第9話:初級ダンジョン『黄昏の穴倉』! 枝の予備は足りてるか?
誠十郎さんが「修行の旅に出る」と言い残して街を去ってから三日。
俺たちは、ついにEランク冒険者の登竜門、初級ダンジョン『黄昏の穴倉』の入り口に立っていた。
「よし、二人とも。誠十郎さん直伝の基礎(地獄の素振り)を思い出すんだ。今の俺たちは、昨日の俺たちとは一味違う……はずだ!」
「そうだね! 私の魔力も、誠十郎に『もっと一点に集中させろ』って言われたから、今日はバッチリだよ!」
ユフィが赤毛のポニーテールを揺らし、新調した魔道杖をぶんぶんと振り回す。危ない。
「先輩、あまり気負いすぎないでくださいね。ここは地下道ですから、視界も悪いですし、足元も不安定です。『聖なる灯火』!」
カスミが呪文を唱えると、杖の先から柔らかな光が溢れ出し、薄暗いダンジョンの内部を照らし出した。
◇
ダンジョンの内部は、湿った土の匂いとカビ臭さが入り混じった嫌な空気が漂っていた。
慎重に進む俺たちの前に、最初の獲物が現れる。
「ギギィッ!」
暗闇から飛び出してきたのは、体長1メートルほどの巨大なネズミ『ジャイアントラット』が3体。
「ユフィ、左だ!」
「まかせて! 『きらきら流星弾』!」
ユフィが一点集中を意識して放った光弾。以前なら周囲の壁ごと消し飛ばしていたが、今回は真っ直ぐにネズミの群れの中心へ。
ドォォォン!!
直撃は免れたものの、爆風でネズミたちがひっくり返る。
「よし、次は俺だ!」
俺は腰の『アイアンツインブレード』を抜いた。誠十郎さんとの特訓で叩き込まれた「体幹」を意識し、踏み込む。
(ザシュッ!)
「お……おおお! 斬れた! ちゃんと斬れたぞ!」
今まで「重い棒」だった双剣が、初めて獲物の肉を捉えた。俺の『力:E+』でも、正しい姿勢と踏み込みがあれば、初級モンスター相手なら通用する!
だが、ダンジョンはそんなに甘くなかった。
奥へ進むにつれ、通路が狭まり、地面にはぬかるみが増えてくる。
「先輩、前方から多数の反応! 囲まれます!」
カスミの声と同時に、天井や壁の隙間から『ケーブスパイダー』が次々と這い出してきた。その数、十数匹。
「うわっ、キモい! ユフィ、ぶっ放せ!」
「ダメだよ大翔! こんな狭いところでやったら、天井が崩れて生き埋めになっちゃう!」
「あ、そうだった……!」
双剣で応戦するが、多勢に無勢。クモの糸が俺の足に絡まり、動きが鈍る。
「くそっ、やっぱり剣だけじゃ限界があるか……!」
俺は迷わず、懐から「特製の太い枝」を取り出した。
誠十郎さんには「捨てろ」と言われたが、やっぱりこれがないと落ち着かない。
「カスミ、クモの目に光を集中させて一瞬だけ隙を作れ!」
「了解です! 『閃光』!」
パッと弾ける光に、クモたちが動きを止める。
「必中スキル、発動! ターゲット――全部のクモの関節!」
シュパパパパパンッ!
俺が連続で投げた枝(の破片)が、面白いようにクモの脚の付け根に突き刺さる。
「ギチギチィッ!?」
脚を一本封じられただけで、クモたちはバランスを崩し、団子状態になって転がった。
「ユフィ、今だ! 威力抑えめで、あいつらを焼き払え!」
「了解っ! 『お星様、ちょっとだけお怒りモード!』」
ボボォォォン!
程よい爆発がクモの団子を直撃し、一掃する。
「ふぅ……。やっぱり、剣と枝のハイブリッドが俺の正解だな」
「先輩、誠十郎さんが見たら、また『拳骨だ』って言われますよ?」
カスミが呆れたように笑う。
「いいんだよ。俺は誠十郎さんにはなれない。俺は俺のやり方で、お前らを守りながら登りつめてやる」
俺は地面に落ちた枝を一本拾い上げ、汚れを払って懐に収めた。
初級ダンジョン攻略は、まだ始まったばかりだ。
続く
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