最初の仕事
人間の魂と言う物はすっごい面倒なんですよね。迷子になるわ行きたくないと駄々こねるわで。正直、人間より動物のがいいです。言葉は通じないし迷子も多いですが、駄駄をこねる事無く素直についてきてくれるんですよ。
つーか私、入社当初からずっと魂回収部人間担当なんですが?激務の部署に新入社員入れますか普通。しかもよりにもよって人間担当。ざけんなよ。
はい、大変失礼致しました。異世界に着いて早々現世にやって来ました死神の黎と申します。
案の定というかなんというか、この世界の統治神――まあ責任者的立場の神ですね。その方が新人というのもありまして頼りにはなりませんでした、はい。
死にまくる、ということで寿命や病等で八十歳未満の方は蘇生となりました。他にも色々とありますが長ったらしいので省略。大変面倒臭いですね。
お上がトチ狂って決めた制約ですので新人さんも涙目になっておりました。その辺りは色々と安定してから調整していくようにと仰せです。新人に無理難題押し付けないであげてくれませんかねえ。流石に可愛そうなんですが。
あとやっぱり私はワンオペだそうです。この世界を。死神一匹で。匹?人?どっちだこれ。まあ人でいきますか。我々神様のようなそうでない様な微妙な存在ですし。世界を管理するタイプの神様とは別物ですし。
長々と失礼。それでは本日最初のお迎えに参りましょうか。
ひらりと黒衣が翻った。
少し高さの出た丘の下へそっと降りた。
「どうも」
「おねーさん、だあれ?」
此方へ振り向いたのは二桁にもなっていないだろう少年――の魂だ。その傍らには、転げ落ちたのが分かる体勢で横たわった空の肉体。
「死神で御座います」
少々大袈裟な振りでお辞儀をしてやると、少年はその大きな瞳を瞬かせる。
その無垢な様子を見るに、己の死を理解していないのだろう。
「しにがみ・・・しにがみさま?」
「はい」
確か――御伽噺として、死神の存在は知られているのだったか。詳しくは知らないけれど。
「しにがみさま、僕のお家わかる?お母さんにね、お花あげたいの」
見ると、彼の肉体の周囲には摘まれた花が散らばっていた。
この少年は・・・蘇生対象。
「ええ、分かりますよ。ただその前に、体へ戻りましょうか」
流石に魂のまま返す訳にはいかない。
「ん-・・・?」
「大丈夫。すぐに終わります」
よく分かっていないまま頷いた魂を、肉体へ押した。
死んで間もないからかすんなりと戻ってくれた。
魂を肉体に繋いでやれば、呼吸が再開する。
「・・・お花」
生き返った第一声がそれかと小さく笑う。慌てた様に散らばった花を掻き集める少年。
「どうぞ」
「ありがと、おねーさん!」
最後の一つを差し出せば、満面の笑みを返される。
いえと笑い、少年が立ち上がるのを待つ。
「さあ、皆様心配なさっています。帰りましょう」
「うん、お母さん喜んでくれるかな」
「きっと」
実体を持たぬ手を小さな背に添え、転移した。
「お母さん!」
「っ、どこへ行っていたの!危ないでしょう」
震えた女の声。母親か。余程心配したのだろうと分かる。
「お花、お母さんにあげるの」
「え、・・・その為に家を出たの?」
「うん!嬉しい?」
「本当に、この子はっ・・・。無事で良かった」
「あのね、しにがみさまに会ったんだ」
「死神様に・・・?」
死神の存在は周知の事実である、と。何処まで知られているのか、確認しておく必要がありそうだ。
それに、あの子供。今は憶えている様だけど直に忘れる事だろう。憶えていてはイケナイ者だから。
「助けてくれたの!それで、家まで送ってくれて――」
「――もういいわ。もう、いいから。本当に、生きていて良かった」
きっと母親は察したのだろう。己の息子が――一度死んだ事を。
抱き合う母子。その姿を一瞥して、次の場所へ向かった。
少々時間を掛け過ぎてしまった。まだまだ大量の魂が彷徨っているのだから。




