外伝:【一閃の軌跡】誠十郎、名もなき廃坑を征く
大翔たちと別れた数日後。誠十郎は一人、地図にも載っていない廃坑の前に立っていた。
彼はパーティに入る誘いを断り、己の技を研鑽するための修行の旅を続けていた。
「……ここか。磁場の歪みが最も強い場所は」
中からは、おぞましい魔力の波動が漏れ出している。通常、中級以上のパーティが数日がかりで攻略する規模の未登録ダンジョン。
だが、誠十郎は松明すら持たず、暗闇の中へと歩を進めた。
「グルルル……!」
闇から飛び出してきたのは、影を操る魔獣『シャドウハウンド』の群れ。
誠十郎は刀の柄に指をかけた。
「香取神道流……飛燕」
抜刀。
闇の中で、銀の閃光が幾重にも交差する。
一切の無駄を削ぎ落とした最短の軌道。魔獣たちは、自分が斬られたことすら気づかぬまま、次々と光の塵に変わっていく。
誠十郎は立ち止まることなく、奥へ、さらに奥へと進む。
彼にとって、異世界での戦いは「攻略」ではない。ただの「修行」に過ぎないのだ。
「……。あいつなら、ここでどう動く」
ふと、大翔の顔を思い出す。
あいつならきっと、落ちている石ころに何かを塗って、壁に投げつけ、反響音で敵を誘導する……そんな回りくどく、それでいて誰も思いつかないような手を使うのだろう。
「ふっ……。馬鹿馬鹿しい」
誠十郎は小さく独りごちると、最深部に鎮座する巨大な守護者を見据え、静かに正眼に構えた。
(続く)
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