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俺のチート能力で異世界無双計画はどこいった?〜「木の枝」と「経験値1.2倍」でダンジョン探索〜  作者: KATARIBE


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第8話:合格の味と、師範代の鉄拳

「……というわけで、ギルドマスターとも協議した結果、今回のEランク昇格試験……合格とする!」


ギルドの受付カウンター前。試験官のベテラン冒険者が、複雑な表情を浮かべながらも俺たちの冒険者証に新しい印章を押した。


「やったぁ! 大翔、合格だって! これで私たちもやっと一人前の『冒険者』の仲間入りだね!」 


ユフィが俺の肩をバンバンと叩いて喜ぶ。……痛い。魔力特化のはずなのに地味に力が強い。


「おめでとうございます、先輩。……でも、判定理由が『謎の侍の介入前に、受験者が独自の戦術で対象を完全無力化していたことを認める』っていうのは、ちょっと複雑ですね」


カスミが苦笑いしながら、俺の隣でひらひらと冒険者証を振ってみせた。


合格は嬉しい。だが、俺の視線はその少し後ろ、腕を組んで壁に寄りかかっている「歩く武士道」に釘付けだった。


「……大翔。合格したからといって慢心するな。あのクマの動き、お前ならあと三寸は早くふところに潜り込めたはずだぞ」

誠十郎さんの声が響く。 


周囲の冒険者たちが

「あのアーマーベアを一撃で斬った侍か……」

と遠巻きにヒソヒソ噂している。 


「はは……。すみません、誠十郎さん。精進します」


俺はポリポリと頭を掻いた。

昔の俺なら「誠十郎兄ちゃん、固いこと言わないでよ!」と甘えていただろう。でも、この過酷な異世界で、汚い手を使ってでも生き延び、仲間を守ってきた今の俺には、彼に対する新しい敬意があった。この人は、俺が小細工に逃げる前から、ずっと「本物」であり続けているのだから。


その夜。俺たちは昇格祝いと誠十郎さんの歓迎会を兼ねて、宿屋の食堂に集まった。


「さあさあ! 誠十郎さんも飲んで飲んで! 私、ユフィっていいます! さっきの剣、すっごく格好良かったです!」


ユフィがジョッキを片手にグイグイと誠十郎さんに詰め寄る。


「……。ユフィ君といったか。君の魔力も、制御さえできれば天下一品だろう。……ただ、先ほどの魔法は少し派手すぎたな。周りが見えていない」


「あはは! よく言われます! 私の『キラキラお星様スターダスト』は、ちょっと元気すぎるみたいで!」


誠十郎さんは、ユフィの距離感に少し戸惑いながらも、律儀に相槌を打っている。


「誠十郎さんは、先輩の道場の師範代だったんですよね? 先輩のあのアホな……じゃなくて、独創的な戦い方は、誠十郎さんが教えたんですか?」


カスミが首を傾げながら、あざとい上目遣いで尋ねた。


「まさか。俺が教えたのは香取神道流、清廉潔白なる剣筋だ。あのような……汚物や泥を塗った枝を投げるなどという発想、我が道場の門下生には一人もいなかった。……大翔、お前だけだ。昔から変な道具を自作しては、稽古を楽に済まそうとしていたのは」


「うぐっ……。いや、あれは創意工夫の一環で……」


俺が冷や汗を流しながらエールを煽っていると、誠十郎さんが真剣な面持ちで俺を見た。


「大翔。俺はお前の戦い方を全否定はせん。生き残ることこそが兵法の極意だからな。……だが、その双剣。飾りにしておくには惜しい」


誠十郎さんは俺の腰にある『アイアンツインブレード』を指差した。


「明日から三日間、朝の素振りに付き合え。枝に頼らずとも、その剣で仲間を守れるだけの基礎を、俺がもう一度叩き込んでやる」


「……。はい。よろしくお願いします、誠十郎さん」


俺は真っ直ぐに答えた。

もちろん、あの地獄の特訓が再開される恐怖はある。

でも、それ以上に、この「本物」に少しでも近づきたいという気持ちが、俺の中で熱く燃えていた。


続く

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