仕事終わりに
「・・・疲れた」
ノンストップで死者を捌き続けた結果夜で御座います。どうなってんだこの世界。死に過ぎだっての。
取り敢えず大体は捌けたか。自分が来るまでヘルプに入っていた死神がある程度片付けておいてくれたらしく、徹夜で走り回ることにはならなさそう。
本当に助かった、と一息吐く。
帰りましょうかね。
大きく伸びをして、宙へ飛び上がった。
「ん-、冷た」
風呂上がりのアイスを頬張りつつ、ベットへ転がる。
よく温まった体に冷たいアイス、幸せだ。
湯船にちゃんと浸かって良かった。
ライ達死神は勿論の事、所謂あの世の住人の生活も現世の人間とあまり変わらない。無くても特に問題は無いから。元は違ったらしいけれど・・・転生を待つ死者達が生前と同じ生活を希望した事が始まり。それが此方にも浸透していったという訳だ。
必要な衣住のみだった此方に食を広めた手法が気になる。とにかく、広めてくれた死者達には感謝しかない。
美味しい食事は勿論の事、娯楽等も広めてくれたのだから。
ここまで凝った物を広めたのは多分日本人。凝り性民族だし。食い意地凄いし。
死神は担当している地域の人間に似ていくと言われているが、それは正しいと思う。最初の頃のライは食事に執着を持っていなかったのに、今では立派な楽しみになっていた。
個人的にはおにぎりを推したい。あと漬物。ご飯が進むので。
意味もなく足を揺らしていると、スマホが鳴った。
一応此方にもそれっぽい物は在るのだ。
「・・・げっ」
上司から。
面倒臭い。本日の営業は終了しました、って言って即切ってやろうか。
「・・・はい」
仕方なくアイスを口から出して応答する。
『あ、ライちゃん?夜にごめんねー。初出勤、どうだった?』
「はあ、死にまくってましたね。蘇生蘇生で面倒でした。切っていいですか」
『だーめ』
語尾にハートが付きそうな話し方に、鳥肌が立った。
「気持ち悪。切りたいんですけど、休ませてくださいよ」
隠さず本音を伝えれば、電話の向こうから笑い声が聞こえてくる。
なんで笑うんだ。上司のツボが分かんない。
『今は君、社員寮入ってるじゃん?』
「ですね、それが?」
『向こうでも家探さない?』
「は?」
向こうとは。
『あのー、移動先の世界でさ』
「え、現世・・・ですよね」
『うん。移動時間の短縮でさ』
何言ってるんだこの上司は。
「今でもそんな掛かってないですし、このままでよくないですか」
『まあそれもそうだね。いっか。じゃあまたね、お疲れ様』
「お疲れ様でした」
結局何がしたかったんだ。でもまあ、そんなどうでもいい事に時間を使わなくていいか。
枕元の本を引き寄せ開く。
うつ伏せでアイスを咥えての読書は少々行儀が悪いかもしれないけど、誰も見ていないし。
以前担当した死者に聞いた推理小説。その人のイチオシだ。
明日からは更に忙しいだろうから、今はのんびりと自分を労わらせてもらおう。




