費で消えます。先輩、マリアさんを仲間にしたのは、経営的には『大赤字』かもしれませんね(ニコリ)」
「嘘だろ……。俺らの稼ぎが、胃袋一つに負けるのかよ……」
俺は遠い目をしてエールを煽った。
誠十郎さんが「甘えるな」と言っていた意味が、別のベクトルで身に沁みる。強くなるには、金がかかる。そして、その金は胃袋へと消えていく。
そんな絶望に浸っていると、ギルドの使い走りの少年が俺の元へ駆け寄ってきた。
「大翔さん! ギルドマスターから指名依頼です! 明日、至急ギルドへ来てほしいって!」
「指名依頼? Eランクの俺たちに?」
普通、指名依頼は実績のある中堅以上に来るものだ。
俺は手元の「空になった財布(予定)」と、肉を頬張るマリアさんを交互に見た。
「……。背に腹は代えられない。どんなヤバい仕事でも、受けるしかないな」
俺は、懐に残った最後の一本の枝を握りしめ、明日への決意を固めた。
【現在のパーティステータス】
■ 大翔
* レベル: 11
* ステータス: 力:D+ / 器用さ:C / 幸運:A
* 備考: マリアの食費により、ハングリー精神(物理)が芽生え始めている。
■ マリア
* レベル: 9
* ステータス: 体力:B / 腹ペコ度:限界突破
* 備考: 満腹になると一瞬だけ「聖騎士モード」に戻るが、すぐお腹が空く。
(続く)
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